テレビ界では、数年前よりボケよりツッコミ芸人への需要が高まったといわれている。理由はさまざまあるが、バラエティ情報番組の数が増え、仕切りのできるツッコミにお呼びがかかるのが理由のひとつだろう。役者グラドルらの発言を受け止め、ツッコんで落としてあげる――。そんな腕が芸人められていることの表れか。

 筆者には売れないアラフォー芸人の知り合いが数人いるが、10年ほど前はほとんどの若者がボケを志望していた。おそらくそのあたりのバランス現在はかなり変化しているはずだ。

■「田村が『芸人をやめる』と言いだすのではないかと……」麒麟・川島

 7月6日深夜放送『くりぃむナンチャラ』(テレビ朝日系)が、同番組恒例「もうええわを言わない相方たち」を放送した。ネタで面いことを言うボケは、脚を浴びがち。ないがしろにされるツッコミの重要さをボケに再認識させるため、漫才の最後を締める「もうええわ!」のセリフを言わないでみる。そして、「自分は生かされているんだ」と、ボケツッコミの存在を感謝してもらう。そんな新な企画である。

 漫才の終了のセリフツッコミが言わなかった場合、窮地に陥るボケの態度はそれぞれ独特で面い。例えば、同企画が初めて行われた2014年3月(前身番組の『ギリギリくりぃむ企画工場』にて)に登場した麒麟。彼らは偽のネタ番組に出演し、演じ慣れた漫才を披露した。そして、川島明が最後のボケを放った間、ツッコミ田村裕は「もうええわ!」を言わないでいる。すると、川島は顔をひきつらせて「どうした?」「15年やってきたでしょ。『もういいよ』って言って! あんまりボケが言わないよ、こういうこと」と困惑。最終的には「どうもありがとうございました!」と川島が自らで締め、2人は舞台を降りた。「ツッコミを放棄した田村が急に舞台上で『芸人をやめる』と言いだすのではないか?」と恐怖に駆られたと、川島は心告白している。

 一方、同回に登場した流れ星は、少しパターンが異なる。オチのくだりでツッコミ上伸一郎は、いつまでたってもネタ終了のツッコミを言わない。ボケのちゅうえいは、やはり困惑。そして、ちゃんとツッコんでくれるよう、オチのくだりを再び繰り返したのだ。でも、上はツッコまない。ちゅうえいは同じボケを二度繰り返しただけ。最終的には、ちゅうえいが自分で自分をツッコんで、ネタを強制終了させた。

■「相方はいつも俺のことを下に見てる」(ダイアン津田)

 今回登場したのは、声優野沢雅子ものまねでおなじみのアイデンティティだ。野沢ものまねする田島直弥がボケで、ツッコミの見が「もういいよ!」を言わないという流れである。

 漫才が始まった。そして、オチのくだりに差し掛かる。ここで予定通り、見がツッコまなかった。戸惑った田島悟空キャラに徹したまま「どうした? おめえ、なんだおい。オチだぞ?」「おめえ、なんけえ(何回)やってるネタだ!」「フザけんなよ、いいかげんにしろ!」と憮然とした表情になってしまう。どうやらこの2人、コンビ内で明確な上下関係があるようだ。

「あんなことがあったら、ファミレス行って2時間(の説教)ですよ!」(田島

 続いての登場はダイアンだ。このコンビは、ツッコミ津田ボケ西澤裕介に対して思うところがあるらしい。

「いつものことバカにしてる! 下に見てる」(津田

 だからこそ、「ツッコミの存在を感謝してもらう」という今企画の趣旨は、津田にとって待望だった。 

 いよいよ漫才が始まった。そして、オチのくだりに差し掛かる。すると、津田は満を持して「もうええわ」を言わない! すると、やはり西澤は困惑。そして、小で「言えや」「何してん?」と津田を注意。ついには、客前で津田を殴りながら「お前アホなんか!?」「お前が『もうええわ』言えや!」と高してしまった。らちが明かないと判断した西澤は、自ら「もうええわ、ありがとうございました!」と締めて舞台を降りた。

 実は、津田には前科があるらしい。

「こいつ、過去に1回やってるんすよ。ルミネの出番で『もうええわ!』ってセリフがホンマに出なくなってむちゃくちゃになったことが、過去に1回あるんですよ。『また、それになった!』と思って」(西澤

 ボケツッコミの関係性は、当然ながら各コンビで異なる。テレビ界ではツッコミへのニーズが高まっているが、ダイアンアイデンティティのようにボケが上位にいるコンビは少なくない。でも、今回は下位にいるツッコミが反逆した格好だ。

 ネタ中で面いことを言うのはボケツッコミは、にそれをする側。ある意味、損な役回りだが、引き換えとしてツッコミにしか持つことのできない権利があるということか。

 かつて、ビートたけしはツービート漫才について「細かいセリフは決めず、アドリブガンガン入れながらオチというゴールに向かっていく感じ」と表現したことがある。でも、ツッコミが「もうええわ!」を言わなければ、オチオチでなくなってしまう可性だってある。に帰ろうと思ったら、その自体がなくなっていた、みたいな状況。恐ろしすぎるではないか。

(文=寺西ジャジューカ)

 

テレビ朝日『くりぃむナンチャラ』