シンデレラになりたくて

by Jeffrey Wegrzyn

『ザ・ノンフィクション』って番組、ご存知ですか? 日曜の昼下がりに放送されているフジテレビ系のドキュメンタリー番組で、わたしはこれが大好きで毎週必ず録画しています。特に先週放送分は面白かった。

 タイトルは「シンデレラになりたくて…2018 ~前編~」。整形して自分を変えたいと願う女性たちが、自らのコンプレックスと向き合いつつ、「整形シンデレラオーディション」のグランプリを目指す姿を追ったドキュメンタリーの前編です。

 そもそも「整形シンデレラオーディション」とは、某美容整形クリニックが主催するコンテスト。一般公募された候補者の中から、書類選考と面接審査、合宿審査を突破したセミファイナリストたちが、次のステージでは、各々の希望に則した整形手術を受けます。その手術代は、すべて無料の太っ腹。

 そこから、ウォーキングなどのレッスンを受けた後、さらに数名のファイナリストが選ばれます。彼女たちは、来場者3万人を超えるイベント「ガールズアワード」でランウェイを歩く権利と、グランプリへの挑戦権を得るのです。

 先週放映した前半では、合宿審査に合格した女性たちが整形手術を受けて、新しい容貌を手に入れ、さあ最終審査に向けてレッスン開始、というところで、なんと今回から参加することになったベトナム人女性たちと合流。これは候補者にとってサプライズだったようで、みな動揺を隠せないまま、後半へと続く……という展開でした。

 これは来週も見逃せない、と余韻に浸っていたところ、一緒に見ていた夫が突然、わたしに向かって言いました。

「ねー、君、自分の顔のどこが好き?」

自分の顔の満足度

 自分の顔のどこが好きか。そんなことを、きちんと考えたことなどあったでしょうか……。

「ここがもうちょっと」と、気に入らない点を考えたことならある。「目がもうちょっとパッチリ二重だったらよかったなぁ」とか、「鼻が高かったら嬉しかったのに」とか、「顔が小さかったら」とか、そういうことです。それでも、整形を考えたことはないので、わたしはおそらく自分の顔に、そこそこには満足しているのだと思います。

 例えばわたしの夢が、芸能人になることだったりしたら、顔を整形しないと難しいでしょう。けれど、わたしは芸能人になりたいと望んだことはありません。いや、卵が先か鶏が先か考えると、芸能人レベルのルックス(才能)を持っていれば、芸能人(夢)を目指したかも……いや、目指してないです。

 だってわたしは、文章を書くのが上手だったから物書きを目指したのではなく、自分の文章が上手かどうかを知らないで、それでも物書きを目指していました。だから、夢が先にあって、たまたま運よく、才能のようなものを持っていたのです。

 しかし、芸能人とは言わないまでも、容姿が関係する職業を夢に見たこともあります。10代の頃は、キャバクラで働きたくて仕方がありませんでした。18歳になって面接に行ったら、無事に働かせてもらえることになったのですが、もしもこの顔のせいでキャバクラの面接に落とされていたら、おそらく自分の顔を恨んだでしょう。もう少し可愛く生まれていれば夢が叶ったのに、と。

 恋愛に関しても同じく、「この人!」と思った人に積極的に(肉体を使って)いけば、大概とりあえずそういう仲になれるぐらいには満足しています。望んだ関係が続くかというと、それはまた別の話。ヤった後に、付き合いたいのに付き合えなかったり、セフレ止まりでキープされたとして、もうそれは顔のせいだけではなくて、もっと全体的な魅力の話だろうと思うのです。

 もちろん整形で自信を得て、自分の魅力を出せるようになるのは、すごくいいことです。このところ、産後戻らない体重と、子育ての忙しさからくるケア不足で、鏡を見て「わたしブスだなぁ」と思う日が増えてきたわたしは、実際、身に染みてそう感じます。そのうち落ち着いたら頬をピンと張るべく、金の糸でも入れてやろうかと考えてもいます。

 しかし、ブスなのが自分で嫌なだけで、他人、とくに男性にブス扱いされても、最近は結構どうでもいい。

初めて「ブス」と言われた日

 ところでわたしは、人生で初めて男性に「ブス」と言われた日のことをはっきりと覚えています。

 あれは幼稚園の年中か年長の頃でした。ある日、園庭に出ると、同じクラスの男児が、そこらにいる女児たちに、スカートめくりテロを起こしていたのです。めくられるのが嫌だったわたしは、隣にいた女の子のスカートがめくられた瞬間、慌てて自分のプリーツスカートの裾を押さえて防御の体勢を取りました。すると、そのテロリストが言ったのです。

「なに押さえてんのー! ブスのスカートなんかめくるかよー!」

 まだ4~5歳だったわたしは、それまで自分が「ブス」とそしられる存在であるとは夢にも思っていなかったので、驚きました。そして、なんだかおかしいと思いました。その“おかしさ”が何なのかはわかりませんでしたが、その男子の言葉に傷つく必要がないとも思いました。

 その時わからなかった“おかしさ”が何なのかを理解したのは、ようやく大人になってからでした。男が怒りながら「ブス」と陰口を叩く女性は、だいたいいつも「自分にとって都合の悪い女」「自分の怒りをかき立てる女」であると知ったのです。

 スカートめくり野郎は、わたしの顔の作りに対して、「ブス」と言ったわけではなく、わたしの態度、つまりスカートがめくられるのを拒否したことが面白くなくて、ちっぽけな自分のプライドを守るために「ブス」という言葉を投げつけた。そのことを知ってからは、男性の言葉に傷つくことが減りました。

 大人になってからは、いくらわたしが相手に都合の悪い態度をとっても、さすがに面と向かって「ブス」と言ってくる男性はいません。が、「可愛くないなぁ」「うるさいなぁ」と言われることは、たまにあります。けれど、その言葉を言われるたびに思うのです。「ああ、この人、いま痛いところを突かれてるんだわ」と。

Text/大泉りか

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