UKFC on the Road 2018  2018.7.8  池下CLUB UPSET

7月8日(日)名古屋・池下CLUB UPSETにて、『UKFC on the Road 2018』の初日がスタートした。90年代から日本のロックシーンを牽引してきたレーベル、UKプロジェクト主催による『UKFC on the Road』は、所属アーティストを中心にしたラインナップで、ロックファンにはおなじみの夏の定番イベント。今年は名古屋公演を皮切りに大阪、UKプロジェクトのお膝元である下北沢、そして新木場STUDIO COASTまでツアーは続く。実は『UKFC on the Road』が東京以外で開催されるのは、2014年以来のこと。前回は1000人規模のライブハウスを会場とするスタイルだったが、今回は若手バンドを中心のラインナップに様変わりした。久々の『UKFC on the Road』ツアーは果たしてどんな景色を見せてくれるのか。初日の模様をレポートする。

開場は16:30。まだ早い時間ながら、フロアにはすでに多くのお客が詰めかけている。場内のBGMは、もちろん新旧のUKプロジェクト所属アーティスト。名古屋では久々のUKFCということもあって、オーディエンスが期待感に満ちているのがその表情からも見えた。

postman 撮影=タカギユウスケ

postman 撮影=タカギユウスケ

UKFCのSEの後、オープニング・アクトとして登場したのは地元名古屋出身の4人組、postmanだ。この4月にミニアルバム『干天の慈雨』をRX-RECORDS / UK.PROJECTから初めてリリースしたばかりで、まさにニューカマーと呼べる存在だ。実は、BIGMAMAが2016年に企画募集した「10代限定ライブ」で対バン相手に選ばれるなど、UKプロジェクトファンからは密かな注目を集めていたバンドでもある。

彼らがオープニングナンバーとして披露したのは、前述のミニアルバム「干天の慈雨」の冒頭を飾る「光を探している」。ボーカル・寺本颯輝のハイトーンボイスとサビのフレーズが印象的な楽曲で、集まったオーディエンスにバンドの武器をいきなり見せつける。「はじめまして。よろしくお願いします」というMC後には、フロアからは自然と手拍子がわき起こった。彼らにとってはホームタウン名古屋での公演ではあるものの、初めてのレーベルイベント出演という舞台。そのパフォーマンスからはいい意味での緊張感が漂う。続いてアグレッシブな一面を見せる「エンドブレス」へ。緊張感はありつつも、エモーショナルなプレイでしっかりと自分たちの世界観を表現していく。

わずかなMCを挟んでの「Moongaze」は、叙情的なギターフレーズと伸びやかな歌声が同居した、バンドの持ち味を十分に感じる楽曲。オーディエンスとの一体感もより増していく。「アークランプ」では、その美しいメロディラインを、静と動が同居するアレンジとともに披露。そしてラストナンバーは「UKプロジェクトと関わるきっかけになった曲をやります」と「魔法が解けるまで」をプレイ。前述したBIGMAMAとの出会いともなった一曲だ。憧れの存在を追いかける舞台でなく、同じ舞台、同じUKプロジェクト所属アーティストとして披露するパフォーマンスは、彼らとしても思うところがあったに違いない。ラストの叙情的なギターアンサンブルまで、気持ちの込もったアクトを繰り広げた。彼らはこの後、『UKFC on the Road 2018』の締めくくりである新木場STUDIO COASTにも登場する予定。さらに大きなステージでどんなパフォーマンスを披露するのか、期待高まるこの日のステージだった。

KFK 撮影=タカギユウスケ

KFK 撮影=タカギユウスケ

続いて登場したのは、結成10周年イヤーを迎えているKFK。昨年、カフカからバンド名を改名、その後リリースしたアルバム『ラブソングフォーディストピアシティトーキョー』の内容しかり、これまで以上に先鋭的で、KFKにしかなしえないサウンドメイクを目指し活動している感がある。今回の『UKFC on the Road』に登場するのは名古屋公演のみとあり、ファンの期待度の高さもうかがえた。

――私はもう気にしない――サンプリングされたその一声からライブはスタートした。「We are KFK.From Tokyo Setagaya. 楽しんでこうぜ!」Kouta KanekoのMCでフロアは一気に縦ノリをはじめる。エレクトロビートとシューゲイザー的ギターサウンドにフロアが包まれる。ステージに照らし出されたVJが、さらに彼らの世界観にオーディエンスを引き込んでいく。都会的なギターフレーズとオートチューンを駆使した「another world another day」では、今度はファンを心地よく横揺れさせる。そして「まだまだいけますか、踊ろうぜ!」と披露した「M i s s i n g」では、ラップで踊らせた後に一転、サビでじっくりとメロディラインに観客を酔わせる。まさに“パリピからひきこもりまでを巻き込んで踊らせる”を体現したパフォーマンスを見せつけた。

MCでは「KFKは名古屋だけで、今日でお別れ……」「何でそんな事言うんだよ(笑)」「それくらいの気持ちでぶちかまそうぜって言うね」と、彼ららしい天の邪鬼な側面も見せつつ、演奏するのは「熱帯夜」。ムーディーなリズムから始まり、Naoya Yoshimiのラップをはさみながら曲はアップテンポに。オーディエンスのテンションもペースアップしていく。そして、ライブにおけるキラーチューンである「Are you KFK?」へ。2人のラップの掛け合い、サビの「Are you KFK?」で一気に観客の手が上がり、まさにライブはクライマックスを迎えた。しかし、ここでライブを締めないのがKFKらしさか。ラストは「世田谷に帰ります」と「せたがや・とわいらいと」。切なくもダンサブルな楽曲でフロアを歓喜させ、そのアクトを終えた。まさに音楽性の垣根を超えたパフォーマンスで、オーディエンスを揺らし続けた30分だった。

odol 撮影=タカギユウスケ

odol 撮影=タカギユウスケ

この日の3番手として登場したのは、odol。アート・ロック的アレンジとポピュラリティとが同居するサウンドが、耳の早いロックリスナーから注目を集める6人組だ。今年は『FUJI ROCK FESTIVAL’18』への出演も話題となっている。逆光のステージへ登場した彼らは、繊細なピアノの旋律とともに「夜を抜ければ」でライブをスタート。叙情的なメロディと、心地よくデザインされたアレンジがフロアを包んでいく。ボーカルのミゾベリョウの歌声が、確かな存在感を持ってオーディエンスに突き刺さる。食い入るようにステージを見つめる観客の様子も印象的だった。

「思い思いに楽しんでください」。彼らの音楽性を象徴するかのようなMCのあとに始まったのは「大人になって」。激しく身体を踊らせるリズムではないが、その精鋭的なアレンジは着実にオーディエンスの感性を刺激していく。ミゾベリョウのパフォーマンスは、その声から生まれるメロディラインとともに聞き手を惹きつけていった。そして「新曲を披露します」と演奏するのは、タワーレコード限定シングルとして7月末にリリースされる「four eyes」。これまでの楽曲と違い、ダンスミュージックへのインスピレーションも感じる、また違った広がりをもった楽曲だ。

続いては「GREEN」。さながらサウンドトラックを聞いているかのように、リスナーに情景を喚起させる楽曲。最後は「1stアルバムから一曲聴いてください」と「生活」へ。エモーショナルなギターサウンドが印象的な、これまで演奏したなかでは一際シンプルなアレンジ。しかしそのシンプルさは、メロディラインや詩世界など、バンドのベースにある魅力をより引き立たせる。ステージを微動だにせず見つめるオーディエンスの視線のなか、印象的なステージを終えた。誤解を招くことを承知でいえば、バンド名とは裏腹に、彼らの音楽性にはダンスミュージックであることをどこか拒否するような、そんな印象を受ける瞬間すらあった。フェスやライブハウスでは、お客を踊らせることが第一義になりつつある現在のロックシーンのなかで、だ。しかし、その違いは彼らの強烈なオリジナリティの源泉でもある。それを証明するかのように、終演後の拍手が長い時間鳴り止むことはなかった。

LILI LIMIT 撮影=タカギユウスケ

LILI LIMIT 撮影=タカギユウスケ

本日、唯一UKプロジェクト所属ではないゲストバンドとして登場したのはLILI LIMIT。「A Short Film」でダンサブルなビートから楽曲がスタートすると、先程までodolの世界観に酔いしれていたオーディエンスたちが一気に身体を動かし始める。一曲目から厚みのあるアレンジがフロアに心地よく響いた。「ENCLOSE」はビートの効いた印象的なトラックからスタート。エレクトロなサウンドでバンドの新基軸を示したEP『LIB EP』からの一曲だ。そしてドープなビートから、独創的なメロディへと繋がる「Observe」へ。一曲のなかで巧みに陰と陽と使い分けるパフォーマンスに引きずられるように、オーディエンスの盛り上がりも増していく。

「UKFCということで久々の楽曲をやります」と演奏したのは「Girls like Chagall」。バンドの持つメロディセンスが否応なく発揮された楽曲がはじまると、これまでに以上に牧野純平の歌声とギター、キーボードのフレーズがフロアにポジティブに響き渡っていく。最後までまとまったMCは挟まず、ラストの「at good mountain」へ。軽やかなアレンジのなか歌われるメロディアスなフレーズに、心地よく身体を揺らすオーディエンス。キャッチーのサビのフレーズに自然と腕も上がる。黒瀬莉世と志水美日によるコーラスワークも素晴らしく、終始、聞き手を踊らせ続けたライブのラストにふさわしい締めくくりだった。

彼らの前に出演したodolとは、根本にある音楽感は共通しながらも、異なる個性、アプローチを持っているLILI LIMIT。出演順も含め、イベントならではの醍醐味を味わうことができた2バンドのパフォーマンスだった。

ウソツキ 撮影=タカギユウスケ

ウソツキ 撮影=タカギユウスケ

いよいよイベントもクライマックス。トリは「決して嘘はつかないバンド」ウソツキだ。エレクトロなサウンドが多かった本日のイベントのなか、「新木場発、銀河鉄道」の突きつけたギターサウンドが真っ直ぐにフロアに響き渡る。たった一曲、いやもしかしたらワンフレーズで自分たちの世界に染め上げてしまう個性、存在感はさすがの一言に尽きる。そしてオープニングナンバーが終わるやいなや鳴り響く、ファンキーなギターフレーズ。オーディエンスから待ってましたと言わんばかりの歓声が上がる。今年3月にリリースされるや、キャッチーな魅力で一気に人気曲となった「恋はハードモード」。楽曲、アレンジ、歌詞世界含め、彼らのエンタテインメント性がいかんなく発揮された楽曲だ。そして、それを可能にしているのは、ハンドマイクでこの楽曲を歌い上げる竹田昌和の表現力。彼のフロントマンとして力がいかんなく発揮された一曲で、フロアはいきなりクライマックスかのような盛り上がりを見せる。

短いMCのあとには、エヴァーグリーンなギターサウンドが印象的な「ボーイミーツガール」。そして「新しい夏の曲をつくりました」と「夏の亡霊」。まぶしくも切ないギターフレーズに彩られ、夏の楽しさと切なさが一曲のなかに同居する、まさにウソツキらしい夏ソングだ。
「ライブ以外のときはデッドしている感じなんで、今は本当に生きてる感じがします。僕は自分のバンドに過剰な愛情を注いでいるので、他のバンドも好きとか言われるとイラッとしたりもするんですけど(笑)。だから自分たちを愛してくれる、聴いてくれてる人に対して、いろんなことを言いたんですけど……、そういう言葉にならない感情を曲にしました。これも新曲です」
と披露したのは「名もなき感情」。ミドルテンポでじっくり歌われるその言葉は、既存曲とはまた違った魅力を持つ楽曲。今後の代表曲になりうるメッセージソングだ。最後は「執拗な愛を込めて」と「一生分のラブレター」。ウソツキを代表する爽快なポップチューンで、この日を締めくくるにふさわしいラブソングだ。ポジティブなメロディで会場を染め上げると、大きな拍手のなかステージをあとにした。

当然のように巻き起こるアンコール。3人のメンバーに続き、遅れてボーカルの竹田昌和が再登場する。「楽しすぎて今日はお知らせも全然してなくて……」と発表したのは秋のニューアルバムリリースのニュース。この日披露した新曲の素晴らしさもあり、その発表には大きな歓声が上がる。「最後はみんなでひとつになりたいので、僕らなりのダンスナンバーを送ります」とアンコールでは「旗揚げ運動」をプレイ。右手を上げていいのか、左手を下げればいいのか、初めて聞いたオーディエンスを惑わせまくる自称「世界一変なダンス」で、イベントはまさに笑顔の終着。4時間以上という長丁場であることを全く感じさせない一夜が終了した。

MCでウソツキの竹田昌和は「先輩バンドが作ってきたUKFCとはまた違ったものを」と語っていたが、この日、彼らを含めた5バンドが作り上げたのは、まさにそんな風景だった。どちらかと言えば、激しい個性のぶつかり合いのイメージが強かったUKFCだが、彼らが見せてくれたのはバンドが共演したからこそわかる違い、面白さ。今後、彼らがどう個性を進化させていくのが楽しみなのは当然ながら、まずは新木場STUDIO COASTにも出演するウソツキ、odol、postmanが、the telephones、[ALEXANDROS]ら強烈な先輩バンドたちの前でどんなパフォーマンスを披露するのか、一ヶ月後を楽しみに待ちたい。そして新木場STUDIO COASTに参戦予定のみなさんは、さらに楽しむために、大阪、下北沢の公演も見ておくことをぜひおすすめする。


取材・文=阿部慎一郎  撮影=タカギユウスケ

ウソツキ 撮影=タカギユウスケ