北朝鮮の朝鮮労働党機関紙・労働新聞は10日、日本の安倍政権が朝鮮半島情勢を「軍事大国化と再侵略野望を実現する口実」にしていると非難する論評を掲載した。

北朝鮮が、日本にこうした難癖をつけるのは、今に始まったことではない。6月19日にも、内閣などの総合機関紙である民主朝鮮が、日本の安倍政権が「海外侵略に狂奔している」とする論評を掲載。その中で、日本の自衛隊の攻撃能力は「世界一流」であるなどと評した。

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今回の論評は、「朝鮮半島に漂っている和解と緊張緩和の雰囲気が、戦争国家を志向する日本の前途に暗い影を落としている」としながら、「安倍一味が神経を尖らせ、朝鮮半島で自分らの願わない変化が起こるのではないかと居ても立ってもいられないのは、決して理由なきことではない」と指摘。

また、「日本が真に地域の平和と安定を願うなら、過去、わが民族に被らせた罪悪を清算する勇断を下すべきであり、懐にしのばせた刃物から捨てなければならない」と主張した。

こうした論調は、すべてが金正恩党委員長の意思から出ていると見て間違いない。北朝鮮のメディア戦略は、同氏が直接指揮していると見られるからだ。

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金正恩氏がこうしたメッセージに込めた目的は、大きく2つある。ひとつは日本側に、「日朝対話を行うならあくまで過去の清算が主題となる」と知らしめること。もうひとつは、日本の軍拡の危険性を言いつのって、短・中距離弾道ミサイルを保持する口実にすることである。

北朝鮮は米国との関係改善のために、米本土に届く大陸間弾道ミサイルを廃棄することはやむを得ないと考えているはずだ。しかし、日本が主張するように、すべての射程の弾道ミサイルを放棄してしまったら、安全保障上「丸腰」に近い状態になってしまう。朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の軍紀は乱れきっており、ほかに頼れるものがないからだ。

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しかしそれにしても、最近の日本非難はあまりにしつこい。米韓を非難できなくなってしまったから、こういう記事しか書いてこなかったメディアの担当者たちが、順番で「うっぷん晴らし」でもしているのかと想像してしまうくらいだ。

そのように考えていてふと気づいたのだが、いま、北朝鮮に対する圧力維持を他国に呼びかけて回っているのは、もはや日本くらいだ。金正恩氏は、それが憎らしくて仕方ないのかもしれない。

ということは、日本のプレッシャーが効いているということでもある。日本政府はもう少し従来の路線どおりに進みつつ、北朝鮮の態度変化を慎重に観察すべきかもしれない。

金正恩氏(朝鮮中央通信)