お寺の掲示板に今、注目が集まりつつある。お寺の掲示板とは、通りに面した場所などに寺院が標語やお知らせを掲げたスペースのこと。多くは仏教に関連した教訓などで、気の利いた文面で記されていることが多い。

秀逸なものはインターネットで拡散されることもあるが、それら特徴ある掲示板を集めて表彰しようという企画「輝け! お寺の掲示板大賞」が、今年から公益財団法人・仏教伝道協会によって開かれている。なぜ今、お寺の掲示板なのか? 同協会の担当者・江田智昭さんに聞いた。


きっかけは公募ガイドと高校野球・千葉県予選
同企画の思いつきは、コンペや文学賞の公募一覧を載せる『公募ガイド』をめくっていたときだったそうだ。

「仏教伝道協会では、子どもの心を育むための絵本を募集する『こころの絵本大賞』という賞を設けているのですが、その募集を載せるため公募ガイドを読んでいたことが、きっかけになりました。公募ガイドの中に千葉テレビが主催する『夏の甲子園千葉県予選のキャンペーン標語募集』というものがあり、これをお寺の掲示板の標語募集という切り口でやれば面白いのでは、と思いつきました」(江田さん)

お寺の掲示板を写した写真は、これまでにもTwitterやInstagramには、しばしば投稿されていた。

「お寺の掲示板にはそのお寺の住職のセンスが出ます。普通の文面でもお寺で掲示されることにより、趣が出ることもあります。投稿する際に『#お寺の掲示板大賞2018』というハッシュタグを付けることで手軽に検索ができて、大きな予算もかからない。そのため今年4月の企画発案から今夏の実現まで、すぐにこぎつけられました」(同)

お寺の掲示板には、仏教の教えを直球に表したものがある一方で、スナフキンの言葉、松山千春さんやビヨンセさんの言葉から引用したものなど、本来は仏教関連の言説ではないが、お寺の掲示板に書かれることで、仏教の教えに関連付いたものもある。中でも中田絢子さん(@10com_nj)が投稿した「お前も死ぬぞ」と書かれた岐阜県郡上市・願蓮寺の掲示板を撮影したものは、大きくバズった。この記事を書いた8月初旬の時点で4万5000件のリツイートと10万5000件のいいねが付けられている。

「輝け!お寺の掲示板大賞」の参加方法は?
同企画への参加は簡単だ。気になったお寺の掲示板があれば、それを写真に撮り「お寺の名前」「場所(同名のお寺があるため)」「撮影日」「標語に対する投稿者の感想」の4項目を付記し、「#お寺の掲示板大賞2018」というハッシュタグ(2018年度の応募の場合)を入れてTwitterまたはInstagramにアップする。そうすると仏教伝道協会がハッシュタグを元に投稿を探し出し、秀逸な投稿に各賞が授けられる。

賞には、同企画を主催する「仏教伝道協会賞」を始め、仏教関連メディアが軒並み賞を設けた。宗教・文化専門紙「中外日報賞」、宗教専門紙「仏教タイムス社賞」、お寺さがしポータルサイト「まいてら賞」、インターネット寺院「彼岸寺賞」など。他にも仏教に造詣が深いお笑い芸人・中西哲夫(笑い飯)さんによる「笑い飯哲夫賞」も設置されている。

募集は7月1日からすでにスタートしており、10月末に締め切り。11月に審査会を行い、年内に各賞が発表される予定だ。寺院関係者の投稿も可能。もし同じ掲示板標語が複数投稿された場合は、もっとも先に投稿した人が受賞対象者になる。

「審査基準は『リツイート』や『いいね』の数も参考にしますが、それだけに限りません。掲示板はどれも仏さまの教えを元に書かれているものだと思いますから、そこに優劣をつける意味合いもないです。『お寺の掲示板大賞』が広まることによって、もっと一般の人がお寺の掲示板に目を向けるきっかけになればと思っています」(同)


「ゆるい」企画の裏にある仏教界の危機感

このような、どちらかというと「ゆるい」企画を開催する意義の根底には、お寺の掲示板をきっかけに、もっと寺院と仏教に関心を持ってもらいたいという事情があるという。

「お寺離れが進む昨今、お寺の中には入ってもらえなくても、お寺の前は通ってもらえます。そこに掲げられたスペースで、一般の方々が少しでも、お寺の活動や仏教に関心をもってくれればと考えています。以前と比べて、現在は本を読む人も減ってきています。このような中、短い言葉で簡潔に仏教の教えを伝えることは大切ですし、短い言葉で伝えようと頭をひねることで、私たち仏教者も鍛えられます。今後は同賞が夏の風物詩になればうれしいです」(同)

お盆で実家へ帰省したら、地元のお寺の掲示板に注目したい。
(加藤亨延)
中田絢子さん(@10com_nj)がTwitterに投稿した岐阜県郡上市・願蓮寺の掲示板