4位・横浜FCとの上位対決を制して2位をキープ 李も勝利に自信「結果に驚きはない」

「町田がこの順位にいる理由を身をもって感じた」

 8月4日のJ2リーグ第27節、4位の横浜FCと2位のFC町田ゼルビアの上位対決は、敵地に乗り込んだ町田が3-2で勝利。90分間、球際の激しい戦いを強いられた横浜FCのMF渡邊一仁は、試合後に思わずそう漏らした。

 18時キックオフで気温29.5℃、湿度76%、前半には給水タイムが設けられるほどの蒸し暑さのなかでも、町田の運動量が落ちることはなかった。ハイプレッシャーをかけ続け、球際では迷いなくぶつかり合う。あまりの激しさゆえ、横浜FCの選手と何度も一触即発の場面があったほど。高いインテンシティーを保ち、MF平戸太貴の2得点、FW鈴木孝司の9試合ぶりのゴールはいずれも素早い切り替えからのショートカウンターで奪った。

 ベテランMF李漢宰は、横浜FC戦を「スタンダード」という言葉で振り返る。そこには自分たちのスタイルへのプライドがうかがえた。

「今回4連勝しているなかで、横浜FCさんも含めて、相手が町田対策じゃないですけど、マンツーマン気味に非常に激しくやってきた。でも、それに屈さず、最後の最後まで相手よりも走って、戦ったからこそ試合にも勝利できた。非常にノーマルな結果だと思いますし、驚きもないです」


持ち前のハードワークとハイプレスで対戦相手を凌駕

 相馬直樹監督が2014年に再就任して以降、町田はアグレッシブな守備とハードワーク、切れ味鋭いショートカウンターを武器としてきた。今年で5年目、そのスタイルはチームの特長として根付き、対戦相手にも「相馬さんの下でしっかりした形があるチーム」(佐藤謙介/横浜FC)という印象がすり込まれている。

 冒頭の言葉を発した横浜FCの渡邊の言葉を借りれば、特長が明確ゆえ、町田は「どのチームもすごく対策を立てやすい相手ではあると思う」。しかし、その対策を「やりたいけどやらせない」(渡邊)強みが、松本山雅FCに次ぐ2位(勝ち点49)という好順位につながっている。

 昨季まで4年連続でキャプテンを務めてきた李は、「対戦チームは町田はやりにくい相手だと思っているでしょうね」と力強く語る。

「どのチームも対策は練ってくるだろうし、少しでも上回られたら結果は全く逆のことになりうる。でも、相手に負けないだけの激しさと、夏場でも全員が走り切るだけのハードなトレーニングを毎日積んでいるので、自信を持ってやれています」

 町田に加入後、2年連続で二桁得点中の攻撃陣の要、FW中島裕希も「相手が対策を練ってきたとしても、自分たちはやることが変わらない。徹底してやれていることが、勝利や勝ち点を取れている要因だと思います」と同調する。


「行政を動かす意味でも、やはり結果が大事になってくる」

 昇格プレーオフ進出どころか、リーグ優勝も狙える位置につける町田だが、置かれている立場は複雑だ。

 現在、Jリーグから町田に交付されているのは「J2クラブライセンス」。昇格に必要な「J1クラブライセンス」を有していないため、自動昇格圏内の2位以上でシーズンを終えてもJ1に昇格できず、3~6位に与えられるJ1参入プレーオフの出場資格もない。J1ライセンスを取得するためには、1万5000人以上が収容可能なスタジアムを有すること(現状のホーム町田市立陸上競技場は収容1万328人)、天然芝ピッチを1面以上有するなどJリーグが求める基準を満たしたトレーニング施設を用意すること、などの条件をクリアする必要があり、町田市の協力は不可欠だ。

 傍から見ればモチベーションを保つのが難しいように映る。それでも当の選手たちは、目の前の試合で勝利だけを追い求めていると李は語る。

「こういう状況のなかでも真剣に自分たちがやっていると、行政を動かす意味でもやはり結果が大事になってくる。2年前も最後の最後までプレーオフを争ったなかで、得失点差で7位だった(編集部・注/ファジアーノ岡山と勝ち点65で並ぶも、得失点差で5ポイント下回った)。そこでもう一歩前に進めるかどうか。目の前の1試合1試合にピッチに立てなかった選手も含めた全員の力を注ぎ、行政や周りを驚かせる、動かす――。そういう気持ちが続いているからこそ今があると思います」


様々な壁をクリアして悲願のJ1昇格を目指す

 そして、李は「これはたぶん僕が言う必要はないと思いますけど…」と言葉を続ける。

「みんな分かっていることだけど、あくまでも終わった時にどの順位にいるか。そういう意味では、現段階で順位を気にしている選手はいません。町田ゼルビアは僕にとってかけがえのないクラブ。サッカーができるかどうかというなかで拾ってもらって、今まで一緒に歩んできたつもりです。『2020年までにJ1昇格』というプロジェクトに関われていることが本当に幸せだと思うし、プロサッカー選手なのでこの先自分がどこまで携わっていけるか分からないですけど、町田ゼルビアとともに今後も上を目指してやっていきたい」

 愚直なまでの真っすぐな戦いぶりで人の心を動かす――。相馬監督を先頭にした今の町田の熱量ならば、様々な壁をクリアしてJ1のピッチに立つ“奇跡”を叶えることも、決して不可能ではないだろう。


(小田智史(Football ZONE web編集部) / Tomofumi Oda)

第27節終了時点で2位に付けるFC町田ゼルビア【写真:Getty Images】