今から約10年前に誕生した企業eXp Realityは前代未聞のペースで急成長を続けています。この企業にはとある特徴があります――オフィスには一人も従業員がいません。eXp Realityの従業員は、その大半がバーチャル世界で勤務しているのです。

株価は300%上昇、急成長の秘密とは?

2017年10月以来、eXp Realtyの価は300%以上の伸びという急上昇を遂げています。その後同社は2018年に入ってから、7か間で取引する不動産エージェント数を2倍近くまで増加させました。さらに2018年5月ナスダック開した際には、取引初日に時価総額10億ドル(約1,100億円)を記録。驚くべき急成長を見せています。

にわかには信じがたいことかもしれませんが、この急成長の大きな要因は同社の「オンラインバーチャルワールド」の活用にあります。従業員や建築業者、不動産エージェントといった関係者は全員バーチャル世界会議をし、教育や研修を受けているのです。

VRの世界が成長の源泉

eXp Realtyの事業は、建物の売買を仲介する、ごくごく伝統的な不動産業です。しかし、そのオフィスVRの中にあります。本社登録や書類の保管のための場所をワシントンに、その他に物理的な住所が必要とされる場所にいくつかの土地を持っているほかは、ビジネス用のオフィスビル1棟すら所有していません。

同社のCTOであるScott Petronis氏は、メディアSingularity Hubの取材に対して次のように述べました。「バーチャル世界を舞台にしている点は、々の成長の大きなです。もし物理的なオフィスの制約があったら、これほどまでの成長は出来なかったでしょう

この取材自体もバーチャル世界の中で行われており、Singularity Hub記者は同社のバーチャルシステムeXp World」をPCダウンロードアバターを操作してPetronis氏に面会したということです。

互いにアバターを通じて面会したことについて、記者電話での会話よりも、はるかに「同じ場所に一緒にいる感覚」が強く体験できたとしています。

しかしなぜ、実際の土地や建物を扱う不動産業界の企業が、実際のオフィスを使わないという決断をしたのでしょうか? インタビューの結果見えてきたのは、危機が促した独創的な対応でした。

金融危機によるダメージを防ぐべく、リモートワークへ

eXp Realtyの創立者とそしてCEOを務めるGlenn Sanford氏が同社を立ち上げたのは、今から約10年前、2007年サブライムローン問題から連なる住宅バブル崩壊後のこと。当初オフィスを設置するための資が不足したことから、同氏は事業のやり方の見直しを決断。同様の危機が起こった際、事業へのダメージを防ぎたいという狙いもありました。

そして当時は登場したばかりのGoogleドキュメント等やTrelloといったツール活用し、クラウドベースビジネスへとを切っていきます。バーチャル世界の中にオフィスを設けることにしたのはそれから3年後、2010年のことでした。

ネット環境だけで勤務可能、通勤時のCO2排出もなし

バーチャルオフィスメリットの一つには、スペースを気にせずに人を雇えるということがあります。従業員はインターネット環境さえあれば業務可です。そして経営も、世界中からマネジメントを行っています。CEOワシントンから、COOアリゾナから、そしてCFOネバダから……。Petronis氏自身は米国ドイツインドなど、世界中を飛び回りつつ揮を取っています。

Petronis氏は、「従業員たちは、実際に一緒にいて協している実感を得られています。現実物理的なオフィスにいて、直接会話しているのとほとんど同じですよ」と話しています。

また、eXp Realtyの従業員数は約12,000人。このうちのおよそ4分の3が毎バーチャル間を使っているとのことです。これだけの人数の通勤がなくなったというだけでも、大な量のエネルギーが節約されたことが分かります世界の同規模の企業べて、明らかCO2排出量は少ないと言えるでしょう。

課題はコミュニケーションの活性化

現在のところ、コストの観点からVRヘッドセットを使ってオフィスアクセスする人はほぼいません。オフィスは最新のVRデバイスに対応していますが、2Dのウェブブラウザ上で、アバターを通して歩き、会話しています。

一方でバーチャルオフィスには課題もあります。Petronis氏は、バーチャルオフィス内の従業員は自身の仕事だけに集中しがちで、そばにいる同僚と会話するケースが少ないと摘しています。同氏は「々はオフィス環境ソーシャルな要素を盛り込むべく取り組んでいます。たとえばバーを作るなど。もっと人々の繋がりを強めたいですね」と話しました。

Petronis氏は他の企業バーチャルオフィス活用することは可だと考えており、VR技術のさらなる発展を期待しています。現在eXp Realityほど事業に活用できる企業はまだ例がありませんが、今後の企業活動の在り方として、注に値するでしょう。

(参考)Singularity Hub