静岡県立の少年宿泊施設が、聴覚障者約100人の団体宿泊の申し込みを断ったとして批判を浴びています。施設側は付添人なしの宿泊で「安全が確保できない」と拒否したとのことですが、そうした行為が「障差別解消法」が禁じる「不当な差別」に当たるという摘です。同法の策定に携わった識者は、施設の対応をどのように見るのでしょうか。

「緊急時にどう知らせるか」協議を

 この施設は、熱教育委員会が所管する「の沢自然」です。同委によると、静岡県聴覚障者協会が1月全日本ろうあ連盟青年部の宿泊研修(7月14、15日)のために、約100人の宿泊を打診。付き添いがなく「聴覚障者のみ」と聞き、「ほかの専用施設に泊まっては」と断ったとのことです。

 その後、教委は協会に謝罪しましたが、研修は静岡市内のホテルになりました。協会は「ただ断るのでなく、どんな支援ができるか話し合ってほしかった」としているそうです。自然1980年開館で、老朽化などを理由に9月末で利用受け入れを終了します。

 2016年4月施行の障差別解消法は、障を理由とした差別を禁じ、役所や事業者に対して、障のある人が何らかの対応を必要としている場合は、負担が重すぎない範囲で対応することをめています。「合理的配慮」とされるもので、自治体など機関は義務、民間事業者は「対応に努めること」として努義務とされています。

 内閣府の障者制度革担当室長などを務め、障差別解消法の策定に携わった、熊本学園大学の東俊裕教授に話を聞きました。東教授は、幼い頃にポリオ(小児まひ)を患い、車いすを使用しています。弁護士でもあり、「車いす弁護士」とも呼ばれています。

Q.今回の宿泊拒否について、どのように受け止めましたか。

東さん「に出火があった時、警報装置の代わりにで危険を知らせる装置がないというのが断った理由のようですが、それは障を理由にほかのお客さんと異なる扱いをしたという直接差別に当たります。やむを得ない理由があれば差別に当たらない可性もありますが、宿泊者の生命を守るのは、障者であろうとなかろうと全員に対応すべきことです」

Q.具体的にはどう対応すべきだったのでしょうか。

東さん「学的装置の設置ができなくても、例えば『何かあった場合、どうお知らせすれば分かりますか』と、団体と協議することはできたと思います。ドアをたたいて振動で分かる場合もありますし、施設の限られた要員だけでは一斉に連絡できないというのであれば、合鍵を事前に配布しておいて情報を伝えてもらう方法もありうるでしょう」

Q.施設側は、バリアフリーでないことや、職員が手話ができず、災害時に避難誘導ができないと考えたとも説明しているようです。

東さん「9月末までは泊まる人がいるわけですから、それまでできることはやるべきです。(で危険を知らせる)フラッシュライトは一般の人にも役立ちます。私は米国ホテルでぼや騒ぎに遭った時、中2時くらいにものすごく明るいフラッシュライトが部屋で点滅してが覚めました。音も鳴りましたが覚めました。それが設置できないなら、何らかの調整をすべきでした」

Q.障差別解消法の施行から2年が経過しましたが、今回のような事例はまだまだ多いのでしょうか。

東さん「たくさんあります。最近は災害が多いですが、避難所でも『ここは階段だらけですから、車いすの人は別の所に行ってください』と言われた人がいます。避難所に車いす用のトイレがないこともあります。臨時的に木材で手すりを付けるとか、その場で考えてほしいと思うのですが」

Q.法律施行後、変わった点もあるのでは。

東さん「大きく動き出している業界もあります。例えば、大学は私立、立、国立とも、『障者の学習支援』ということで、合理的配慮を提供しています。聴覚障学生のためにノートテイクをしたり手話通訳をしたり、車いすで使える机を用意したり、段差をなくしたり。まだまだの部分もありますが、動き始めています」

Q.今後の課題は。

東さん「今回の件については、熱市長テレビカメラの前で謝罪していましたが、なぜこういうことが起きたのか、の中に第三者委員会を立ち上げて原因を究明し、今後起きないためにどうすればよいか方向性を示すべきだと思います。

単に『申し訳ありませんでした』では済みません。障者団体の人に講師になってもらい、職員に対して人権啓発の教育をすることも大切です」

 熱では、障差別解消法の施行に合わせてマニュアルを全職員に配布していましたが、今回の事態を受けて7月11日、「マニュアルを今一度確認してください」と職員に通知したそうです。

報道チーム

姫の沢自然の家(姫の沢公園ホームページより)