昨年3月に知人女性に媚薬を飲ませようとしたとして、福岡市の西村浩二弁護士が、福岡県弁護士会から業務停止3カ月の懲戒処分となった。西村弁護士は女性と食事をした際、自分を好きになってもらおうと「ほれ薬」と呼ばれる黒い液体を女性の飲み物に入れようとしたが、女性に見つかってやめたという。皮肉なことに、このニュースが報じられて以降、「ほれ薬」を販売する通販サイトでは注文が増加したという。

「ウチでは、これまでの4倍増です。問い合わせは週に2~3件だったところ200件以上になりました。一番多いのは『効果があるんでしょうか?』というものですが、効果には個人差もあるので、過去のモニター結果を伝えて判断してもらっています」(通販サイト運営者)

 ニュースはサプリメントの悪用というネガティブな内容だったが、「ほれ薬」の存在すら知らなかった人々が多かったようで、むしろ興味を高めたのかもしれない。

 ただ、サイト運営者によると、「一般的に“ほれ薬”は、女性に自分を好きにさせる効果があるものではなく、性的興奮を高めるといわれる成分の入った媚薬のこと」だという。

「でも、性的な意欲の高まりが、恋愛感情を持つきっかけになることもありますから、“ほれ薬”という呼び方が間違っているとも思いません。古くは精力絶倫で知られた俳人の小林一茶さんが女性を魅惑するために、あらゆる媚薬を試したともいわれています」

 こう話す運営者は、商品ごとに複数のサイトを運営、十数回分に相当する液体の入った1,000円程度の安いものから、1本1万円を超える高級品まで扱っている。それぞれの成分表示には、原材料としてガラナエキスやマカエキスなど滋養強壮に用いられることの多い成分が配合されていて、街のドラッグストアにも置いてあるサプリメント類と大差ないようにも見える。

「市販のサプリメントと中身が大きく違っていなくても、怪しく見えるようなものほど高く売れるんです」(運営者)

 西村弁護士が用いた「ほれ薬」は黒い液体をスポイトで数滴、グラスの中の飲み物などに混ぜて服用するタイプで、自分でも3滴ほど舐めて試したが「効果はわからなかった」と供述していたという。

「有効成分だけでいうなら、もっと摂取しやすい白色の粉末のものも効果は変わりませんが、黒色の液体をスポイトで使うとなれば、効きそうに思える人が多いと思います。ほれ薬といっても薬品ではないので、人体に有害なものは入っていませんし、決められた用法で口にする分には問題はないですよ」(同)

 一方、警察は過去、違法な成分の入った媚薬を販売していたディーラーも多数、摘発している。同じ「ほれ薬」の呼び名でも、レイプドラッグとして用いられるものが危険ドラッグとして指定薬物になっており、使用や流通はおろか、単純所持でも違法になる。中には違法薬物にもかかわらず「強力なほれ薬」としてネット上で売買されていたケースもあり、カップルが面白半分で購入して逮捕されたという実例がある。

 また、都内の消費生活センターに「過去、3万円も出して買った媚薬の効果がないのに返金されない」などの苦情が複数あったこともわかった。事件の影響で購入者が増えているというだけに、問題の増加も懸念される。

 西村弁護士も「ほれ薬」なんて見かけていなければ、こんな情けないトラブルを起こさずに済んだかもしれないのだが……。
(文=片岡亮/NEWSIDER Tokyo)

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