NTTドコモは5月30日に、AI(人工知能)を活用した音声対話サービス「my daiz(マイデイズ)」をリリースした。アプリを起動して「今日の天気は?」「『dポイント』残高を教えて」などと話し掛けると回答し、ユーザーの日常生活をサポートする機能を持つ。

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●「先読み機能」とパートナー企業との連携が特徴

 最大の特徴は、ユーザーのスマホ使用履歴や行動履歴を学習し、パーソナライズされた会話を行う「先読み通知」機能を持つ点だ(利用には月額税別100円が必要)。起床時間、外出時間、帰宅時間などを把握し、「今日は傘が必要かもしれませんよ」などとAI側から話し掛けてくれるのだ。

 日本プロサッカーリーグ、ぐるなび、ヤマト運輸など33社のパートナー企業・自治体とも提携しており、「鹿島アントラーズ、勝ってる?」と聞くと「前半を終えて1-0です」などと答える機能も持つ。「ぐるなび」に掲載されているレストランを口頭で予約することも可能だ。

 契約する携帯電話事業者(キャリア)を問わず利用可能で、アプリとしてダウンロードできる。入手すると、スマホの画面上に白くて四角いキャラクターが登場する。キャラは天気の話をすると太陽の形になったり、交通情報を聞くと電車の形になったりと、話題に応じて形を変えるなど、親しみやすい点も魅力だ。

●開発のワケを生みの親に聞いた

 ただ、音声対話サービスの分野では、米Appleの「Siri」、米Amazon.comの「Amazon Alexa」、米Googleの「Google Assistant」など協力なライバルがひしめいている。ドコモはなぜ、競合がひしめく同分野にあえて参入したのか。勝算はあるのか――。

 開発を手掛けたコンシューマビジネス推進部 エージェントサービス担当部長の関崎宜史氏(崎はたちさき)と、第一エージェントサービス担当課長の近藤佳代子氏に、開発の狙いと展望を聞いた。

●いまこそ再挑戦する時だ

――KDDIやソフトバンクといったライバル企業は、オリジナルのAIエージェントをまだ展開していない。ドコモが先陣を切ってこの分野に参入した理由は。

関崎氏: 当社はこれまでも対話機能の開発に注力し、雑談や機能の呼び出しに応じるサービス「iコンシェル」「しゃべってコンシェル」を計15年間運営してきた。AIこそ使っていなかったが、ユーザーに有益な情報を対話形式で届けるノウハウはかなり蓄積していた。

 現在はAIが進歩し、AIを活用した音声対話サービスに対する市場の期待感が高まっている。この分野に長く携わってきた企業として、いまこそ過去の経験を生かしてサービスを刷新し、市場に再挑戦すべきだと考えた。

●反響はこれから

――リリースから2週間ほど経過した。ユーザーの「先読み通知」の利用状況と反響はどうか。

近藤氏: 現在はユーザーの行動データを学習し、徐々に発話に反映している段階。ユーザーからフィードバックが届くのはもう少し先になるだろう。

 ただプライベートで試したところ、家を出る前に「雨が降りそうですよ」と通知が届くようになった。客観的に見て便利だと感じ、手応えを得ている。 

●「Siri」「Google Assistant」にいかに勝つ?

――iPhoneには「Siri」、Androidには「Google Assistant」が搭載されている。ユーザーに両者ではなく「my daiz」を選んでもらうために、どんな工夫をしたのか。

近藤氏: 画一的ではなく、ユーザー一人一人に応じた会話ができる点は大きな差別化要因だ。また、多くのパートナー企業と連携し、宅配便の配達状況が分かったり、お店を予約できたりといったサービスを提供できる点でも異なる。

 ドコモのポイントサービス「dポイント」との相性の良さも大きな差別化要因だと考えている。話しかけるだけで残高や有効期限が分かったり、ポイントが使える近隣店舗を教えてくれたりする。

 5月半ばから始めた、「dポイント」を活用した投資サービスの運用状況も、声をかけるだけで教えてもらえる。これらの点は「my daiz」ならではだ。

●ポイントサービスとの連携もウリ

――ドコモの吉澤和弘社長は、18年度は『dポイントクラブ』会員を軸とした事業基盤を強化する方針を掲げている。「my daiz」のローンチには、ポイントサービスを活性化する狙いもあるのか。

関崎氏: その狙いはもちろんある。「my daiz」をポイントサービスと親和性の高い仕様にしているのは、「回線から会員へ」という当社の戦略を促進するためだ。

 現在の携帯電話市場では、MVNO(仮想移動体通信事業者)の台頭などにより、競争は激化する一方だ。そこで当社はキャリアを問わず利用できる「dポイント」会員を伸ばし、これまでリーチできなかった顧客とのタッチポイントを増やす方針に切り替えた。

 現在は他社のスマホを使っている方も、ポイントサービスを機に当社を知ることで、ゆくゆくは乗り換えてくれるかもしれない。ポイントサービスと親和性の高い「my daiz」によって、潜在顧客を獲得していきたい。

●かわいいキャラでも差別化を

――かわいいキャラクターが話題になっているが、AIをキャラクターとして表現するのも他社にはない取り組みだ。

近藤氏: キャラクターに親しみを持ってもらうことも、差別化と利用促進につながると考えている。「iコンシェル」「しゃべってコンシェル」」の頃も、メインキャラクターの「しつじくん」「メイちゃん」が人気だったため、今回もキャラクターを起用した。

 今回のキャラクターは白いキューブのような形状だが、無機質ではなく生命感がある動きを取り入れている。ロボットっぽいキャラなどをテストしたが、現行のキャラが最もユーザーの反応が良かったためだ。

 Twirrerなどでは早速「豆腐に似ている」などと話題になっている。実は開発チームでも「はんぺんに似ているね」などと話していた。ユーザーにかわいがってもらえればうれしい。

●「しゃべっても恥ずかしくない」仕組みに

――「対話型AIに話しかけるのは恥ずかしい」という議論もあるが、解消するための工夫があれば教えてほしい。

近藤氏: その課題を解消するため、今回はAI側からユーザーに話しかける仕様を取り入れた。UI(ユーザーインタフェース)も工夫し、テキストで話したいことを入力したり、既に決められた話題をタッチしながらコミュニケーションを取ったりできるようにしている。

――開発で苦労した点は。

関崎氏: 2017年4月に中期計画「beyond宣言」を発表し、「究極のAIエージェントを世に出します」との目標を掲げたばかり。それから1年と少しというスケジュールの中で作り上げるスピード感は非常にタフだった。

 ただ、これからの方がもっと大変になると思っている。実は、旧サービス「しゃべってコンシェル」とそのキャラクターに愛着を持っており、「使えなくなり残念」との感想を持つユーザーも一定数存在する。

 そうしたユーザーにもご理解いただけるよう、「my daiz」の改良を続けてメリットを訴求していきたい。

●話し掛けるタイミングを工夫したい

――このサービスを今後、どう発展させていくのか。

関崎氏: プッシュ通知などでユーザーに話しかけるタイミングをもっと改善したい。ユーザーがスマホを見るタイミングは一人一人異なる。歩いている最中に見る人もいれば、家の中で見る人もいる。職場の休憩時間中に見る人がいる一方、職場ではスマホを見ないという人もいる。

 今後は個々人がスマホを使っている時にピンポイントで話しかけ、もっと心地よくコミュニケーションを取ってもらえるようにしたい。そのためにも、ユーザーの位置情報やスケジュール、使用履歴などのデータを分析・学習し、今まで以上に活用していきたい。

近藤氏: パートナー企業をさらに拡充し、サービスの幅を広げたい。今後は自治体とも連携し、ユーザーの位置情報を基に、観光地ではおすすめの観光スポットをレコメンドしたり、住宅地では粗大ごみの回収日をアナウンスしたりといった機能も取り入れる予定だ。一人一人の生活にもっと寄り添った会話をできるようにし、オリジナリティーを高めたい。

 キャラクターの会話やしぐさのバリエーションも、もっと増やす予定だ。ユーザーに「この子としゃべりたい」と思ってもらえるよう工夫を重ねていく。

「my daiz」の生みの親、NTTドコモの関崎宜史氏(=左)、近藤佳代子氏(=右)