老友都々逸

老友新聞2018年6月号に掲載された都々逸入選作品をご紹介いたします。(編集部)

天の位

お濠(ほり)一面ピンクに染めて
風の水脈(みお)ひく花筏

王田 佗介

桜の花が濠一面に散って花びらが水面を流れていく様子。「風の水脈」は「風の通り道」。「花筏(はないかだ)」は「散った桜の花びらが帯状に水に浮かんで流れて行くのを筏に見たてた」語で、下の句が簡潔な表現ながら何とも美しい。

地の位

顔を見て苦も忘れるような
人がありゃこそ苦労する

黒木 弘

老いて増す増すのご心境が嬉しい。会えばそれだけ胸が高まるのに迂闊に切り出せない。「苦を忘れることが苦労」とは昔の唄にもよくありましたが、純愛は永遠で年をとらないのですね。

人の位

あの子じゃわからん花いちもんめ
噂ばかりで消えた恋

岡本 正子

2組に分かれて、じゃんけんで始め、歌いながらメンバーをやりとりする「花一匁」は悲しい人買い、口減らしの昔が語られているとも聞きます。初句が「あの子がほしい」でしたが、初句は三四か四四ですので直しました。下の句への流れが男女混じって遊んだ年頃の感覚を優しく掬(すく)い上げています。

十 客

孫の笑顔でみんなが和む
たっち二・三歩また転ぶ

向井 智恵子

泣いても笑っても、立っても転んでも…。世界の中心はお孫さんにあるのですね。

途中乗車も気やすく拾い
赤字路線にゆれるバス

飛田 芳野

バス停以外で本当にこういうことがあるのですね。皆、顔見知りできっと楽しい生活の毎日なのでしょうね。

吹雪く夜でも湯タンポ抱いて
夢路たどって春を待つ

小林 良一

電気毛布やカーペットなど電気器具も増えましたが、やはり「湯タンポ」の良さは格別なのですね。

おしゃべり婆さん品など外(よそ)に
笑って明るい場所が好き

岩崎 ますゑ

おしゃべり婆さんはご自身だから味がありますね。

過ぎりゃ苦労も貴重な歴史
心満ちてる今の幸

惣野代 英子

筆に著わさなくとも、どなたにも「自分史」があり、それを思い返せば「今こそ幸福」と感じられる。そうした心の持ち様が幸せを呼ぶ生き方なのですね。

桜散ったが石楠花(しゃくなげ)藤(ふじ)と
四月は花咲か爺が来る

勝亦 はる江

御地、御殿場の温暖な気候が羨ましい。

今日も湿布にホカロン貼って
元気に明るく過ごしたい

鈴村 三保子

私も含めてみんなどこかが痛かったり、動かなかったり…ですね。

夫婦別姓 同性結婚
成り立つことさえ摩訶不思議

櫓木 香代子

私もそう思う派です。

五十路過ぎてもまだ嫁取らぬ
抱けぬ孫子の夢を見る

鈴木 曻

こうしたご子息の結婚観に寂しさを覚えるのは当然。しかし、愛する我が息子よ…。

競う若者パラリンピック
望む笑顔の金メダル

高木 まつ

パラリンピック(障がい者体育大会)はもう止めにしよう、との意見もインターネット上にあるようですが、私はそうは思いません。重要な精神に支えられている大会だと思います。

「お濠(ほり)一面ピンクに染めて 風の水脈(みお)ひく花筏」2018年6月入選作品|老友都々逸