新幹線にまつわる事件、トラブル6月になって相次いで起きている。6月20日現在、4件が確認されており、本連載前回記事では、トラブルのあらまし、そして簡易な考察を述べた。本稿では、これらのうち、早急に対策が必要と考えられる8日に起きた殺傷事件、14日に起きた人身事故について、その対策の試案を説明したい。

 まず簡単に2つの事件のあらましを紹介する。

 9日、JR東海東海道新幹線新横浜-小田原間を走行中の「のぞみ265号」の内で男が突然物を振り回し、隣に座っていた女性客に切りつけた。男はさらに通路をはさんで座っていた女性客にも切りつけ、止めに入った男性客に乗りしてなおも切りつける。この結果、男性客1人が死亡し、女性客2人が負傷する惨事となった。

 そして14日、JR西日本山陽新幹線小倉-博多間で、博多駅を出発した東京行きの「のぞみ176号」が福岡県北九州市八幡西区を走行中、線路に立ち入った男性をはねてしまう。「のぞみ176号」は車両の先頭部を破損したまま走行し、最初に停した小倉駅でも運転士駅員は異変に気づかずにそのまま出発する。直後にすれ違った列車運転士によって初めて異常事態が判明し、本来は通過である次の新下関駅に臨時停して運転を打ち切った。なお、男性が線路に立ち入った動機は自殺のためであったという。

保安検の導入に立ちはだかる障

 8日に起きた新幹線内での殺傷事件を防ぐ究極の方法は、列車に乗する前に手荷物や身体をチェックする保安検を行うことだ。今日の交通機関では保安検航空機に搭乗する前に実施されているし、そのほかの場面でも、ドーム球場コンサート会場などに入場の際は手荷物検が行われている。

 保安検の導入に立ちはだかる障は数多い。まず挙げておきたいのは、フル規格の新幹線全体で1日当たりの利用者数が115万人余り(2015年度)と極めて多いという点だ。空港の場合、内線の1日当たりの利用者数は約28万人と新幹線べて24パーセントにすぎない。いっぽうで空港べれば狭く、保安検場を設けるスペースは取りづらく、特に東京駅新大阪駅といった巨大なターミナルで空港と同じような体制の保安検が導入されれば混乱は必至だ。

 そのほかにも、手荷物検客が携えてはならないと見なされた荷物を、どのように扱うかという問題が生じる。荷物をで預かるのか、それとも車両に設けた荷物室に収納して輸送するのかというもので、後者を採用した場合はにはさらに広い間が必要となるし、途中での停時間は確実に延びてしまう。東海道新幹線名古屋駅京都駅での停時間は現在のように1分や2分とはいかず、少なくとも10分は要するはずだ。

 客の心情としては、出発間際にに駆けつけても乗という新幹線の利点が失われる点を嫌がる意見も根強い。航空機のような保安検が存在しないから新幹線を利用するのだという客の要望に、鉄道会社はこたえなければならないという考え方も理解できる。

 しかしながら、筆者はやはり新幹線にはでの保安検が必要としたい。今回の殺傷事件を含め、過去新幹線内では4人が犯罪によって命を落としている。この数は決して少ない数ではない。新幹線では大地震による死者、それに列車脱線事故や列車衝突事故による死者は開業以来皆無であり、対策を施せば防止できることは明されている。これらの事べれば4人という死者の多さは際だつ。

 いうまでもなく、保安検の導入にはさまざまな課題を解決しなくてはならないので、いますぐ航空機並みとするには非現実的であることはも承知だ。そこで、段階的な導入を提案したい。

 いまでも東京駅などの巨大ターミナルでは札口に警察官や警備担当者が立っている。こうした人たちの判断により、検が必要だと認めた客に対してであるとか、さらには作為に抽出した客に対して保安検を行ってはいかがであろうか。

 手荷物検の実施方法もできる限り効率化を図りたい。たとえば、自動札機は動く歩の途中に設け、携えた荷物はその隣に同じ速度のベルトコンベアに置いて保安装置をくぐらせる。検の結果、客室に持ち込めないとなった荷物は荷物室で預かるのではなく、近くに設けた宅配業者の口で、旅行的地または自宅などへと送る手配を取るようにするとよいであろう。

 保安検の導入によって鉄道会社には銭面での負担が生じる。これは使用料という形で徴収すればよいであろう。額は500円程度が安と考える。

 何よりもめられるのは利用者の協だ。安全のためには少々の負担もやむを得ないという理解が得られなければ導入など望むべくもない。

 手荷物検の実施例として挙げたドーム球場コンサート会場では、かつてはなんのチェックもなく入場できた。状況に変化が生じたのは1995平成7)年に地下鉄サリン事件が起きてからだ。入場に時間がかかるといった反応も見られたが、安全第一という世論の後押しによってすっかり定着している。

新幹線の新たな「安全神話」の始まり

 線路内への立ち入りを防ぐ有効な手段として考えられるのはドローンだ。ある程度の高度から線路を監視し、線路に立ち入ろうとする人影を認識したら、即座に地上の総合令所に連絡するという仕組みはすでに開発に着手されていると聞く。一日もい実用化を望みたい。

 運転士内から確認できない車両の様子もドローンが解決してくれる。これに加えて、先頭のなかで運転士の死となっている部分をなくすために車載カメラの導入も検討されてよい。このあたりも何も筆者が初めて提案するような意見ではなく、すでに採用が検討されているはずだ。

 災や犯罪から新幹線はなぜ守られなければならないか。それは高速で走行しているために万一走行に支障が生じた場合、大事故につながりやすいからだ。また、列車は容易に停止できないので、被害が広がりやすく、恐怖はよりいっそう高まる。だからこそ、防がなくてはならないのだ。

 鉄道会社に責任のない事の防止に積極的に取り組みたくない気持ちはわかる。だが、責任所在を問わず、新幹線を利用して客が犠牲になったという事実は厳然として存在しているのだ。2018年6月新幹線の新たな「安全神話」の始まりとなることを期待したい。
(文=梅原鉄道ジャーナリスト

N700系(「Wikipedia」より)