5月11日NHK総合ニュースウオッチ9」で、幻の深海ザメメガマウス」に関するニュースが報じられた。それは、ツイッター上で拡散しているメガマウス揚げのニュースが、実は“フェイク情報”であると判明したことを受け、ネット上に広まるデマを問題視する内容だった。番組では科学者が登場し、メガマウス地震との関係をキッパリと否定。

 しかし、地震の研究を数十年にわたって続けてきた筆者としては、数ある深海生物の中でもメガマウスはとりわけ地震との関連性が高いと考えており、この番組内容には大いに疑問を抱かざるを得ない。今回は、過去データを元にこれまで日本で発見されたメガマウス地震の関係をお伝えしたい。

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ツイートフェイクだった、しかし……!

 メガマウスは、その名の通り巨大な口をもつネズミザメ目メガマウスザメ科に属するサメで、深さ100200m程度のやや浅い深海に生息する。1976年ハワイで初めて発見されたが、その後も捕獲はおろかほとんど撃されず、出現例はわずか数十件、そのうち約20件が日本での撃となっている。

 そして今年4月上旬、ツイッターメガマウスが打ち上げられたこと、さらにこれが地震の予兆だとするツイート投稿され、ネット上で拡散した。「ニュースウオッチ9」によると、その偽を検証するため三重県尾鷲の漁港で現地取材した結果、拡散された写真2016年4月15日に尾鷲漁港で揚げされた体長5m、重さ1トン以上のメガマウスだったことが判明したという。

 ここで問題視されたツイートは、「人気ツイート集」(@ninki_tuito)というアカウント4月8日投稿したもので、「三重県メガマウスが上がったらしい。メガマウス上がるのは大地震くる前兆みたいです」という内容に、メガマウス写真が添付されたものだ。

 ツイートに添付された3枚の写真は、異なるニュースメディアから流用したものであり、やはり意図的に過去情報を流した疑いは残るだろう。NHK取材班が、アカウントに接触を試みたが、返事はなかったという。

■「メガマウス出現と地震は関係ない」と言い切って大丈夫!?

 しかし、筆者が本当に問題視するのはここからだ。「ニュースウオッチ9」は、専門として北海道大学の仲名誉教授産学)にコメントめ、「メガマウス地震に関連性はない」という言葉を引き出しているのだ。

 これまで筆者は、長年にわたり深海ザメの出現事例を収集し、地震前兆である可性について探ってきた。その結果、深海ザメの中でもメガマウス出現はもっとも地震発生と関係が深いのではないかと考えている。そのため、仲氏の見解に疑問を呈するとともに、これをもって「メガマウス地震には何ら関係がない」と言い切ってしまう番組構成に違和感を抱いている。

 実際、メガマウス地震の関連を肯定的に科学者も数多く存在する。たとえば、武蔵野学院大学特任教授で、海底地質学を専門とする地震学者の島村英紀氏は、微弱な電磁波をキャッチすることで餌の位置を把握する、メガマウスの頭部にある「ロレンチーニ器官」について「海底プレートのズレによって起こる巨大地震の場合、地中の岩石が破壊される際に微小な電磁波が発生する。これを感じ取ったメガマウスが、『日本に餌がある』と勘違いしているのかもしれない」(『週刊ポスト』、2017年7月14日号)とる。

 また、1988年海外で発表された研究によれば、この「ロレンチーニ器官」を調した結果、小さなプランクトンが発する弱い電場さえ検出できることがわかったという。メガマウスは、原始的な形態を残しているといわれ、その生態にもの部分が多い。地震の前触れとして、地中で起きた岩石破壊によって発生した電磁波を検知し、方向感覚を狂わされた結果の異常行動ではないかと考えられる。

■こんなにあった! メガマウス出現と地震発生の連動例

 さて、筆者の説を裏付けるためにも、実際にメガマウスが出現した後で大きな地震が発生したケースを示しておきたい。4年前の記事では、「2カほど前から前兆現があるだろう」と記したが、その後の調の結果、前兆となり得る期間を約1カ以内に絞り込んで検討すべきだと思うようになった。さらに、メガマウスの出現地点から較的近距離であれば、M4クラスの小規模な地震でも前兆として考えることにした。すると、前述のように日本メガマウス撃された約20件のうち、その後で地震が発生したケースは15件にも達するのだ。(※印をつけた3件の大地震は、いずれもメガマウス出現地点から震までの距離が数キロと遠いため、あくまでも参考)

1989年1月23日静岡県浜松市松島
1989年2月5日:八丈東方M5.5 、最大震度3(13日後)

1989年6月12日静岡県焼津市
1989年6月17日、M6.6、最大震度3(5日後)
1989年6月24日伊豆半島東方群発地震、最大M5.5(12日後)
1989年7月13日伊東海底噴火(31日後)

1997年4月30日三重県尾鷲三木
1997年5月4日和歌山県南方M4.1、最大震度1(4日後)

1998年4月23日三重県田和
1998年5月6日和歌山県南方M4.4、最大震度3(13日後)

2004年4月19日千葉県市原市五井南海
2004年5月3日:房総半島南方M4.3、最大震度2(14日後)
2004年5月30日:房総半島南東、M6.7、最大震度1(37日後)

2004年4月23日静岡県網代
2004年5月3日:房総半島南方M4.3、最大震度2(14日後)
2004年5月30日:房総半島南東、M6.7 、最大震度1(37日後)

2005年1月23日三重県度会紀勢町錦
2005年1月29日三重県南東M4.0、最大震度1(6日後)
2005年2月22日三重県南東M5.4、最大震度1(30日後)

2006年5月1日神奈川県河原
2006年5月2日伊豆半島東方M5.1、最大震度4(1日後)

2011年1月14日三重県尾鷲
2011年1月22日:遠州M4.1、最大震度1(8日後)
→ ※2011年3月11日東北地方太平洋沖地震、M9.0、最大震度7(56日後)

2011年7月1日神奈川県小田原市
→ ※2011年7月10日三陸、M7.3、最大震度4(9日後)
2011年7月19日駿河湾、M4.0、最大震度3(15日後)

2013年9月3日神奈川県
2013年9月4日、M6.8、最大震度4(1日後)

2014年4月14日静岡県清水
2014年5月5日伊豆大島、M6.0、最大震度5弱(21日後)

2015年4月1日高知県室戸市室戸岬町
2015年4月18日日向M4.5、最大震度2(17日後)

2016年4月13日三重県尾鷲
→ ※2016年4月16日熊本地震、M7.3、最大震度7(3日後)
2016年4月21日四国M4.4、最大震度3(8日後)

2017年5月22日千葉県館山市
2017年5月22日新島神津M4.5、最大震度2

 この中で、特筆すべき事例の一つは、1989年6月12日静岡県焼津市)のケースだ。メガマウス出現から1カ以内に、(M6.6)、伊豆半島東方の群発地震、そして伊東海底噴火と続いている。これだけ短期間のうちに海底で異変が続けば、電磁波に敏感と思われるメガマウスがそれを察知し、異常行動をとったとしても不思議はないだろう。

 また東日本大震災の発生前を考えてみると、1月19日神奈川県小田原市リュウグウノツカイ1月27日静岡県下田市ギンザメ3月4日茨城県鹿クジラ52頭座礁、3月8日には静岡県沼津市ラブカ捕獲まで確認されている。これらを総合的に考慮すると、3.11のような巨大地震の場合には、2カほど前から深海魚が出現するという前兆が起きている可性も捨てきれない。

■人々を油断させるNHK報道は大いに疑問

 前述の週刊ポストの記事では、今回NHKの取材を受けた仲氏もコメントしているが、「メガマウス地震を察知するがあるかどうかは、科学的に明されていない。メガマウス先から5月にかけてインド洋から黒潮に乗って日本へとやってくるともいわれている。つまり、この季節の発見は較的多いのです。2つの地震との一致は偶然でしょう」(『週刊ポスト』、同上)とっている。

 その言葉に則して考えてみると、今回紹介した15件のデータのうち、先(3月)から5月メガマウスが出現した事例は8件となり、たしかにこの期間に出現するケースは多いようだ。しかし、それ以外の7件は異なる期間の出現であることに着すれば、ますますメガマウス地震発生のリンクを“偶然”として片付けることはできなくなるはずだ。

 それに加えて、ロレンチーニ器官の役割について正しく評価すればこそ、「科学的に明されていない」と断じてしまう姿勢はいかがなものかと思う。今後メガマウス撃された時、人々が「地震とは関係ない」と油断した結果、実際に巨大地震が起きて被害が拡大するような事態を招けば、これは取り返しがつかない悲劇だ。筆者は、今後もメガマウス出現と地震の関係について研究を続けていく。

百瀬直也)

※画像は、「Wikipedia」より

※画像は、「Wikipedia」より