ドラマ『ヒモメン』(テレビ朝日系)の第2話が8月4日に放送された。

初回を観た時はどうしようかと思った。窪田正孝扮するヒモ男・碑文谷翔が、ヒモというよりただのクズだったのだ。正直、笑えないレベルのクズっぷり。初回の彼には閉口したものだ。

でも、2話目は良かった。変身したのか修正したか、クズはクズでも愛すべきクズになった。コメディ要素が強まり、翔のダメ男っぷりを愛でて笑うストーリーに変貌。クズであり、アホであり、ヒモメンの翔。土曜の夜は、このゆるさでくだらなさを極めてほしい。初回で下げに下げたハードルを余裕で跳び越える憎めなさには一安心だ。

稼ぎのないヒモの甲斐性
憎めないながらも、第2話だってオープニングからひどい。「連れていきたい場所がある」と、同棲中の彼女・春日ゆり子(川口春奈)を連れ出した翔。2人が到着したのは結婚式場である。

ゆり子は可愛い。すぐにときめく。てっきりプロポーズされたものと思い込み、ウルウル状態になった。違うのだ。翔の目当ては、式場で開催している無料の食事会。ただ単に、タダ飯を食いにきただけである。
好意的に考えれば、これって稼ぎのない男一流の甲斐性かもしれない。

翔は翔で考えている。モチベーションのないセルフネグレクト状態かと思いきや、彼には体幹がある。人を想う優しさを持ち、人に良く見られたい自意識だってある。

“だめんず”とばかり付き合ってきた先輩看護師・田辺聡子(佐藤仁美)が、翔のヒモっぷりを見るため、ゆり子の自宅へやって来た。ここで翔が発揮したのは外ヅラの良さだ。
ネットトレーダーだと身分を偽って聡子を出迎えた翔。身なりを整え、髪はバッチリ決めている。まるで、UNOのCMに出ている窪田正孝のよう。でも、仕事はしたくない。意識するのは見栄だけ。だから、ノートパソコンを開き、キーを叩いても、電源は入れずに画面は真っ黒のままだ。とりあえず名乗った職が「ネットトレーダー」というところも、自宅警備員の“なりたい自分”が透けて見えた。

翔にとって、ゆり子も与しやすい相手だった。翔のダメっぷりを察するや、うっとりしてしまうのだから。さすが、生粋。生粋のだめんずメーカーだ。

のらりくらりとやり過ごせてしまう翔。そこに、まともな人間からの追及が遂に来襲する。男の価値を仕事と年収のみで判断する、ゆり子の姉・桜子(片瀬那奈)の訪問である。

ヒモのつもりがなかった
桜子 単刀直入に言います。ゆり子と別れてください。仕事をしないヒモに、大事な妹を託せません。
翔 ちょっと待ってください! ……えっ、俺ってヒモなんですか?

まさに、愛すべきクズ。自覚そのものが無かった! ギャンブル代まで彼女にたかってるくせに……。

桜子 はっきり言います。働けるのに働かない男は害悪。人間のクズです!
翔 でも、最近は家で主夫をする男性も増えています。

なるほど! 前クールの同じ枠で放送されていた『おっさんずラブ』には、LGBTの理解を深める側面があった。種類は違えど、『ヒモメン』も不寛容を正す正義を掲げていくということ?

桜子 あなた、ちゃんと家事はやってるの?
翔 はい。朝、カーテン開けたり。あと、エアコン点けたり消したり。
桜子 それのどこが家事なのよ!

買い被りすぎていた。そんな正義はなかった。そもそも、翔は主夫じゃなくてヒモだし。

あと、視聴者にイライラが募る寸前で桜子がツッコみ、ガス抜きしてるのが絶妙だ。ドラマ的にシリアスな山場なのに、翔が迂闊過ぎるからギャグになってしまってる。

お金のハードルを発想力と行動力でクリアするヒモ
働きたくないくせに、ゆり子のための努力はいとわない翔。その意気が見えるから、かろうじて彼は“愛すべきクズ”にとどまった。

ゆり子が希望する結婚式の予算、128万7千円を3日間で集めなければ別れてもらう。そう桜子に迫られた翔は、常識をくつがえす発想で対抗した。結婚式のブーケは聡子に作ってもらう。余興は行きつけの居酒屋のマスターたちに担当してもらう。ウエディング系の専門学校が式を挙げるカップルを探しており、依頼すれば神前式、ドレス、司会進行、写真撮影など合わせて5000円で受けてくれるそう。残る費用14800円は、翔が責任を持って払う。これで、見事に条件をクリア!

桜子のハードルを発想力と行動力で次々に切り替えしていくサマは、はっきり言ってカッコ良かった。翔が考えたプランならば温かい結婚式になりそうだ。
「翔ちゃん……」(ゆり子)
目が完全にハートマークのゆり子。ハートマークに涙を溜めている。「働けよ」とツッコミを入れてしまいそうになるが、あえてここは目をつむりたい。

いや、そうは問屋がおろさなかった……。
「ダメダメダメダメダメ! そうだ。あなた、ちゃんとプロポーズはしたの!? 婚約指輪は!」(桜子)

翔は動じない。用意しているらしい。翔はゆり子の指に指輪……まがいのモールでできた輪っかをはめた。
「婚約指輪は給料3カ月分。でも俺、今、給料ゼロだからこれで。ゆり子、結婚式しよう」(翔)
確かに、ゼロに何をかけてもゼロのまま。0に3を掛けても=0である。

とんちとしては優秀だが、妹を愛する桜子は激昂した。
「ふざけんじゃないわよ! 婚約指輪がこんなんで、ゆり子が喜ぶわけとでも……はぁぁぁぁぁぁっ!」
桜子が視線をやると、ゆり子が感動でボロ泣きしてる。ゆり子の薬指に巻かれたモールは赤い色だ。“赤い糸”みたいで、なんだかロマンチックなのだ。こうなると桜子も軟化せざるを得ない。「もう少し、この男を見極める」と、保留の態度で姉は引き下がった。

でも、このいい話にはオチがつく。

翔 お姉ちゃんがなんて言おうと、俺は今すぐにでも結婚式したい。
ゆり子 翔ちゃん……。ありがとう! じゃあ、私のこと幸せにし……
翔 (遮って)だってさあ、結婚式ってお金になるんだよ? さっきの方法でお金のかからない式を挙げれば、ご祝儀はほとんど自分たちのものでしょ? 年に2回くらい結婚式すれば、一生働かないで生きていける!

そういえば、翔は「結婚式したい」とは言っても「結婚したい」なんて言ってない。プロポーズしたのではなく、ヒモが結婚式で稼ごうとしているだけだった。

ゆり子は、小さな幸せをすぐに感じてしまう。彼女のハートは綺麗すぎる。翔の優しい言動は、綺麗なハートに付け入る現状維持のための手段だ。「働きたくない」という翔の思いと比べ、ゆり子の「翔を更生させたい」という決意は明らかに負けている。

でも、もういい。なんだかんだ、幸せそうだ。働かずして恋人を幸せにする翔。さすが、「働き方改革時代のニューヒーロー」(公式HPから)を名乗るだけはある。
(寺西ジャジューカ)


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土曜ナイトドラマ『ヒモメン』
原作:鴻池剛
脚本:森ハヤシ ほか
音楽:井筒昭雄
演出:片山修(テレビ朝日) ほか
ゼネラルプロデューサー:横地郁英(テレビ朝日)
プロデューサー:秋山貴人(テレビ朝日)、河野美里(ホリプロ)
制作協力:ホリプロ
制作著作:テレビ朝日
イラスト/Morimori no moRi