●スバルの商品企画担当者に聞く進化のポイント
通算5代目に進化したSUBARU(スバル)のSUV「フォレスター」。見た目はあまり代わり映えしないという声もあるが、ひと足先にテストコースで乗ると、パワートレインから安全装備までいろいろな部分が進化していた。商品企画担当者の声を交えて紹介していこう。

○ライバルひしめく日本市場

今年6月に第5世代となる新型が発表されたスバルのSUV「フォレスター」。米国では昨年、モデル末期にもかかわらず17.7万台を売っているヒット車種になっている。そのためだろう、新型の世界初公開の場は米国ニューヨークのモーターショーだった。

一方の日本では、同じクラスのSUVとして、一昨年はトヨタ自動車「C-HR」、今年は三菱自動車工業「エクリプス クロス」が登場し、今後もホンダ「CR-V」が復活するなど、激戦のマーケットになりつつある。

○デザイナーは大変だった?

そんな中でフォレスターはどう攻めるのか。商品企画本部で新型のプロジェクトシニアマネージャーを務めた只木克郎氏に話を聞いた。まず、旧型とあまり変わっていないという声もある、パッケージングやスタイリングからだ。

「フォレスターは3代目でSUVらしさを強調し、4代目でグローバルで通用するサイズにしました。いずれも満足しているお客様が多かったので、大きく変える必要はないと思いました。なので、デザイナーは苦しんだかもしれません。スバルにとっては視界も外せないポイントなので、見た目重視で窓を強く傾けたりすることもできませんので」(以下、発言は只木氏)

その中で、前後フェンダーの厚みを出し、エンジンフードは車両感覚が掴みやすいよう両端を持ち上げた。サイドウィンドウを囲むようなキャラクターラインも特徴だ。ボディとキャビンを分けることで、フェンダーラインが強調できたのではないかと只木氏は語っていた。前後とも「コ」の字型に光るランプは、リアについては足回りとキャビンをしっかり見せるべく、高い位置に掲げたという。

インテリアはゆったり乗ってもらうことを心がけ、ソフトな形と素材にこだわったとのこと。ドアトリムの上、センターコンソール両脇までをソフトな素材で覆っている。着飾るのではなく包まれ感を意識した。センターコンソールを高くして、骨格を感じさせるとともに包まれ感を表現した点もポイントだ。

●モーターアシストの「e-BOXER」が好感触
○2つのパワーユニットを体験

新型フォレスターは日本では6月20日に発表されたが、発売はニューヨークでお披露目された2.5Lガソリン車が7月19日、「e-BOXER」(eボクサー)という名称が与えられた2Lモーターアシスト仕様が9月14日となる。そこで試乗会は、量産前の車両をクローズドコースでテストするという形になった。

今回のフォレスターには上記2つのパワーユニットがあり、どちらもリニアトロニックと呼ばれるCVTを介して4輪を駆動する。1997年に初代がデビューして以来、存在し続けてきたターボ車はひとまず姿を消すこととなった。

最初に乗ったのは2.5L。こちらは「インプレッサ」や「XV」に積まれている2Lに続いて直噴化された。これまで、2Lが主力だったフォレスターということもあって、2.5Lの余裕あるパワーとトルクは、あらゆる速度域で必要な加速をリニアに味わうことが可能だった。なおかつ、自然吸気ならではの回す楽しさも堪能できた。
○「フォレスター」で電動走行が味わえる!

しかし、個人的に印象に残ったのはe-BOXERのほうだ。基本構造は旧型「XVハイブリッド」に積まれていたユニットと同様だが、走行用バッテリーをニッケル水素からリチウムイオンに変更することなどにより、軽量化を果たしつつ効率を高めたという。

効果は明確で、旧型XVハイブリッドではほとんど体感できなかった電動走行が、さまざまなシーンで味わえた。加速時のモーターアシストも力強く、低中速では2.5Lと同等の加速が味わえた。比較のために乗った旧型2L自然吸気エンジン車との余裕の差は段違いだった。

「e-BOXERの基本はXVハイブリッドと同じですが、バッテリーを変更しただけでなく、コンポーネンツを作り直すことで電動効率を上げました。9割は一新しています。モーターの使い方を変えたことも特徴です。名前を改めたのもそのためです。モーターはレスポンスが良く、超低回転から力が出せます。その点を生かして、環境対応だけではなく扱いやすさや軽快感も目指しました」

只木氏によれば、2.5Lとe-BOXERは上下関係ではなく、並列のラインアップだという。主に市街地で乗る人はe-BOXER、高速メインの人は2.5Lというすみ分けを考えているそうだ。ターボは環境性能を考えると難しいし、販売台数では1割に満たなかったので、デメリットを克服するとともに扱いやすいスポーティさを目指した。それがe-BOXERとのことだった。

●目指したのは「走りの一体感」
○新世代プラットフォーム採用の効果は

新型フォレスターのメカニズムでもうひとつのポイントは、「インプレッサ」「XV」に続いて新世代プラットフォームを採用したことだ。結果は走りはじめてすぐに分かった。車体全体の剛性が上がり、小刻みな上下動がなくなったからだ。

また、旧型はモデルライフ途中でステアリングの反応を鋭くしており、コーナーでゆったり傾くサスペンションに対して違和感があった。新型では切っていくにつれギア比が早くなるバリアブルレシオを採用する一方、コーナーでの傾きを抑えるスタビライザーを太くすることでバランスを取っていた。

只木氏によれば、従来は足回りとボディの動きがバラバラで、足回りがコーナーに入ったあとボディが付いてくるようだった。それを直し、走りの一体感を出したという。

2.5Lでは特設のオフロードコースも走った。まず感じたのはこのクラスの平均値を大きく上回る220mmの最低地上高で、オーバーハングやフロアをぶつける気配さえない。走行モードを選べる「Xモード」でスノー・ダートを選ぶと、アクセルペダルを踏み込んだままでもスリップする車輪だけに弱くブレーキをかけるなど、きめ細かい制御を行うことで、泥道を着実に進んでいった。

○アイサイトのスバルは車内にも目を向けはじめた

スバルが以前から重視していた安全性の面では今回、新たに採用となった「ドライバーモニタリングシステム」が特筆できる。インパネ中央に内蔵したカメラがドライバーの顔を認識し、居眠りや脇見運転などを警告することで安全運転を支援するだけでなく、「おもてなし」を提供する機能だ。おもてなし機能とは、ドライバーが乗車するとシートの位置やドアミラー角度、エアコン設定、メーター表示などを自動的に再現するというもの。最大5人まで識別可能だという。

「アイサイトで車体の外を見てきたので、今度は中も見ようという発想で研究開発を進めました。当初は予防安全のみでしたが、おもてなし機能も間に合ったので入れました。大きな会社では安全装備とおもてなし装備は別々の部署が担当するかもしれません。スバルの規模なので2つの機能を両立できたといえるでしょう」

大きな進化はしていないように見えて、実はパワートレインから予防安全装備まで、あらゆる部分がレベルアップしているのが新型フォレスターだ。しかも、そこにはスバルらしい「安心と愉しさ」が込められている。ライバルが多くなったSUVの中でも、着実に支持を集めていくのではないかと思った。
(森口将之)

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