商品やサービスを開発する、採用面接を受ける、商談をする――。こうしたときには、「相手の気持ちを考える」ことが必要だが、どうしても自分の価値観にとらわれてしまいがちだ。しかし、『東大式習慣』の著者で、「日常のあらゆることをゲーム化する」という効率術を提唱する西岡壱誠氏は、他人の視点を捉えた多角的な思考力を鍛えることは可能だと語る。生活のなかで誰でも気軽に取り入れられる、思考力を高めるためのトレーニング法とは?

◆なぜ、他人の気持ちに目を向けた方がいいのか?

「人の気持ちを考えて行動しよう」という言葉はありふれたものですが、これは真理だと思います。そのほうが合理的な行動が取れますし、論理的で多角的な思考力が鍛えられる。「誰かの目線」に立って物事を考えれば、さまざまなゲームをクリアすることができるのです。

 たとえば、カレーを作っているときに、食べる人に「美味しい!」と思ってもらえる方法を考えてみてください。このとき、隠し味にリンゴを加えるとか、いろいろな方法があると思いますが、一番手っ取り早いのは「カレーを食べる相手のことを考える」ということです。

 つまり、日常の何気ないことでも、「他人」を思いやることがゲームクリアの鍵になる場合がとても多いのです。「他人からの目線」はあくまで「想像する」ことしかできませんが、それでも想像しないのと想像するのとでは全然結果が違います。

 それでは、多角的な思考力を手に入れることで、具体的にどんないいことがあるのでしょうか? それは、試験勉強のことを考えてみるとおわかりいただけると思います。

 試験問題を解くとき、普通なら「受験生」の立場でしか問題をみることができません。しかし、多角的な物の見方ができる人は「その問題をつくった人の気持ち」を考えることができるため、「こういう意図でこの問題をつくっているのなら、こういう答えが正解になるはず」と、解ける問題が増えるのです。

 タスクをこなしていく上でも、多角的な思考力は必要です。たとえば、商品や作品をつくるときにも、ひとりよがりにならず、ウケのいいものを作ることができるでしょう。このように仕事の成果をあげるためにも、他人からの目線を想像する習慣を身に付けたいところです。

◆相手の立場に立つことを”ゲーム”として楽しむ

 もっとも「他人の視点に立つ」ということはとても重要ではありますが、簡単にできるわけではありません。僕も、お年寄りに席を譲ろうとしたら「俺はそんなに年じゃない!」と怒られてしまった経験があり、難しさを実感しました。

 こうした問題をなくすためには、「別の人間の立場に立ってみる」という経験が必要です。そのために僕が考えた方法が、「立場逆転ゲーム」というもの。まずはルールを説明しましょう。

 ひとつめのルールは、「その日1日で出会った人の中から、5人を無作為に選ぶ」というものです。家族でも、友人でも、電車の隣に座った人でも、買い物をしたレジの人でも、街で見かけた外国人でも、誰でもいいので選んでみましょう。

 次のルールは、「その5人が、『自分のことをどう見ているか』を考えてみる」ということ。相手の目になって考えてみてください。

 そして、最後のルールが「考えて、自分の中に改めるべき点を1つでも見つけたらゲームクリア!」です。たとえば、友達との会話の中で「こういう言い方をすると、少し傷付いたかもしれない」という発言を見つければゲームクリアと考えてください。制限時間は「1日」です。

 このようにして1日に5人の「別の人間の立場に立ってみる」という経験を積むと、自分の行為を客観的に見えてきて、多角的な目線を得るのに非常に役立ちます。

 ご飯を食べるときにご飯を作った人の気持ちを考えたり、本を読むときに著者の気持ちを考えてみたり、服を着るときにその服を作った人の気持ちを考えてみたり……。すごく些細なことでも、発見がたくさんあるはずです。

【西岡壱誠】
(にしおか いっせい)東京大学3年生。偏差値35から2 浪後なんとか東大に合格。現在は東大書評誌『ひろば』編集長、「ドラゴン桜2 東大生プロジェクト『東龍門』」のプロジェクトリーダーなどを務める。著書『「読む力」と「地頭力」がいっきに身につく 東大読書』が12万部を突破。最新刊『東大式習慣「ゲーム化」でラクラク身につく<最強の効率術>』が発売中