一軒宿で四季折々の美しい自然を堪能する夏瀬温泉、湯煙あげる小安峡大噴湯など散歩も楽しい小安峡温泉。花火に温泉、夏の秋田を味わいつくす。

夏瀬温泉・小安峡温泉  花火と温泉を満喫する旅

 温泉と花火の旅を目指して、秋田新幹線こまちに乗車。一路、角館(かくのだて)に向かう。

 手始めに、秋田名物の稲庭うどんをいただく。強い日差しのこの時期は、つるんと入る稲庭うどんが嬉しい。

 角館の街を歩いてから、車で30分ほどの宿に向かう。途中から舗装されていない砂利道になるが、このダートこそが旅情をかきたてる。辿り着くと、抱返(だきがえ)り渓谷沿いにひっそりと夏瀬温泉「都わすれ」があった。周りには民家もなければ他の宿もない。客室も10室のみ。聞こえてくるのは蝉の鳴き声だけ。

 実は、乳頭温泉郷の中でも根強い女性ファンを持つ「妙乃湯」の女将(おかみ)が、理想の宿としてここを作った。女将の作品とも言える「都わすれ」は、春は一面の山桜、秋は燃えるような紅葉、冬は渓谷にツララが垂れる雪景色と、まるで絵画の一部に入りこんだような贅沢さがある。だが私は夏が好き。緑豊かで、避暑地としての魅力も十分だ。

 そして何といっても温泉。江戸時代には角館の殿さまも愛したナトリウム・カルシウム・硫酸塩泉は皮膚病に良いとされ、特にカルシウム成分は日焼けなどで火照った肌の鎮静効果もある。文字通り、都を忘れて優雅な時を過ごす。

青空に色煙を楽しむ「昼花火」も楽しめる「大曲の花火」

 翌日はチェックアウト後、全国花火競技大会「大曲の花火」(2018年は8月25日開催)を目指して移動。大曲の花火は、青空に色煙を楽しむ「昼花火」があがるから早めに会場入りしたい。

 陽が暮れて、川面の風が心地よくなり、いよいよ花火だ。全国の花火師の技を競う会だから、自分で製造し、持参して、打ち上げるのが条件。そのデザインや色彩、創造性が審査される。

 私たちが当たり前に見ている丸く開く花火は、高度な技術がいる。腕のいい花火師が競う大曲だからこそ、真円に開く花火を愉しめる。手作業で時間をかけて作った花火玉が一瞬にして花開き、たちまち消える。感情がゆさぶられ、花火の残像とともに心に残る。

 渋滞を避けるために、早めに会場を後にして、小安峡温泉「多郎兵衛旅館」へ。温泉に浸かりながら、今夜の花火を思い返す。

 3日目は小安峡大噴湯を見学。体力に自信があれば栗駒国定公園入口にある泥湯温泉でひとっ風呂。さらにその奥の川原毛地獄散策と、温泉が滝となって流れ落ちる川原毛大湯の入浴もおすすめ。江戸時代に紀行家として各地の民俗習慣や風土などを書き残した菅江真澄が旅したルートだ。

 最終日には、湯沢市の佐藤養助総本店で稲庭うどんをもう一度いただき、秋田の旅を締めよう。

(山崎 まゆみ)