by Pixabay

 昨年、一度だけ都内のキャバクラにて、体験入店という形で働いてみたことがある。きっかけはちょっとした好奇心だったのだけど、結果的にはいろいろなことを考えさせられるとても貴重な機会となった。
あまりいうと「体入荒らし」を増やしてしまうことになるかもしれないんだけど、いい経験になるので、女性はみんな一晩くらい水商売をやってみても損はないと思う。年齢を気にしてためらう人もいそうだけど、私も30歳未経験で雇ってもらえたので、意外とイケる。

男と女、実は性欲の「強さ」は同じ説

 ところで、この世界では一応「女性より男性の性欲のほうが強い」というのが定説となっている。
しかし私は思うのだけど、女性と男性でちがうのは、実は「性欲の強さ」ではなく、「性の対象となる人数(割合)」ではないか。たとえば、ランダムに10人集めたとき、男性はうち8人とヤレる(8人を性的対象として見ることができる)。しかし、女性はうち2人としかヤレない。2人としかヤレないので、女性は自分の性欲をぶつける機会が、男性に比べて少ない。そのことが、世間の「女性より男性の性欲のほうが強い」という誤解を生んだのではないか、実は「性欲の強さ」自体はそう変わらないのではないか――というのは、ちょっと持論を展開しすぎだろうか。
キャバクラで、年齢や体型や容姿に関係なく、どんな子が来てもそれなりに下心を出してデレデレできている男性たちを見て、私はそんなことを考えた。女性だと、たとえばホストクラブなんかでも、どんな男が来てもデレデレ……というわけにはなかなかいかないだろう。

 キャバクラとはちょっとちがうけれど、中村うさぎさんの『私という病』は、中村さん自身がデリヘル嬢として働いた経験について書かれている本だ。中村さんはなぜデリヘル嬢になったのかというと、推しだったホストに「お勤めの営業セックス」をされてしまったことに、深く傷付いたからである。想像してみればわかるけれど、好意を抱いた相手から「お勤めの営業セックス」なんてやられた日には、たしかに絶望してしまう。
欲情され、「どうしても!」と頭を下げられ、やっとさせてあげるセックスを取り戻したい。そのためには、セックスにお金を払ってもらう必要がある。中村さんがデリヘル嬢になったのは、そういう経緯だったらしい。

まだ答えが出てない「セックスレス」問題

 中村さんは、このエピソードをセックスレスの話題へとつなげていく。「お勤め営業セックス」でなくとも、家庭で夫から性の対象として見られていない、もう何年も「そういうこと」からは遠ざかっている……という話はよく耳にする(私自身は未婚だけれど)。
おそらく一昔前ならば、家庭内でセックスがなくなれば、妻の気持ちはないものとして、男性側だけが不倫や風俗で性欲を満たせばいいと考えられていたのだろう。キャバクラにも、家庭内でなくなった色気を補給しに来ていると思われる男性客はたくさんいた。

 渡辺ペコさんによるマンガ『1122』などに代表されるように、昨今「セックスレス」はにわかに脚光を浴び出した話題のように思うのだけど、それは今までないものとされてきた自身の性欲に、女性たちがようやく向き合えるようになった証なのかもしれない。男性のそれとまったく同じではないにしろ、女性にも性欲は「ある」のだ。

 しかし、夫や好きな相手から性の対象として見られなくなってしまった女性が、自身の性欲をどう満たしていけばいいのかはまだ答えが出ていない。妊娠のリスクがあり、そもそも性の対象にできる人数が男性に比べて圧倒的に少ない女性にとって、「風俗」はやはり難しい気がする。だとすれば不倫か、しかしそれも倫理上の問題がある。その気がなくなった夫にセックスを強要するのも、重い言い方をすれば人権侵害だ。
中村うさぎさんの『私という病』はこの女性の性欲のねじれに真摯に向き合っているエッセイだと思うし、渡辺ペコさんの『1122』も、今後の展開が気になるところ。

 女性にだって性欲はあるし、色気のある雰囲気だってほしい。男にはキャバクラと風俗があるけれど、女にはジャニーズと韓流がある――なんていわれるかもしれないけど、キャバクラでデレデレしている男性たちを見て、なんかこいつらずるいよな、と私は思ってしまったのであった。
なかなか興味深い世界なので、本と一緒に一度、水商売もお試しあれ(なんて、いっていいのか?)。

Text/チェコ好き

AM