梅雨々にけ、シーズンの到来だ。登山ブームの再燃以来、山岳遭難の増加に止めがかからない。

 警察庁6月21日に発表した「平成29年における山岳遭難の概況」によると、2017年の発生件数は2583件で、前年88件増。遭難者は3111人で同182人増え、死者・行方不明者は354人で同35人の増加となった。発生件数および遭難者数は、統計の残る1961年以降、過去最悪である。

 この10年間の推移をみてみよう。2008年の発生件数は1631件、遭難者数は1933人だった。13年に件数が2172件と2000件を突破し、遭難者も2713人へと増した。15年には2500件をえ、遭難者も3043人と初めて3000人台に達した。そして昨年、ついに過去最悪の遭難状況となってしまった。10年間で件数は1.58倍、遭難者数は1.61倍になった。

 ここでいう山岳遭難には、登山だけでなく山菜採りや観光、渓流釣りスキーなども含まれているが、遭難者数でもっとも多いのが登山ハイキング、沢登りなどを含む)で、2223人と71.5を占めている。意外と多いのが山菜採りで380人、12.2%となっている。

遭難でもっとも多いのは「迷い」

 次に遭難の態様(原因)をみてみよう。上位は「迷い」1252人(40.2%)、「滑落」524人(16.8)、「転倒」469人(15.1)、「病気232人(7.5)、「疲労」175人(5.6)、となっており、これらを合計すると全体の85.2%に上る。ほかには悪崩、落石など自然の脅威が原因となっているケースもある。

 そして、見逃せないのが「野生動物の襲撃」で63人(2%)。最近も秋田県仙北動物に傷つけられたようながある男性の遺体が発見された。この男性を襲った動物クマとは特定されていないが、クマの出没が全的に増加していることから、可性は高い。実際に、山菜採りなどで野生動物と遭遇しているケースが増えているようだ。

 全で遭難件数が最多の長野県292件、遭難者数327人)は、長野県警のHP上に山岳遭難発生状況の週報がアップされている。最新の週報(6月22日)には6件の遭難事例が紹介されている。うち4件が登山者に人気の北アルプスで、遭難者は24歳女性から71女性まで10人(男性7人、女性3人)。態様別では「疲労」が6人、「滑落」が3人、「迷い」が1人となっている。

 具体的なケースを見てみよう。

 71歳の女性は、信州名山の戸隠の荒倉山(最高峰は砂鉢山で標高1431.6m)から下山中、バランスを崩して滑落し負傷。24歳の女性は中房温泉から槍ヶ岳に向けて単独で登山中、西岳で疲労により行動不になった。50歳前後の男性5人組は、槍ヶ岳方面から北穂高岳に向けて登山中、疲労等により穂高連峰大キレットで行動不となった。

遭難者の51、死者・行方不明64.760歳以上

 この数年、中高年の遭難件数の多さが摘されているが、それは「概況」からも明らかだ。遭難者のうち40歳以上が2419人と全体の77.8を占め、このうち60歳以上は1588人で51.0。全体の半分が“シニア遭難”である。死者・行方不明者でみると、40歳以上が315人で全体の89.0と圧倒的。このうち60歳以上は229人で64.7である。

 シニアの遭難状況を詳しくみると、60歳から69歳が741人(23.8)、死者・行方不明者は111人(31.4)、7079歳が669人(21.5)、死者・行方不明者は81人22.9)、8089歳が165人(5.3)、死者・行方不明者は33人(9.3)、90歳以上が13人(0.4)、死者・行方不明者は4人(1.1)となっている。

 60歳以上の遭難者数は13年の1258人から17年には1588人と1.26倍だ。死者・行方不明者数は、13年は204人だったが17年は229人へと1.12倍に増えている。80歳以上だけみても、遭難者数は106人から178人(1.68倍)、死者・行方不明者は25人から37人(1.48倍)へと増加している。高齢化社会が進行するなかで、元気な高齢者が山に入る機会はますます増えるとみられるが、「過去に山登りをしていた」といった体の過信は禁物だ。日帰り登山の場合は、登頂までに体を消耗するケースが多く、下山時は慎重に歩きたい。

 筆者は数年前の北海道の名峰・蹄山(標高1898m)を登ったが、その際に7合付近ですっかりバテて座り込んでいる60代後半の老夫婦と遭遇した。この山は登り口から山頂までの標高差が1500m以上あり、登りだけで4~5時間はかかる。「どうしました?」とをかけると「疲れてもう歩けんよ」と夫がポツリ。は良かったが、帯が途切れる9合からはも強くなり、体感温度が下がる可性があったので「理はしないほうがいいですよ」と話しかけ、けがや・食料の有を尋ねた。幸い、けがはなく、2人分のと食料も十分にあるようだった。分とチョコレート糖分を補給して休憩したら、だいぶ回復したようだった。「残念だけど、今日はここでおしまい。下りますよ」と2人はゆっくり下山していった。登頂後、下山時にこの老夫婦を見かけなかったから、事に麓まで下りたようだ。理をしていたら、どうなっていたかわからない。

 かくいう筆者自身、高知市民に親しまれている郊外の山で、急にバテてしまったことがある。標高400mにも満たない里山である。典的な“シャリバテ”(食事が不十分でバテること)だった。一番の飛行機高知に向かい、空港で取材してから山に向かったのだが、起きてから何も食べていなかったのだ。ザックからおにぎりを取り出して食べ、お茶を飲んでしばらく休憩したら体が回復した。ちょっとした油断が招いたミスである。

 爽やかな大気、すばらしい眺望。山歩きには最適のシーズンを迎えるが、標高の高さに関係なく遭難の危険性はつきまとっている。入念な準備と理のないコース選び、信頼できる仲間、そして理をしないこと。くれぐれも安全登山に努めていただきたい。
(文=山田稔ジャーナリスト

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