それなりの値段がしたのに体が変わってしまって着られなくなったスーツ、思い出が詰まっているがデザインが古くなって着にくいクローゼットの中にそんな洋は眠っていないだろうか。

の変化や時代の移り変わりによって着られなくなったも「リフォーム」をすれば、今の自分。今の時代に合ったとして再び着られるようになる。そんな手持ちのを、駄なく賢く活かす方法を提案するのが、株式会社心斎橋リフォームチーフフィッター兼東京・丸の内店店長であり、『Dr.久美子流 服のリフォーム術』(万来舎刊)の著者である内本久美子氏だ。

インタビュー前編では、リフォームが生み出すマジックとその効についてお聞きした。インタビュー後編となる今回は、実際にリフォームをする際のポイントやフィッターとしてこだわりについてお聞きした。

(取材・文:大村介)

――実際にスーツのリフォームをされる方にはどんな特徴や共通点がありますか?

内本久美子(以下、内本):いくつかのご希望パターンがあります。
太ったり痩せたりご自身の体の変化によってお直しを希望されているケース、今でも十分素敵だけれど、より完成度をめてお直しされるケース。あとは、物を大事にされる方ですね。初めて海外で買った洋や、思い出が詰まっていて捨てるに捨てられないとか、そういうものをお持ちの方です。

あるお客様は、成人式のときに買ったスーツを持ってこられたんです。その方は、定年が近いようなご年齢だったのですけれど、お持ちになったスーツには「ここから自分の人生が始まった」という思いがあって、手放せなかったそうなんです。
も変わってしまったし、どうしようということで相談に来られたんですが、リフォームは小さくするばかりではなく大きくもできるので、お直しをさせて頂きました。そのスーツはすっかりって、お客様にも非常に喜んで頂けましたね。

他にも、お様が着ていたスーツのお直しをしたいと希望されるお客様ですとか、人それぞれ思い出を持っていらっしゃいます。

ただ、やはり一番多いのは、格好よくなりたいというお客様です。
経営者の方や役職のある方が「今度の会議はこの装いで大丈夫か」とか「今度こういうパーティがあるのだけれど、このは遅れていないか」といったことを気にされます。時代性みたいなものは若い頃には敏感でも、ある程度のところに行くとわからなくなってしまうので、そこをめられる方は多いですね。

――書籍にもスーツの「時流」についてのお話がありましたね。

内本:はい。男性女性も、自分が一番多感だったころの感性を引っるんですよね。それはそれとして持っておいて良いところですけれど、やっぱり時流に合わないものを着ていると、で浮いてしまいますよね。「クラシック」という言い方もありますけれど、それを着こなすというのはまた違う世界なんですよ。

といってもトレンドを追いかけることが良いのではなくて、私は「自分」と「今の時代」の間の旬みたいなものを作らないと素敵にはなれないと思っています。これはいくつの世代になっても同じです。

アップデートしていかないといけないものなんです。だから、お直しで「今の自分」に合ったもので、「時流」を取り入れたリフォームをすることは大切なんですよ。わかりやすいところでは、例えば80年代女性は肩のパットが厚くて丸みがありましたが、今はナチュラルです。これが時流なんですよ。

それがわからずに80年代のままのを着ていると、それはただ古いものを着ているだけになってしまいます。よく「流行が戻ってくる」と言いますけれど、100%の戻り方をすることはないので、そこに「今」を足していかないと今のにはならないわけなんです。

――街でスーツ姿の男性、女性を見て一番多い「ここを直したらもっと素敵な着こなしになるのに」と思うポイントはどこですか?

内本:バランスが悪い装いというのがあるんですよ。例えば、スーツで「袖は長め」なのに「パンツの裾を上げている」とかですね。

パンツの丈を短くするのであれば、ジャケットの裾も上げてコンパクトにする。逆に、長めにしたジャケットの袖に合わせるのであれば、袖のラインをゆるめたラインで、パンツも少しクッションを入れていくというのが上品な着方なんです。そのルールを知らずにアンバランスになっている方は多いですね。

「その着こなしはおかしいですよ」と言ってくれる人はなかなかいないので、なんとなく着てしまっている人は多いと思います。でも、それはとてももったいないことだと思うんですね。それをちょっと善するだけで格好良くなるんですから。

ちょっと丈を詰めるだけで身長が2高く見えることもあります。自分の体ってなかなか変えられるものではないですよね。急に身長は伸びませんし、ダイエットしても急にサイズは変わりません。そこをどう素敵に見せられるのか。それが洋だと思います。

――バランスの悪さで言うと、就活生のスーツになんとなく違和感を覚えることがあるのですが、就活生の着こなしでアドバイスはありますか?

内本:就活生の方がご来店されることもありますが、面接にあたっては、トレンドとは別にに見えるような「行き過ぎないサイズ感」というのがあるので、それをアドバイスさせて頂くこともあります。

仕事によってはスタイリッシュに見えたほうがいい職種もありますし、堅めなお仕事であれば品格が漂うクラシックサイズ感がいいということもあります。それがその方にとっての「時流」なんですね。
就活生の方なら、実に見える装いがいいと思うので、過度にオシャレスーツスタイリッシュサイズ感ではないほうが、むしろ好印につながると思います。

就活生の方だとスーツを着慣れていないという感じが出てしまうことがありますが、それもサイズ感の問題です。そもそも日頃からスーツを着ているわけではないので、ゆるいのかキツいのかわからないんです。身体にフィットしたサイズ感のスーツならばそれほど違和感は出ないと思います。

――内本さんが心斎橋リフォームで服のお直しをするうえで、心がけていることを教えて下さい。

内本:今の時流とは何なのか。お客様が望んでいるものが何なのか。そこにを入れていますね。
常にファッションの講習会や分析のミーティングを行なっていますし、その感性と職人の技術と融合することで初めて良いものができるし、お客様に新しい情報提供できるという考え方を持っています。

世界においてセンスのないものはダメだと思うんです。お客様に素敵になって頂くことができないですから。ただ単にタイトにするのではなくて、どの分をどのくらいタイトにしたら素敵になるのか。そういうセンスがなければいけないと思っています。

――最後に、スーツの着こなしで悩んでいる方々やスマートな身嗜みを目指す方々にメッセージをお願いします。

内本:サイズ感で損をしていませんか? 1、2であなたは3倍ステキに見えるようになります。スーツでもカジュアルでもサイズ感を整えることで見えたい見せ方をつくることができます。
合っていないものを着ていてもおかしいわけではないのですけれど、より素敵になるには「サイズ感」はとても大切なので、是非一度、リフォームを試してみてほしいです。

『Dr.久美子流 服のリフォーム術』(万来舎刊)の著者、内本久美子さん