岡崎市消防本部の全地形対応車両レッドサラマンダー」は軍用車両を原としていますが、そうしたルーツを持つ消防車両は、実は古くから配備されていました。

「レッドサラマンダー」の前には装甲車両も

2018年7月上旬に発生した「平成30年7月豪雨」では、西日本の広い範囲に渡って大被害が起こり、平成に入って最悪となる死者200人以上(7月12日時点)もの大きな被害を出しました。この度ので被災された方々、また亡くなられた方々には、心からお見舞いとお悔やみを申し上げます。

今回の災害には、昨年(2017年7月)の九州北部に次いで岡崎市消防本部愛知県)の「レッドサラマンダー」が出動し、7月10日現在現在防が決壊して地域の約3割が浸した岡山県倉敷市備町地区で活動を開始しようとしています。

この「レッドサラマンダー」、正式には「全地形対応」といいます。ゴムクローラー履帯、いわゆるキャタピラー)の足回りによって悪路の走破はもちろんのこと水上航行も行うことができ、ゆえに「全地形対応」と呼ばれています。日本ではあまり知られていませんが、同シンガポールSTネティクス社が開発した陸両用の装甲兵員輸送車を原としており、シンガポール陸軍はもちろんのこと、イギリス陸軍やタイ陸軍でも運用されているものです。

ボディの色がくなってしまうと軍用車両の面影は消え去ってしまいますが、日本消防がこうした軍用をルーツとする車両を導入したのは、何も「レッドサラマンダー」が初めてではありません。実はすでに40年以上前に軍用装甲車を原とした車両の導入実績があったのです。

消防の赤に白銀の「スリーポインテッドスター」

最初に軍用装甲車ベース消防車を運用したのは東京消防庁でした。東京消防庁1975年昭和50年)に西ドイツ(当時)製のUR-416装輪装甲車カスタマイズし、「耐熱救難」という名称で導入しました。

UR-416は、悪路走破性に定評のあるメルセデス・ベンツ社製のウニモグ4輪トラックのコンポーネントを流用して1960年代にラインシュタール社(現在ラインメタルランドシステムズ社)が開発したもので、装甲ボディは要部で9mmの厚さを有し、7.62mm小銃弾や弾片に対する防御を有していました。

全長は5.2m、車両重量は7.6t、原(軍用)では10人乗りでしたが、東京消防庁のものは収容人員20人(緊急時)と倍になっていました。

なお原では体上部前方に機架があり、7.62mmもしくは12.7mmの機関銃を1丁装備することができました。またオプション内にNBC(核/生物化学兵器)防護装置を搭載することも可でした。

東京消防庁車両は、当然ながら架は装備していませんでしたが、赤色サイレンを有し、体の前面から上面にかけてパイプを設置してこのパイプから放出することで火災の射熱から体を守って自冷やしながら走れるという特徴を有していました。一定の年齢層以上の人なら子供のころの消防車の絵本に載っていたのを覚えているかも知れません。

UR-416は西ドイツ軍(当時)に採用されることはありませんでしたが、警察警備隊などに配備され、また海外では中南アフリカ中東アジアなどに輸出され、総計で1030両が生産されたベストセラー小装甲車となりました。

横浜と北九州の新型はより過酷な環境にも対応

こうして東京消防庁の耐熱救難1970年代後半から1990年代初頭にかけて運用されましたが、軍用装甲車を原とした車両はこれのみで、以降は「防災機動」の名称でバストラック車両が作られています。

一方、コンビナート火災などに対応するために新の耐熱消防車としてドイツ製軍用装甲車を原とした車両を採用したのが、横浜市消防局と北九州市消防局でした。前者は1992平成4)年に「耐熱救助」という名称で、後者は1994平成6)年に「耐熱装甲救助活動」という名称で導入しており、種はUR-416より大のTM-170ベースでした。

TM-170UR-416と同様、ウニモグのシャシーに厚さ6mmの装甲ボディを架装したものですが、ベースウニモグロングホイールベースU2400/2500シリーズのものにし、体を大化して内容積を拡大しているのが特徴で、エンジンも新となり、変速機もオートマチック(UR-416はマニュアル)になっています。

また瓦礫除去用に体前面にドーザー(排土)を装備したため、全長約8.11m(ドーザーしなら6.6m)車両総重量約13tと立な体でした。

しかもUR-416の時とは違い、TM-170では体上部にを装備していたため、ボディがでなければ警備用装甲車や軍用装甲車に見える外観でした。内には1000リットルタンクを搭載していましたが、継続して放するためには外部から給する必要があり、そのためのホース連結口が体後部に設けられていました。

有珠山の噴火にも出動

耐熱救助/耐熱装甲救助活動はまた、耐熱救難が冷却用パイプを装備していたのと同様に射熱から体を保護するため、その周囲17ヵ所に自動噴装置を装備していました。なおかつ、有ガス検知器を装備し、さらに内気圧を外気圧よりも高めることで外気をシャットダウンできる陽圧装置や高性エアコンも装備、酸素が欠乏しやすい石油化学コンビナート火災のような現場でも活動可を有していました。

ちなみに乗定員は6人、ボディは大きくなりましたが上述したように様々な装置を搭載したため、収容人員は東京消防庁の「耐熱救難」よりも少なくなっています。

横浜市消防局の車両は実際に2000平成12)年3月北海道有珠山噴火の際に、緊急消防援助隊の一員として現地に派遣され、警区域内に取り残された民間人の救出に出動するなど活躍しましたが、横浜車両北九州車両も共に2009平成21)年にになっています。

消防車というとポンレスキューのようなトラックベース車両流ですが、実は軍用装甲車ベース車両も配備されていたのです。これはこれでひと味違うカッコよさですよね。とはいえ、「レッドサラマンダー」含めて実際は活躍しない方が本当は幸せなのはいうまでもありません。あくまでも活躍の場は訓練のみであって欲しいものです。

【写真】原型の装甲兵員輸送車、英陸軍では改良されて「イボイノシシ」に

岡崎市消防本部の「レッドサラマンダー」こと「全地形対応車」。写真はイベントでのもの(画像:岡崎市消防本部)。