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SF世界が近づく音がします…。

先日科学Natureで発表された研究が、なんとも未来感あふれるテクノロジーでした。なんと、分子そのものがAIになったというのです。

どういう研究?

「分子パターンの認識をDNAベースの『勝者総取り方式』ニューラネットワークでスケールアップすること」と題されたこの研究が、カルフォルニア工科大学Lulu Qianさんの研究室で行なわれました。

内容は、DNAベース化学反応を利用して、”データ処理”を行なう人工ニューラル・ネットワークを作るというものです。要はDNA化学反応を使ってデータ処理のメカニズムを作るというものなんですが、なんとも想像しがたいですよね…。

研究内容をもうすこし詳しく

カリフォルニア工科大学のブログ記事によると、DNAベースにした人工ニューラル・ネットワークはこれまでも研究されてきたものの、その情報識別は限られていたようです。今回の研究ではDNAベースで作られたグリッド回路をデザインし、各地点の化学反応をデジタルにおけるビットのように扱ったとのこと。それによって、化学物質に置き換えられた手書きの数字を識別することに成功したそうです。

そして、この研究が「慎重にデザインされたDNA配列によって構成されたニューラル・ネットワークは、”分子が作り上げた”数字を化学反応を通して正確に特定できる」ことを実したと説明しています。

これまでは「ニューラネットワーク」と言ったらデータ処理を模して開発されたコンピューター上のシステムでしたが、それが有機分子を使った化学的なシステムで実現されるというのは「あれ?なんかに近づいてない?」という感覚でドキドキします。

数字を分子で表した方法

手書きの数字をどうやってDNAベースニューラル・ネットワークで識別させたかというと、次のような手順になっています。

まず10×10のピクセルの並びを設定します。それぞれのピクセルがひとつのDNA鎖の分子に対応しており、合計で100ピクセルがこの分子の群で表されています。そして手書きの数字を10×10のピクセル上の20個のピクセルを選ぶ形で描くと……手書きの数字に対応する20個のDNA鎖の組み合わせに変換できるわけです。

こうして分子の群に変換された手書きの数字を試験管のDNAベースニューラル・ネットワークと混ぜたところ、数字が1から9のどれかを識別することができたとのこと。ちなみに識別結果は化学反応から生まれるシグナルが「黄色なら5」、「なら9」といった具合に読み取れるそうです。

使い道

書いていて頭がこんがらがりそうですが、Qian氏の研究室の究極的な標は「DNAによって作られた人工ニューラル・ネットワークを用いて、演算をしたり判断をするといった知性プログラムを生み出すこと」とのことです。

この”人工分子ニューラネットワーク”の仕組みをさらに発展させれば、「環境に反応するペンキやバンドエードのような物」も作ることが可になるとQian氏は述べています。 の構造をモデルに作られた物質が知性を持つようになる……。既に私たちの日常生活にはデータ処理を持つ物が溢れていますが、これによってさらにその範囲が広まるかもしれません。

たとえば寒い時は保温してくれるけど、暑い時は通気してくれるパーカーとかでしょうか? それで調節の具合が持ちの好みに染まっていくとかだとなお良いですね。

いよいよ「モノに魂が宿る」がファンタジーじゃなくなるのでしょうか。


Image: Getty Images,
Source: Nature, Caltech

塚本