5月7日、旧民進党と希望の党が合流して国民民主党が発足した。だが、新党への参加者は62人にとどまった。国民民主党の共同代表の玉木雄一郎氏が打ち出すのは「対決よりも解決」。具体的な施策のひとつは「高速道路料金の劇的な値下げ」だという。その狙いをノンフィクション作家の塩田潮氏が聞いた――。(後編、全2回)

■高速道路料金の劇的な値下げ物流コストを下げる

【塩田潮】国民民主党が目指す政策、路線についてお尋ねします。まず経済政策は。

【玉木雄一郎・国民民主党共同代表】何よりも経済重視の党を目指したい。経済に強い党、経済政策と社会保障制度に強い党、と明確に唱えています。アベノミクスも限界が見えてきました。国民一人一人を豊かにしていく政策、再分配のあり方を示していきたい。

民主党政権が誕生したとき、国民に支持されたのは、子ども手当や月7万円の最低保障年金制度など、普通に暮らす人たちの不安に寄り添い、消費を活性化していく路線を掲げたことです。もう一回、挑戦したいのは、高速道路料金の劇的な値下げです。今、小口の大量の物流が多くなっている中で、高コストが日本の産業の足かせになっています。最新のIT、人工知能のテクノロジーを使って物流のコストを下げたい。暮らしのコスト、あるいは人生を楽しむことのコストを下げ、新しい経済活性化のシナリオを示したい。

【塩田】安全保障政策では「現実的な安保」を唱えていますね。

【玉木】取り組み方は「近くは現実的に、遠くは抑制的に」です。北朝鮮問題は依然としてわが国にとって大きな安全保障上の脅威です。朝鮮半島有事をにらんで、領域警備法を始め、現実的に対応できる法案を準備しています。一方で、アメリカから言われて地球の裏側まで一緒に行くようなことは絶対にしない。わが国の利益に直接、関係があるかどうかわからない紛争、攻撃を受ける可能性がないような紛争には介入しない。その方針を具体的に法律の形にする議論を進めていて、近く法案を国会に提出したいと思っています。

【塩田】安倍晋三内閣の下で成立した安保法制には、旧民進党時代から党内でも大きな議論がありましたが、でき上がった安保法制をどうすべきだと考えていますか。

【玉木】現実に施行されていますが、軍事的公権力の行使として広すぎるところは、憲法違反の疑いがあり、既存の憲法解釈からはみ出ていると思われるところは、できないように限定をかける具体的な改正案を提出していきたい。一方で、でき上がった安保法制で、足りない部分もある。個別的自衛権でも穴があいているところがある。たとえば武装した漁民が大量に押し寄せているとき、自衛隊は出ていけない。警察権だけで対応できるかという問題がある。出過ぎているところは縮め、足りないところは埋める必要があります。

【塩田】「未来志向の憲法」を打ち出していますが、どんな憲法構想をお考えですか。

【玉木】第9条の議論も大切ですが、一番やりたいのは地方分権です。今年は明治維新150年です。中央集権型で東京一極集中による近代化を短期間に成し遂げましたが、今、格差、過疎の問題が深刻で、150年の副作用が出ています。地域の多様性、地域文化によって発展していく「分権・分散型国家」をつくっていかなければならない。新しい国の形、中央と地方の関係を築くために、現憲法の第八章の「地方自治の本旨」について、正面から議論するときがきているのではないでしょうか。

【塩田】原子力発電とエネルギー問題についてはどんな姿勢ですか。

【玉木】原発は2030年代にゼロにするように、あらゆる政策資源を投入していきたい。具体的にいうと、国有化も含め、国が前面に出て責任を取るような仕組みにしなければならない。今、党のエネルギー調査会で具体的なロードマップの策定に着手しています。原発の依存度を下げたらいいと考えている他党にも呼びかけたい。

■消費税論議から安倍政権は逃げまくっている

【塩田】19年10月に予定されている消費税の10%への引き上げは必要ですか。

【玉木】このまま行くと、2040年代に社会保障給付が190兆円になる。換算すると、消費税は22%くらいが必要です。財源を消費税だけに頼る必要はないけど、給付と負担のバランスが取れた政策を一体的に推し進めることが不可欠です。今、安倍政権は財源の議論から逃げまくっています。全部、赤字国債の発行でまかなっているのが安倍政権の現状ですが、逃げたって無理なんですよ。消費税を上げたときにどんな安心社会を実現するかという形を示すことが大事です。われわれは財源の議論から逃げずに議論していきたい。

【塩田】「長期『一強』体制」が続いていますが、国民の多くは、代議制民主主義による緊張感のある政治、政権交代可能な政党政治を期待しているのではないかと思います。

【玉木】そこが一番大事です。これから2回の参院選で衆参ねじれのような状況をつくり出す。2回の参院選ということは2021年になります。政権奪還を目指して22年頃をターゲットに、2回の参院選と、必ず1回ある衆院選で政権交代が可能になる議席を確保する。

何よりも次の来年の参院選ですね。数字の上では、5年前に野党がぼろ負けしているので、議席の上積みは可能です。鍵は野党共闘、選挙区での野党間調整です。衆院選では政策や基本理念が異なる共産党と組むのは難しいですが、参院選は別です。安倍政権の暴走を許さない。政権交代可能な政治状況を再現する。そのためにはあらゆる方策を駆使して野党側の議席を増やさなければなりません。比例代表と定数2~6人の複数区はそれぞれの党が頑張って議席を増やす。問題は全国に32ある1人区です。一本化を図って1議席でも多く取るように野党間の調整を進めていきます。

【塩田】立憲民主党は去年の総選挙で勝利し、「国民の支持獲得・自公の対極の中核・野党再編には独自路線」という意識を強く持っていますが、野党の共闘、再結集の道は。

【玉木】立憲民主党の考えは分かります。排除され、苦しい中で総選挙を戦い、野党第一党となった。だけど、逆に立憲民主党は野党第一党として同じように排除するようなことは避けてほしい。政党は、純化していくと、人の数だけ党ができてしまう。これまでの野党の先輩方を見て思うけど、小異にこだわる。自民党は10のうち1だけでも一致したら、権力を握るために一致する。でも、野党は10のうち9まで同じでも、最後の1つが違うと、ときにはいがみ合って細かく分かれていく。これを繰り返したら、いつまでも政権を取れません。

私は、権力奪取はある種、数合わせで上等だと考えています。政治は異なる意見をまとめ上げていくアートです。立憲民主党も、寛容な心で、安倍政権に対峙する大きな塊をつくっていく方向性でやっていただければと思います。安倍政権がこういうひどい状況なので、野党をまとめあげていく責任が、野党第一党にはあります。われわれが向き合わなければいけないのは安倍政権です。

【塩田】安倍内閣は今年3月に浮上した森友学園の財務省決裁文書改ざん問題を抱え、「幕引き」の演出に懸命です。この問題にどう対応すべきですか。

【玉木】厳しく追及し、全容を明らかにして後の世代に引き継ぐべき事件です。130年以上前、北海道開拓使官有物払い下げ事件が原因で「明治14年の政変」が起こり、参議の大隈重信(後に首相)が政府を追われた。これに匹敵する歴史的な大事件です。なぜなら、国庫の支出入を管理する財務省が決裁文書を300カ所以上も改ざんした。民主主義の根幹を揺るがす事件です。国民は去年の総選挙でそれを知らないまま1票を投じ、その結果、安倍政権は権力を手にしたわけで、ある種、フェイク情報に基づくフェイク権力といっていい。これは大問題です。

■改ざんまでして隠さなければならない事実は何か

【塩田】財務省の出身ですが、財務省の現在の姿はどう映りますか。

【玉木】情けないやら悲しいやら。ただ、冷静に考えたら分かりますが、改ざんする動機付けが役人にはない。安倍首相の昭恵夫人に関する記述を削ることに何の意味があるんですか。改ざんまでして隠さなければならなかった事実は何か。ここが今もポイントです。決裁文書を書いた近畿財務局の人間は全部知っています。知らないはずがない。

解明すべき点がいくつかありますが、改ざんされた14の文書はどれから改ざんを始めたかという問題がある。同時にやったのではなく、最初に一つ変え、そこを変えたら、関係する同じような記載のある部分を全部触っていく。私も法律を作っていましたので分かりますが、1カ所直すと、関連法令にはねる。そのはねを縦、横、斜めに全部チェックして直し切るのが優秀な官僚です。役人は今回、その能力を悪いことに使ったんです。

貸付を特例で認めようという本省決裁の「特例承認文書」の添付資料に「昭恵夫人」と「日本会議」が出てくる。当時の大阪府の学校設置基準では、学校校舎は自己所有の土地の上にしか建てられないという規則があった。ところが、ここは借地です。大阪府も土地を提供した国も、なぜ規則違反、法令違反を認めたのか。2014年3月15日、近畿財務局は「貸付、駄目」と言った。なのに、1カ月後の4月25日に安倍昭恵さんが現地を訪問して3人で並んで写真を撮った。3日後、籠池泰典さん(元森友学園理事長)が近畿財務局に行って、その写真を見せて、ああだこうだと言った。そこで、括弧書きにある「写真も見せた」とか「いい土地ですから、前に進めてください」という一連の発言が出てくる。その1カ月後に近畿財務局が借地での学校建設にOKを出す。この因果関係はどうなっているかという部分が一番、大事な点です。昭恵さん訪問の写真を見せたという情報が決裁文書に書かれてあったのをなぜ消したのか、ここを明らかにしなければいけない。

これは昭恵さんにしゃべってもらうしかない。国会に呼べなくても、公式な場できちんと記者会見しないと終わらないですよ。安倍首相自身、去年2月17日に「私や妻が関係していたら総理大臣も議員も辞める」と国会で答弁した。「関係していたら辞める」と言ったのだから、関係のあり方について話すべきです。

さらに、「ない」と言っていた4000ページの文書が出てきたりした。普通なら内閣が吹っ飛んでいます。なのに、「何の問題もない」みたいに言っている。おかしいですよ。麻生太郎財務相の辞任が実現するように攻勢を強めたい。場合によっては、安倍首相自身の問題にもなります。国会は7月22日まで延長になりましたから、この先、国会に内閣不信任案を出すことになるでしょう。そのとき、もしかすると、安倍首相は解散・総選挙で対抗するのでは、という話もありますが、その場合はわれわれも受けて立たなければならない。そうなると、政権構想を示す必要がある。立憲民主党と国民民主党を中心に連立政権を、といった具体的な政権構想を示しながら、安倍首相を退陣に追い込んでいく。野党側にその気迫が必要です。

【塩田】財務省の官僚だった玉木さんは、なぜ政治家の道を目指したのですか。

【玉木】私は小泉純一郎内閣で3人の大臣にお仕えし、世の中を前に進めるのも政治だけど、ストップをかけるのも政治だと思いました。政治の力を正しく使っていい政治をやるのも大事だけど、同時に、世の中を変えたいと思うときにも政治の力が必要です。

自民党政権はいい政策もやるし、戦後の発展を築いてきた立派な政党だと思いますが、閣僚は2世、3世ばかり、首相も世襲議員しかなれない。世襲を全否定するつもりはありませんが、多くの人の生活実感と共にあるような人が政権を担って本当の意味の国民のための政治をやっていく。自民党と違うもう一つの軸が大事ではないかと思った。だったら、傍観者ではなく、自分が政治の世界に入って新しい政治を、と思い、挑戦したんです。

【塩田】大学を卒業して、大蔵省(現財務省)を選択した理由は。

【玉木】天下国家のために働きたいと思ったのが原点です。小さい頃、祖父に「世のため、人のために働けよ」と言われて大きくなった。祖父は農家で、市井の人間ですが、家族の幸せと同時に、国の未来を真面目に考えていた。そういうことを考える普通の日本人がたくさんいることが日本の強さだと思う。そんな祖父に育てられ、何か公のためにという気持ちがつねにあって、それを実現できるのは大蔵省と思いました。

ところが、入ったら、接待スキャンダルが起き、名前も財務省に変わり、組織も分断されて金融庁ができた。不祥事があり、こんなことでいいのかと思った。大蔵省の先輩たちを見ていて、政治がしっかりしていないと、行政も歪んでくると知った。「政治が駄目だから俺たちが全部仕切るんだ」という慢心を生んだ。今でも非常に優れた組織と思いますが、政治がリードして、正すところは正さなければと思い、政治の世界に入りました。

----------

玉木雄一郎(たまき・ゆういちろう)
国民民主党共同代表・衆議院議員
1969年5月1日、香川県大川郡寒川村(現さぬき市)生まれ。現在49歳。祖父は地元の農協の組合長、父も農協の仕事に従事。農家の長男として育つ。香川県立高松高から東京大学法学部に進む。卒業後、大蔵省(現財務省)に入省。アメリカに留学し、97年にハーバード大学ケネディスクール修了。帰国後、外務省、金融庁、内閣府などに出向。内閣府特命担当相だった石原伸晃、金子一義、村上誠一郎の各大臣の秘書専門官を務める。退官して、2005年の総選挙に香川2区から民主党公認で出馬して落選。09年総選挙で初当選(以後、香川2区で連続当選4回)。民主党副幹事長・政策調査会副会長を経て、16年9月の民進党代表選に出馬(3位敗退)。民進党幹事長代理となる。17年11月の希望の党共同代表選挙に出馬して共同代表となる。辞任を表明した小池百合子代表の後継として希望の党の単独代表に。18年5月、国民民主党の結党に参加し、大塚耕平・元民進党代表とともに共同代表に就任。

----------

玉木雄一郎・国民民主党共同代表