今年初め、孤独担当大臣を新設した英国から孤独と遺伝子に関する知見が報告された。

 英国では、人口の1割以上にあたる900万人が日常的に孤独を感じ、その3分の2が生きづらさを抱えているという。

 英ケンブリッジ大学の研究チームは、「英国バイオバンク研究」に登録されている48万7647人分の遺伝子情報と、被験者へのアンケート調査から遺伝子変異と孤独感との関連を解析。

 アンケートでは、「どれくらい友人、家族を訪ねているか」「身近な人に悩みを相談できるか」などの質問で孤独感を評価している。

 アンケートの回答から、孤独と分類された人の遺伝子を解析した結果、感情や行動をコントロールする脳の領域にある15の遺伝子座の変異が、孤独感と強く関連することが示された。

 この遺伝子変異は神経症的な傾向や抑うつ状態、肥満とも関係し、主観的な幸福感とは負の関係にあることもわかっている。

 研究チームはさらに、日ごろの社交活動──「宗教活動」「スポーツジム通い」「パブ(実に英国らしい!)や社交クラブ通い」と遺伝子変異との関連も調べた。

 その結果、各行動パターンとそれぞれ強く関連する遺伝子座の変異も見つかっている。

 研究者は「似たような状況で孤独を感じる人、感じない人がいるのは、遺伝子の違いが影響しているのかもしれない」と言う。

 その一方で、「遺伝要因と環境要因は複雑に絡み合っているので、安易に『孤独遺伝子がある』とはいえない」とし、「孤独=生まれつき」という短絡的な考えが独り歩きしないよう警告している。

 遺伝的な形質の影響を考える際、忘れてはならないのは、その遺伝子が淘汰をくぐり抜け、何万年もの間役立ってきた点だ。

 ネガティブに思われがちな孤独だが、適応力を高め、団結力を強化するともいわれている。

 人類が母なるアフリカから新世界へと広がる過程で、孤独感は集団の絆を強め、むしろ生き残る確率を高めてきたのかもしれない。

 孤独を生存リスクに変えるのは、現代社会の閉塞感なのだろう。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)

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