政府は、官製ファンドの産業革新機構の社長に元三菱UFJフィナンシャルグループ社長田中正明氏を、取締役会議長に建設機械大手のコマツの坂根正相談役を充てる人事を内定した。

 ルネサスエレクトロニクスやジャパンディスプレイなどの支援に巨額の税を投じ、いまや大手凋落企業の“救済マシーン”と化している産革機構。2人の起用について、所管する世耕成経産相は「経営を任せられる投資のプロに入っていただいた」と自賛してみせたが、

田中氏は、MOF担(旧大蔵担当)時代から金融庁信親長官と親しく、その関係で金融庁参与に取り立てられた。庁内に二十数人いる“友”(長官の友達)と呼ばれる参与の筆頭格。氏の意を受けて融審議会で、銀行の経営批判などを重ねてきました」(メガバンク幹部)

 しかし、後ろだった長官の今退任が決まり、「庁内に居場所がなくなることを懸念した氏が産革機構社長田中氏を推薦したのではないか」(同前)と囁かれる。

 一方、坂根氏は過去に経団連会長にも名前が浮上した大物財界人。これまで政府の産業競争会議議員や経産省の総合資エネルギー調会長などを歴任している。

「坂根氏は中国など海外事業に精通していると言われますが、議長就任は経産省導の人事でした」(財界関係者)

 約2兆円の投資を持つ産革機構は、今年途に「産業革新投資機構」に称し、設置期間を2033年度まで9年間延長。持株会社化して、現在の投資案件を担当する部門と、新たな投資を手掛ける部門をぶら下げる案が練られている。同時に、クールジャパン機構との統合も視野に入れる。

クールジャパンは約44億円(173月時点)の損失を抱えている。統合は、クールジャパンの損失を見えなくする一種の“まぶし行為”と言われても仕方がない」(前出・メガバンク幹部)

 さらに田中社長のもと、これまで10億円の投資案件は外部委員を含む産業革新委員会の事前了承が必要だったが、この縛りもなくなる。投資は大きくなり、決定プロセスブラックボックス化しかねない。だが、そのツケを払わされるのは民なのだ。

森岡 英樹

森長官の“置き土産”? ©文藝春秋