西日本を中心に発生したこのたびの記録的な豪雨によって、被害にあわれた全ての皆様に心よりお見舞い申し上げます。そして、まだ以前通りの日常生活を送ることができず、不安な日々を過ごしている皆様のご安全を心よりお祈り申し上げます。
梅雨が明けて早くも夏の到来かと思った矢先の事態に驚くばかりです。

雨の多い街・尾鷲市の美しい純喫茶「磯」

 「雨」といえば、三重県の尾鷲市も「雨の多い街」として知られています。年間降水量は上位で、一度降り始めるとどしゃ降りになるという特徴があるそうです。
今回は、春に訪れたその街で出会ったあまりにも美しい純喫茶「磯」について綴っていきたいと思います。

 その存在を知ったのは今から10年くらい前のことでした。どなたかが訪れた時の写真を拝見し、店内の至るところに飾られている魚や貝など海をテーマとしたオブジェや、席と席の間を仕切る背の高いパーテーションが何か綺麗なもので作られている、と目を留めたのがきっかけでした。そして、実際に訪れてその空間をこの目で見た時は、想像以上の緻密さ、繊細さ、美しさにしばらく言葉を失ってしまうほどでした。

 二代目を務めるマスターの岡さんに伺ったところ、先代のお父様が海へ出掛けてはこつこつと集めた貝たちを染色することなく、自然の発色を活かし、一つ一つバランス良く並べられた作品ということで、二つとして同じものはない貴重なものだそう。

 背の高い仕切りのおかげで個室のようになっているので、周りの目を気にせずに自分の時間を楽しめます。また、座る席によって置かれているオブジェは種類が違うため、毎日訪れることのできる近隣の住民も、毎回新鮮な光景を眺めることが。

 目を瞑るとまるで穏やかな海辺にいるように思える、この美しい空間をそばに感じながらパフェやあんトーストを頂く時間は「幸せ」の一言でした。

 とても居心地が良いため、うとうとと居眠りをしてしまう人もいらっしゃるそう。

先代の思いを受け継ぐ、2代目マスターの才能

 落ち着いた佇まいで目の奥にやさしさを感じる二代目と、いくつかの会話を交わした時にその言葉の節々から伝わってきたのは、お父様から引き継がれたこのお店をとても大切に思っていらっしゃるということでした。これからも、「磯」はますます輝きを増していくことでしょう。

 そして、岡さんは定期的に個展を開いているほどの絵の才能の持ち主で、日々必ず残しているという「絵てがみ」には、愛する尾鷲の街並みが細やかで情緒的に描かれています。そちらを見たら、初めて尾鷲を訪れた人でも「雨の街」が愛しくなってしまうほどの素晴らしさでした。

 個人的に尾鷲は歩いているだけでうっとりしてしまうとても好きな街でしたので、磯を訪れた際には、昔ながらの商店街や海にも足を延ばして散策してみてください。

Text/難波里奈

難波さんの新刊『純喫茶とあまいもの』重版決定!

難波里奈『純喫茶とあまいもの』

難波さんの新刊『純喫茶とあまいもの』が絶賛発売中!ぜひ手にとってみて下さい。

AM