前回は、ゼネラル・アトミックス・エアロノーティカル・システムズ(GA-ASI)社の無人機(UAV : Unmanned Aerial Vehicle)、ガーディアンと組み合わせて使用する地上管制ステーション(GCS : Ground Control Station)の概要について説明した。今回はその続きと、GCSに関するさまざまな話題をまとめてみる。
○タッチスクリーン式ディスプレイの長所

コックピットの計器盤における多機能ディスプレイ(MFD : Multi Function Display)の利用は一般的なものとなっており、有人機でも珍しくもなんともない。軍用機の場合、当初のMFDは周囲のベゼル部にボタンをズラッと並べていて、個々のボタンの機能は画面の表示内容によって変わる仕組みになっていた。それをタッチスクリーン化すると、新たな長所と短所ができる。

まず長所だが、ディスプレイと操作系(スイッチ、ダイヤル、レバー、ノブの類)を別々に用意する必要がなくなる。操作系はすべて画面上に現れて、それを指先の操作によって操る。

だから、操作系の追加や削除、あるいはデザイン変更は、ソフトウェアの変更によって実現できる。「小さすぎて操作しやすいから、もうちょっと大きくしたい」なんてことになっても、(画面上のスペースを確保できれば、だが)ソフトウェアの変更で済む。

UAV用のGCSでは、このことが「1つのハードウェア(GCS)で異なる複数の機種に対応できるし、センサー機器の変化や追加にも対応しやすい」という利点につながる。機種が変わったら、それに合わせて画面の内容を変えればよい。変更によって存在しなくなる機能があれば、該当する操作系の表示を消せばよい。センサー機器の追加・削除・更新でも同じだ。

もちろん、画面にデータ表示や操作系を用意するだけの話ではない。GCSとペアを組む機体、あるいはセンサー機器を制御するためのソフトウェアを用意しなければならないのは、当然のことである。

したがって、物理的なハードウェアとソフトウェアの両方について、アーキテクチャのオープン化を図り、ソフトウェアの追加や更新を柔軟に行える設計にしておかなければならない。それを機体側で実現する必要性については以前に指摘しているが、実は機体とペアを組むGCSも同じなのである。

UAVとGCSは同じメーカーがセットで手掛けることが多いが、搭載するセンサー機器は外部のメーカーに頼ることが多い。だから、物理的なインタフェースと、センサー機器を制御するためのソフトウェア向けインタフェースの両方について、仕様をきちんと策定した上で、センサー機器のメーカーに開示する必要がある。

センサー機器が出してきたデータを解析するソフトウェアについても、同じことが言える。データ・フォーマットがわからなければ、データの処理はできない。ただし、データを処理・解析する機能をGCS自体で実行するか、GCSと連接した別のコンピュータで実行するかは、場合によるだろう。

この辺は、パソコンあるいはスマートフォンやタブレットと、周辺機器のメーカーの関係に似たところがある。USBのコネクタみたいな物理的インタフェース、周辺機器を制御するためのソフトウェア、そのソフトウェアに関わるAPIといった要因が関わってくることを考えていただければ理解しやすい。

それをUAVの業界に置き換えると、どうなるか。使えるセンサー機材やソフトウェアが豊富にあるか、センサー機材の操作性はどうか、機体やセンサー機材の中に輸出規制に引っかかって入手不可能になるものはないか、といった要因が関わってくることになる。そして、利用可能なソフトウェアやペイロードがたくさん出回り、扱いやすい製品、性能がいい製品が増えれば、UAV自体の売り上げ増にもつながると期待できる。
○タッチスクリーン式ディスプレイの短所

タッチスクリーン式ディスプレイには、柔軟性という長所がある一方で、短所もある。

まず、物理的なスイッチ、レバー、ノブなどと同じ操作を実現できるとは限らないので、タッチスクリーンに合わせた操作の仕方を考えなければならない。スマートフォンが登場したことで、タップとかフリックとかスワイプとかいった、新たな操作体系ができたのと同じである。

また、物理的な操作系がある場合、「うっかり操作を防ぐ物理的手段」を用意できるが、タッチスクリーンだとそれができない。たとえば、「非常時にだけ使用するボタンは、普段は透明な蓋を被せておいて物理的に押せないようにする」という安全策があるが、タッチスクリーンではそれができない。

そこでGA-ASI社のGCSを見ると、非常時にだけ使用するボタン(の表示)は、注意喚起の縞模様で囲ってある。それをタップするだけでは作動しない。最初のタップは「透明な蓋を跳ね上げる」操作に相当するからだ。そこでさらにもう1度タップすると、初めてそのボタンを「押した」ことになる。

つまり、タッチスクリーンにはタッチスクリーンなりのマン・マシン・インターフェイスがいる。たまたま筆者はGA-ASI社のGCS以外にもいくつか、タッチスクリーン式ディスプレイを使用する操作系に接した経験がある。その経験を振り返ってみると、メーカーによって操作も画面表示も思想が違うのが面白いところだ。

○GCSならではの応用

最後に、GCSならではの応用に関する話を1つ。

有人機のパイロットを訓練する際は、機体とは別にシミュレータを用意する。モーション機能がないコックピット・シミュレータから、モーション機能もビジュアル装置も完備したFFS(Full Flight Simulator)まで、いろいろなシミュレータがある。

「実機を使わずに訓練できる」「実機ではリスクが大きすぎて実施できない訓練を行える」といったところがシミュレータの利点だが、なんにしても実機とは別にシミュレータがいる。そして、シミュレータは実機のコックピットに似せて作る必要がある。

ところがUAVの場合、そもそも操縦装置はGCSという形で当初から外出しになっている。そのGCSと機体を無線通信でリンクすればUAVの遠隔操縦になるが、機体にリンクする代わりに機体の動作を数値的に模擬するコンピュータとリンクすれば、たちまちシミュレータに化ける。

というよりも、どのみちシミュレータはいるのだから、シミュレータの機能を最初からGCSに組み込んでしまってもよい。すると、同じGCSが「飛行任務がある時はGCS、飛行任務がない時はシミュレータとしてパイロット養成用」という1人(?)2役を実現できる。

有人機のシミュレータだと、安価なシミュレータはモーション機能を省略する。モーション機能が付くのは、高価なFFS(Full Flight Simulator)だけである。対してUAVの場合、もともとGCSから遠隔操縦するものだから、機体の動きを体感できない。よって、それを再現するためのモーション機能も要らない。つまりシミュレータとGCSは限りなく近いのである。

著者プロフィール

○井上孝司

鉄道・航空といった各種交通機関や軍事分野で、技術分野を中心とする著述活動を展開中のテクニカルライター。
マイクロソフト株式会社を経て1999年春に独立。『戦うコンピュータ(V)3』(潮書房光人社)のように情報通信技術を切口にする展開に加えて、さまざまな分野の記事を手掛ける。マイナビニュースに加えて『軍事研究』『丸』『Jwings』『航空ファン』『世界の艦船』『新幹線EX』などにも寄稿している。
(井上孝司)

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