マサチューセッツ工科大学(MIT)、中国科学院、華南理工大学の研究チームは、厚さ数十nmの金属箔を切り紙のように加工する「ナノキリガミ」の手法を用いて光を制御する技術を開発したと発表した。光を利用する通信やセンサ、光コンピュータといった分野に応用できる可能性がある。研究論文は「Science Advances」に掲載された。

今回の研究では、集束イオンビームを使って厚さ数十nmの金属箔を加工し、精巧な三次元パターンを形成した。特定の偏光を選択的にフィルタリングできるようにパターン形状を設計したという。

ナノキリガミの手法自体は最近研究が進んでおり、複雑な形状の加工ができるようになっているが、これまでのナノキリガミには機械的な機能をもたせたものが多かった。ナノキリガミに光学的な機能をもたせたことが今回の研究の特徴であると研究リーダーのMIT機械工学教授Nicholas X. Fang氏は説明している。

集束イオンビームを使うと金属箔を切断するだけでなく、金属にストレスを与えてねじったり折り曲げたりすることもできるので、ナノキリガミを行うことができる。ねじりや折り曲げは、低線量で金属箔に打ち込んだイオンの一部が金属の結晶格子中にとどまり、格子の形状をゆがめてストレスを与えることで可能になるという。

円偏光には右回転と左回転の区別があり、ダイクロイックフィルタを用いるとどちらか一方の回転方向の円偏光だけを透過させるといった操作ができる。今回報告されたナノキリガミは、らせん状のパターンを形成してダイクロイックフィルタの機能をナノサイズのデバイスで実現したものであるという。

従来の光学部品と比べると、同じ機能を非常に小さなサイズで実現できるため、センサ、コンピュータ、通信、バイオ医療分野などに応用できる複雑な光学チップを実現できると期待されている。

バイオ応用の一例として、研究チームは、グルコースのレベル測定用デバイスへの利用を挙げている。グルコース分子には右手系と左手系が存在しており、円偏光の回転方向に対してそれぞれ異なる相互作用を示す。この性質を利用すると、グルコース溶液を通過した光を測定することによって溶液中に混在している右手系または左手系どちらか一方のグルコース濃度だけを測ることができる。

通信分野での応用例としては、複数のレーザービームを干渉させずに1本の光ファイバケーブル内に通すために円偏光を利用するといった手法がある。レーザービームの分離には光アイソレータと呼ばれるデバイスが用いられるが、今回作製したナノキリガミはその機能をナノオーダーで実現できるものであるとしている。
(荒井聡)

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