日本人がまとめた「中国遊園地大図鑑」が話題になっている。1作目の「北部編」は2016年の12月に発売され、2017年2月の「中部編」に続き、今年7月9日には3作目の「南部編」が発売されるなど、2年に満たない期間で3冊が出版されるという人気シリーズになっている。ネットでは「じわじわきます」「このB級C級感がツボ」「怖いもの見たさで読んでいるうちに、驚愕と笑いがこみ上げてくる」とさまざまな反響が寄せられている。

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同書は中国のローカル遊園地に焦点を当てているのだが、そもそもなぜそこに注目したのか、著者の関上武司氏と出版社に話を聞いた。
著者の関上氏は1977年生まれで、愛知県在住の技術職のサラリーマン。日本や中国のB級スポットや珍スポットを紹介するブログを運営しており、北京への留学や駐在員として江蘇省蘇州市に約2年間滞在した経歴を持つ。
「中国遊園地大図鑑」を出版したパブリブ社の編集者は以前から関上氏のブログを見ており、「中国の遊園地のシュールさに呆気に取られていました。中国での著作権意識も高まってくるでしょうし、経済的に発展してきていて、日本の遊園地を遥かに凌駕する遊園地も出来てきているので、こういった『パクリ遊園地』は過渡的な現象とも言えます。実際に中国政府がこれ以上テーマパークを乱造することを禁止したそうです。なのでこれらのヘンテコ遊園地は、歴史的資料としても残しておかないといけないなとも思いました」と書籍化のきっかけを話してくれた。
中国の遊園地に着目した理由について関上氏は、「2011年に偽ディズニーランドで有名になった石景山遊楽園に訪問してから、中国の遊園地の魅力にはまり、サラリーマンの長期休暇を利用して中国観光の際にはついでに遊園地も撮影していたところ、いつの間にか訪中の目的が中国の遊園地の撮影がメーンになっていました」と語っている。
中国語が堪能な関上氏は中国人との交流は問題なかったのだが、取材時には体調管理や公共交通機関での移動に苦労したと語っている。
体調管理について関上氏は、「『中国遊園地大図鑑 北部編』(※1作目)の半分以上を占める東北地方の遊園地の取材前から体調不良で、雨天の撮影強行などの無理が重なり、最終日には高熱でダウン。山東省青島市の街中の診療所で点滴を打って帰国。診療所の女医さんの丁寧な診察には今でも感謝していますが、病室の空いているベッドで年配のお医者さんが昼寝をしていたのは中国らしい緩さだと感じました」と語った。
移動時の苦労については、「広大な中国で取材中の大都市間の移動は基本的に高速鉄道を使うことが多かったのですが、さすがにチベット自治区から内モンゴル自治区への移動は飛行機を利用することに。ただ、飛行機が前夜からの悪天候の影響で運休。取材スケジュールが根底から台無しになるピンチでしたが、現地ガイドさんや旅行会社スタッフの尽力もあり、別の便で事なきを得ました。『中国遊園地大図鑑』シリーズで紹介した物件は日本ではありえない事の連続でとても楽しめたのですが、非常に残念だったのは、随分前に撮影した物件を再訪してみると施設そのものが撤去されていたケースもあり、書籍での紹介そのものを断念したことがあります」という。
3作目の「中国遊園地大図鑑 南部編」ではその名の通り、中国南部に足を運び取材を行った関上氏。中でも印象深かった3カ所を紹介してくれた。
【広東省珠海市の珍珠楽園】
ほぼ全てのアトラクションが運行を停止している半分以上廃墟のような遊園地でしたが、従業員が畑で野菜を栽培、鶏の飼育、お手製ソーセージを干して自給自足に励む光景は正直、理解不能で強烈な印象でした。
【江西省南昌市の南昌万達楽園】
ツッコミどころもありますが、万達グループの王健林会長の「西洋の模倣はやめにしたい」という強烈な意思が反映され、ショッピングモールに地元の景徳鎮のデザインを大胆に融合していたのは良い意味での驚きでした。
【湖南省長沙市の長沙世界之窓】
文字通り世界一周がコンセプトのテーマパークで、2015年に訪問した際には偽物国家首脳陣がパレードに登場し、パクリキャラのエアー人形が目立っていましたが、2016年に再訪したところパクリキャラやグッズの減少が見られました。中国もオリジナルの漫画、アニメ、ゲームを大量に生産できるようになり、徐々に著作権意識が高まっていくと感じられました。
かつては雑なコピーが目立った中国の遊園地。今では万達楽園のような近代的で斬新な形の遊園地も登場している。こうした中国の発展ぶりを関上氏の書籍から垣間見ることができる。パブリブ社の編集者が語ったように、関上氏の書籍は「歴史的資料」としての役割も果たしている。関上氏は、「個人の趣味から出発して書籍執筆のために中国全省、全自治区に渡って遊園地の取材を行いました。さすがに中国のテーマパーク建造ペースも鈍化するはずですが、北京ではユニバーサルスタジオが建設中ですし、各地域に映画の撮影所や巨大な娯楽施設が開業しています。今後はこういった物件の取材も行う予定で、台湾やシンガポールといった中華圏の遊園地との比較も面白いテーマだと思います」と語っている。(取材/内山

日本人がまとめた「中国遊園地大図鑑」が話題になっている。写真は著者提供。