京セラは、筑波大学が所蔵している臨床写真を用いて、90%以上という非常に高い診断精度を有する皮膚腫瘍AI診断補助システムを開発したことを発表した。

この成果は、筑波大医学医療系の藤本学教授、藤澤康弘准教授と、京セラコミュニケーションシステムとの共同研究グループによるもので、英国皮膚科学会誌「British Journal of Dermatology」に6月14日付けで掲載された。

悪性黒色腫(メラノーマ)とよばれる皮膚がんは、見た目が「ほくろ」と類似しているため、これまで画像診断技術によるほくろとメラノーマの鑑別に関する研究が行われてきたが、一般的な臨床写真だけではその判断は難しい。そのため、特殊な10倍の拡大鏡(ダーモスコープ)で撮影された画像によるAI診断補助システムの開発が進められており、皮膚科専門医と変わらない診断精度が報告されている。一方で、一般の臨床画像は撮影時の条件が異なっていることから、ダーモスコープと比べて画質を均一化することが難しい。

研究グループは、メラノーマ以外の良悪性を含む14種類の皮膚腫瘍を診断するための、ディープラーニングを用いたAI診断補助システムを2017年から開発してきた。ディープラーニングの導入により、画像の判別システムの精度は飛躍的に向上し、すでに一般的な物体の認識では人間と遜色ないレベルに達している。しかし、ディープラーニングは膨大な画像をシステムに投入する必要があり、希少な疾患が多い皮膚疾患の診断システムの構築には不向きである。そこで研究グループは、少ない画像数で高い精度を達成できる技術開発を目指した。

筑波大学が蓄積してきた臨床写真の中で、皮膚腫瘍の診断が確定したものを中心に収集した結果、14種類の皮膚腫瘍に関する約6000枚のデータセットが得られ、うち4800枚をディープラーニングの学習データとして使用した。ディープラーニングには、120万枚の一般的な物体画像で事前学習済みの「GoogLeNet」をベースとして使用。学習データは、皮膚腫瘍が画面の中心に来るようにトリミングした後、1000ピクセル四方にリサイズし、15度ずつ傾けた別画像に書き出して1枚の写真から24枚の学習画像を作成した。学習時には画像をわざとぼかしたり、明るさを変えたりすることで、撮影時の状況のばらつきを含めて学習できるように工夫したという。

その結果、皮膚悪性腫瘍の判定感度96.5%、特異度が89.5%という高い診断精度を達成した。この診断精度の有効性を示すため、AI診断補助システムと日本皮膚科学会認定の皮膚科専門医13名とを比較したところ、皮膚科専門医による良悪性の識別率が85.3%±3.7%であったのに対し、AI診断補助システムの良悪性の識別率は92.4%±2.1%と有意に高いことが明らかとなった。良悪性の識別より難しい14種類の詳細な診断の正答率についても、皮膚科専門医が59.7%±7.1%であったのに対し、AI診断補助システムの正答率は74.5%±4.6%と有意に優れていた。

この皮膚腫瘍AI診断補助システムは、数年以内に実際の臨床の現場で使用できるようになることを目指している。皮膚腫瘍の良悪性が写真で判定できれば、皮膚科専門医が不足している地域においても皮膚がんの早期発見が可能となり、手遅れになる前に必要な治療を受けられるようになる。

なお、現状のシステムには非常にまれな皮膚腫瘍が含まれていないため、今後は対応する診断名を増やすことで、さらに実用的なものに発展させていくことが必要である。さらに、その他の皮膚疾患も診断できるシステムに拡張し、あらゆる皮膚疾患に対応できるようにバージョンアップを進めていくとしている。
(早川厚志)

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