高校時代から変貌していた「魔性の女」

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 久しぶりに会う友人が大きくイメチェンしていると、下世話ながら、好奇心が刺激されませんか? 空白の期間に、果たして彼女に何があったのか……まぁ、概して、「これまでと違うタイプの男性と付き合い始めた」ってことが多いのですが、それはそれで、どういう人と付き合っているのか、気になる。

 先週の続きです。高校卒業から疎遠になっていた、「モンチッチ」こと幼馴染の「魔性の女」と久しぶりに再会することになったのは、社会人になって2年目くらいの頃だったと思います。仲の良かった高校の同級生で、久しぶりに集まって飲むことになり、その席に彼女も参加したのです。

 久しぶりに会った幼馴染の彼女は、花柄のカシュクールワンピースを身に着け、濃いめの顔立ちにきちんと化粧し、鎖骨あたりまでの髪の毛をキツめに巻いていました。地黒の肌こそ中学時代から変わりませんが、かつてモンチッチと呼ばれていた面影はまったくありませんでした。

 銀座のOLになった彼女の身に何が起きたのか。「やだ、どうしたの、なんか雰囲気全然違くない?」と女友達のひとりがすかさず突っ込んだものの、「えーっ、そう?」と笑うばかりです。

 久しぶりに会う女たちが集まったことで、話題の中心は、自然と最近の恋愛事情となりました。今の彼氏との結婚話が進んでいると頬を染めて報告する者あり。恋人との結婚を考えてはいるものの、もっと条件のいい相手がいたら乗り換えるつもりだとこっそり打ちあける者あり。長く付き合っている彼氏とマンネリなので、早く別れたほうがいいか悩んでいると溜息を漏らす者ありと、みな状況は様々でした。モンチッチは自分のことは何も語らずに、皆の話を聞いていただけでした。

 その飲み会をキッカケに、彼女と再び連絡を取るようになりました。腐れ縁というのでしょうか。馴染みの友達というのは、なんだかんだ言っても、キッカケさえあれば、あっという間に距離が近づくものなのです。

また「魔性の女」を彼氏と会わせることに

 幼馴染の彼女と再び連絡を取り合うようになった頃、わたしは20歳年上の男性と付き合っていました。ある時、そのオジサンと、近所に住んでいる彼の友達と、焼肉を食べに行こうという話になりました。「せっかくだったら誰か、もうひとり女の子を呼べない?」と尋ねられ、思い当たったのが、幼馴染の彼女でした。というのも、彼女とオジサンの家は、たまたま同じ区内だったからです。

 けれど、ひとつ心配もありました。それは、彼女の略奪癖です。だからわたしはオジサンに言いました。「実はその子に、わたしもわたしの友達も、彼氏を奪われてるんだよね」と。

「そんなすごい美人が来るのか!」と色めき立つ彼氏。「いや、すごい美人とかではない。けど、なぜか人の男を奪うんだ」と言うと、「そこまで言うなら、むしろ会ってみたいなぁ」と興味津々です。

 選択を誤まった気もしましたが、世の道理がわかっていそうなオジサンに、彼女を見てもらいたい気持ちもあって、結局その日は、焼き肉に「魔性の女」も呼んだのです。

 焼肉を終えて彼女と別れた後、「いやぁ、あの子がそんなにモテて、他人の男を次々に虜にするの? 全然わかんないなぁ」と、不思議そうに首を捻るオジサンに、わたしの不安は晴れた気がしました。高校時代のアレはたまたま悪いタイミングが重なっただけで、彼女は「魔性の女」などではなく、ただのどこにでもいる「普通の女」だと思いたかったのだと思います。

 その後、数か月もしないうちに、わたしに別の好きな男性が出来て、オジサンとは別れました。オジサンにも、すぐに新しい彼女が出来たと聞いたので、わたしたちはわだかまりなく、数か月に1度くらい会って飲むという友人同士に戻りました。オジサンはたまに「君と会うことに、今の彼女が嫉妬してるんだけど」と漏らすことがありましたが「えー、もう別れてなんもないんだから、関係なくない?」とわたしはまったく気にしていませんでした。

魔性の女のたった1つの特徴

 それから1年か2年ほど経った後のことです。その日もオジサンと飲んでいたのですが「実はあなたに言わないといけないことがあって」と突然切り出され、そして驚愕の事実を告げられました……。

 もう皆さん、お分かりですよね。そうです。「もう別れたから言うけど、実は、あなたと別れた次に出来た彼女って、幼馴染のあのコだったんだ」と言うのです。

 え、え、えーーーーーーーー! 腰を抜かすほど、驚きました。だって高校時代の2回はともかく、目の前の相手は、20歳年上のバツイチ男性。こう言ったらなんですけど、20代も後半に差し掛かろうとする女が、恋人として選ぶにはどうなのかな~という相手です。

 彼女にファザコンの気はなかったはずだし、いったいどうして付き合うことになったのか……いや、それは至ってシンプルな話です。「友達の恋人」であったから。それ以外の理由があるでしょうか。しかし、なぜ彼女は「友達の恋人」に手を出すのか。それは、いまだに謎に包まれています。

 ちなみに彼女はオジサンと別れてしばらくして、別の男性と結婚をしました。2つか3つ年上の、大企業にお勤めの相手です。複雑な思いで祝福しましたが、後日、噂で聞いた話によると、やはり同じ会社の後輩と取り合って、勝ちとった男性だということです。

 彼女の魔性をいまだに理解できないわたしですが、ひとつだけ、彼女と他の女友達との違いに気がつきました。彼女は絶対に自分の恋愛の話をしないのです。付き合っている相手の愚痴やノロケはもちろんのこと、そもそも、付き合っている相手がいるかいないかさえも、明言しない。

 もしかして魔性の女とは、自分の恋愛事情を他人に明かさない女のことではないでしょうか。周囲からの雑音を耳に入れないからこそ、女友達の恋人を奪うことも出来るのです。

エピローグ

 ……いや、彼女が胸を痛ませることは、本当になかったのでしょうか。

 実はわたしの結婚式の当日、彼女からジャムの詰め合わせとともに、「家に帰ってから読んで」と手紙を貰いました。式の翌日、恐る恐る手紙を開くと、そこには、「オジサンと付き合ったことを、言えなくてずっと気にしていた」という謝罪の言葉が書かれていました。

「オジサンのことだけ?」とか「結婚式にこれを渡すか?」とか、ちょっと思うところもありましたが、過去の男のことはどうでもいいし、今となってはむしろ、他人の男に惹かれる彼女の心に、興味がある。

 というわけで、彼女とはいまだに、数年に1度くらい一緒に飲む仲のままです。わたしが腹に一物あることに、彼女が気づいているかどうかはわかりません。でも相変わらず、彼女はどんなに酔っ払っても、不倫願望はもちろんのこと、夫の愚痴やノロケも、口にすることはありません。

Text/大泉りか

次回は<男が言う「ブス」とは「自分にとって都合の悪い女」のことでしかない>です。
「整形シンデレラオーディション」を観て、「自分の顔がどこが好きか」なんて考えもしなかった自分に気づく大泉りかさん。自分の顔をどう思っているか考えながら思い出したのは、男性に初めて「ブス」と言われた日のことでした。

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