(C)Hiroyuki MIZUMOTO 

2018年夏のアニメーション映画は、邦画&洋画ともになかなかユニークな作品が多く、どれも目が離せないものがあります。

その中で今回は、そこらの商業映画に比べると派手さには欠けるものの、アニメーションならではの手作りの優しい温もりに満ちた味わいを堪能できる逸品をご紹介したいと思います……

《キネマニア共和国~レインボー通りの映画街327》

人形アニメーション映画『よるのたんけん』、その名のごとく動物たちが夜の町を探険する22分の珠玉の短編です!

檻から出たぞうとうさぎが繰り出す
一晩の町の冒険

映画『よるのたんけん』は、とある港の貨物置場から始まります。

そこに、ぞう(声/『恋の渦』などに出演の女優・後藤ユウミ)とうさぎ(声/音楽家&治療家の53235“GOMIFUMIKO”)が運ばれてきました。

ぞうは「行きたいところがあるんです」と、ため息をついています。

見かねた係のおじさん(声/美術作家の酒井貴史)は「朝まで町を散歩してきていいよ」と、ぞうを檻から出してあげました。

「俺も行きたい!」と、うさぎもぞうと一緒に夜の町へ繰り出します。

はてさて、彼らは行きたいところに行けるのでしょうか?

(C)Hiroyuki MIZUMOTO 

本作はガラス板の上に人形を乗せて、少しずつ動かしながら撮影するストップモーション・アニメーションの技法を駆使した、“子供のための人形アニメーション・動物シリーズ”の第2弾として完成させた22分の短編映画です。

最近では珍しくデジタル技術に頼ることなく、アナログな撮影を敢行しており、それが効して実に手作りの温もりが感じられる逸品となっています。

しかも2010年に製作をスタートさせたものの、幾度の中断を経てようやく2018年に完成と、およそ8年もの長き歳月が費やされた、作り手の気合と持続力がようやく実っての作品ともいえるでしょう。

本作の監督はみずもとひろゆき(水本博之)。

代表作は、長崎の原爆を体験したシスターにインタビューし、そのとき収めた膨大な数の連続取材写真を現地の人々にトレースさせ、その絵をアニメートして完成させるという前代未聞の発想で描出した力作『きろく きおく いま』(17)など。

また“グレート・ジャーニー”で知られる探検家・関野吉晴の手作りカヌーの旅に同行したドキュメンタリー映画『縄文号とパクール号の航海』(15)を監督するなど、ユニークな活動を続けている才人、その最新作が『よるのたんけん』なのです。

(C)Hiroyuki MIZUMOTO 

個人制作アニメ映画の波の中
アナログ感覚へのこだわり

実はこの8月、奇しくもこうした個人制作アニメ映画が、他にもいくつか公開されます。

ひとつは“超絶絵師”の異名をとる坂本サクが監督・アニメーション・原作・脚本・音楽の5役を務めた『アラーニェの虫籠』(18日より東京・シネリーブル池袋を皮切りに全国順次公開)。

不気味な集合住宅に引っ越してきた女子大生が、そこで呪われた蟲をめぐっての怪異体験を強いられていく幻惑的なホラー映画です。

もう1本は、フランスのセバスチャン・ローデンバック監督が“クリプトキノグラフィー”という独自の作画技法を駆使して、すべての作画を独りで手掛けた『大人のためのグリム童話 手をなくした少女』(18日より東京渋谷ユーロスペースを皮切りに全国順次公開)。

1本1本の線そのもの力をもって、水彩画のような味わいをアーティスティックに描出しながらヒロインの生命力を醸し出す見事な作品です。

映像技術の躍進もあって、今は一人でもその気になればアニメーションを作れる時代になってきていますが、そういった流れの中であくまでもアナログの手作り感覚にこだわりながら作品をクリエイトし続けているみずもと監督の映像作家としての姿勢もまた、強く賛辞の拍手を送るべきでしょう。

なお『よるのたんけん』を上映する東京・下北沢トリウッドでは、本作に2011年製作の“子供のための人形アニメーション・動物シリーズ”第1弾『いぬごやのぼうけん』を併映しての上映となります。

(場内には、撮影に用いられた人形も展示されるとのこと。また土日の午後の回は、小さいお子さまたちが多少騒いでも大丈夫、上映中の灯も少し明るめの[こどもげんき回]を設けています)
※詳細は tollywood@nifty.com まで

また『縄文号とパクール号の航海』も同映画館でリバイバル上映中ですので、この機会にぜひともアニメ&ドキュメントといったジャンルの枠に縛られない、みずもとワールドの真髄に触れてみてください。

(文:増當竜也)

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