COCOROM
2018.6.7  恵比寿リキッドルーム 

大森靖子が全4会場のショートツアーCOCOROM』を開催した。リリースに紐づかず開催されるツアーということで、これまでの大森ディスコラフィーと、7月11日リリースされるニューアルバムクソカワPARTY』から、厳選されたセットリスト。決してにも真似をすることのできない“歌手大森靖子の渾身の歌が集まったお客さんの心を揺さぶるライブになった。ここでは初日恵寿リキッドルームの模様をレポートする。

大森靖子

大森靖子

ふわりと裾の広がったワンピース姿で登場した大森が、<愛してるなんてつまんないラブレターまじやめてね。世界はもっと面いはずでしょ!>と捲し立てた、荒ぶるロックナンバー「絶対絶望絶好調」からライブスタートバンドメンバーは、あーちゃんGt)、畠山健嗣(Gt)、えらめぐみ(Ba)、ピエール中野Dr)、サクラケンタGt/Per/Key)、sugarbeans(Key)という、大森ライブではお染みの6人編成だ。ファンタジーのような様相を描きながら突き進む「生kill the time 4 you、、」(※ハートマーク)、“ウォイ! ウォイ!”という掛けで会場が一体になった「非国民ヒーロー」。ときに優しく、ときに叫びながら、その存在を一言で形容することのできない異質な“歌手大森靖子は、自分自身を全く防御することなく、剥き出しの心でフロアのお客さんに対峙していた。 

大森靖子

大森靖子

最初のMCハイテンションだった。「絶対に楽しいに決まってるっしょ! 今日は『COCOROM』というツアーです。いままで1個1個のことに“向き合うぞ! 向き合うぞ!”ってやり過ぎてきたからこそ、知りないうちに、“ロムってる”“読む専”って言うんですけど、通り過ぎてしまったというか。“あ、この曲にはこんなところがあった”とか、いつの間にか記憶に残ってた大事なものを、今日は全部咲かせてみせようと思います!」。おそらくツアータイトルの『COCOROM』に込めたであろう想いを、そんなふうに説明すると、モーニング娘。道重さゆみテーマにしたポップロックな「ミッドナイト清純異性交遊」から、アコースティックギターを掻き鳴らしながら歌った「マジックミラー」、<絶対女の子がいいな>を繰り返す「絶対彼女」へと、“女子”を強く肯定しようとする大森らしい曲が続く。その「絶対彼女」では、「コンプレックスコンプレックスとは思わないでください。あなたとあなたでいることが絶対に美しいです」と訴えながら、「女子!」「おっさん!」「イケメン!」「ヤリチン!」「処女!」「メガネ!」「一緒にダイエット!」「いる人!」という、様々なカテゴリーコールレスポンスを展開。もがどこかのカテゴリーに属して必死で生きている――その想いを解放させるようなパフォーマンスは、集まったお客さん一人ひとりをギュッと抱きしめるように温かかった。

大森靖子

大森靖子

それぞれ個性の強いバンドメンバーが集ったスリリングなバンドサウンドにのせて、絶対的な存在感を放つ大森の歌は、後半、特に「流星ヘブン」以降、ますます狂気的な様相を見せていった。命を削るように<生きるほうを選んでいく>と歌う「流星ヘブン」、アカペラに始まり、ピアノのみの伴奏にのせて、を震わせながら、時々マイクを通さずに叫びながら、“私”のなかにあるも憎も吐き出す「わたしみ」、ファルセットを交えた歌とポエトリーの中間のようなりから、死へと辿るの途中にある悲しみや怒りを拾い集め、最後に<その全てがに基づいて蠢ている>と絶叫する「死神」。大森人生を賭けて紡ぐ歌は1曲1曲が刹那的であり、普遍的だ。ラストナンバーは<音楽魔法ではない>と呪詛のように繰り返す「音楽を捨てよ、そして音楽へ」。バンドメンバーの名前を一人ひとり呼びながら繰り広げた長いアウトロのなかで、大森は「わたし音楽は、わたしわたしで、あなたがあなただからこそ、あなたのものだ!」と叫んだ。続けて、「愛してるよ!」と言うと、「も!」とフロアからの大森靖子が作り出すライブ間が凄まじいのは、ステージとフロアの双方が体当たりで“”をぶつけ合うからだと思う。表面的な感情移入や薄っぺらい共感はいらない。その場所にあるのは、人と人とが本気でぶつかり合う魂の共鳴だった。

大森靖子

大森靖子

アンコールでは、大森らしい言葉で集まったお客さんに感謝を伝えた。それは、あえて書かない。そもそも口で捲し立てる大森の言葉を、ライブ中に正確にメモをとることが難しいのだが、それを簡単な言葉では終わらせずに、何度も言い直しながら、言葉を選びながらった大森の言葉は、上限数千字のライブレポートでは収まり切らない摯なものだった。

そのあと、20分近くにわたりバンドメンバーとのゆるいトークを挟んでから(それもバンドメンバーをひとりずつステージに呼び込みながらのトークなもので、最後に登場したドラムピエール中野は「遅い!」と苦笑いだった)、最後に届けたのは「TOKYO BLACK HOLE」。隠しようもない楽曲本来の圧倒的なポップネスの中に、自らに流れる々しい血を1滴ずつ注ぎ込むような生々しい歌のなかで、<人が生きてるって ほら ちゃんと綺麗だったよね>というフレーズが大きな意味を持つ。大森靖子の歌は、生きるためにあるのだ。

大森靖子

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なお、大森靖子は、この日披露された「わたしみ」や「死神」などを含むニューアルバムクソカワPARTY』を7月11日リリースする。さらにアルバムを携えた全ツアー歌手 大森靖子「クソカワPARTYTOUR』を全13会場で開催する。ぜひ、今回のツアー大森靖子という名の美しい芸術をその撃してほしい。

取材・文=理絵


 

 

 

 

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