こんにちは。毎月1回のペースで続けさせていただいている本連載ですが、先月は事情により休載させていただきました。今月からまた復活いたしますのでよろしくお願いいたします。また、大雨で被害に合われた皆様には、心よりお見舞いを申し上げます。

さて、先日初めて3D CADを使用することになったという方からこんなことを聞かれました。

「形状を作成するためにスケッチを開始すると、画面の中央に点が表示されるのですが、これはなんですか?」と。

なるほど、初めてのものを目にするというのはこういうことだと思うと同時に、改めて慣れというのは怖いなと思いました。CADに限らず、日頃慣れ親しんでいるものや事象は「当たり前」になってしまい、初めてそれに接する人へ説明する内容からこぼれ落ちてしまいがちです。3D CADの「真ん中に見える点」も同様です。

ということで今回は、改めて「真ん中の点」、つまり原点についてお話します。

これまで2D CADを使ってきた方が初めて3D CADを目の前にして、最初に戸惑うのは、Z軸も同時に考えなければならないことではないかと思います。2D CADはX・Yとふたつの軸で構成された平面的な世界で立体の形状を表現しますが、3Dの場合は同時にZ軸、つまり奥行きも含めて表現します。

最終的には、2D・3Dどちらにおいても、物理的な完成品を仕上げるための指示書となるもの(2D図面または3Dデータ)を出力します。2D 図面の場合は最終的な成果物が紙なので、CAD上のXY座標を基準にして作図をすることは必須ではなく、むしろ正しく形状を認識するための投影図間の位置関係が重要になります。

しかし、3D CADで設計する場合の最終成果物は3Dモデルそのもの。3D空間内のどこにモデルを置いたかが、そのまま設計した3Dモデルの基準となり、意図を表現することとなります。

こちらの例は、機械製図の教科書でよく見かけるような図です。図面としては、正面図に対して上面図は上から見た形状を表現しており、水平方向のずれは許されません。

この図面を最終的に出図する際には、この部品はどこを基準に加工、また検査するべきなのかを明確にできるように、寸法を記入することが必要です。

では、この形状を3D CADで設計してリリース(出図)する場合はどうでしょう?

3D CADで作成したモデルは、2D図面上で平面的に表現した各方向から見た図を組み合わせた集合体となっています。ですから、考慮すべきはこの部品の基準を明確にすることのみ、ということになります。その基準を明確にするために使用するのが「真ん中の点」、つまり「原点」です。原点を基準に3Dモデルを作成することで、2D図面の寸法による表現と同じ役割を果たすことが可能になります。

この図は先ほどの2D図面の部品の3Dモデルです。基準位置、つまり原点は底面および中心の円筒の中心軸位置に設定しています。こうすることで、誰が見ても部品の基準の位置が明確にわかります。

なお、部品単体で基準を考える場合、その部品自体の機能を設計者自身が考えて決定しますので、この図が唯一の正解ということではありません。あくまで一例として示しています。

さて、ここまでの話は部品を単品として考えていい場合のものです。しかし、部品の性質によっては、アセンブリ内の他の部品との兼ね合いを優先して考慮すべきものもあります。

例えば下図のような蓋とケース部分2つで1セットとなるような入れ物を設計したい場合、相手部品との組み合わせにおいて、基準となる位置に原点を置くという考え方です。この場合、蓋のみ、ケースのみでは意味のない部品なので、ふたつを組み合わせた時に機能する基準を優先しています。

このように、モデリングすることによって、2D組立図面上で組み立ての基準を指示しているのと同じ効果を得ることができます。以上のようなことから、どのような場合でも、3D CADでは原点=基準です。必ずこの考え方のもとに作成することを心がけましょう。

ではまた次回をお楽しみに!
著者紹介

草野多恵
CADテクニカルアドバイザー。宇宙航空関連メーカーにて宇宙観測ロケット設計および打ち上げまでのプロセス管理業務に従事し、設計から生産技術および製造、そして検査から納品までのプロセスを習得。その後、3D CAD業界に転身し、製造業での経験をもとに、ベンダーの立場からCADの普及活動を行う。現在は独立し、ユーザーの目線に立ち、効果的なCAD導入を支援している。 著書に「今すぐ使いたい人のためのAutoCAD LT 操作のきほん」(株式会社ボーンデジタル刊)がある。
(草野多恵)

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