半数以上が平均視聴率2桁以上をキープするほか、視聴者からの評判も上々の夏ドラマ。猛暑で在宅率が上がっていることもあり、例年以上の盛り上がりを見せています。

 スタートから1カ月が過ぎて中盤戦に入ったところで気になるのは、木曜に放送されている2つの作品。テレビ朝日が午後9時から放送している「ハゲタカ」と、フジテレビが同10時から放送している「グッド・ドクター」が、放送前の予想とは異なる様相を呈しているのです。

 両作の放送が初めてそろったのは7月19日で、視聴率は「ハゲタカ」(1話)11.9%、「グッド・ドクター」(2話)10.6%と前者が勝ちました。しかし、翌週の7月26日は「ハゲタカ」(2話)11.3%、「グッド・ドクター」(3話)11.6%と、早くも後者が逆転。8月2日も「ハゲタカ」(3話)10.4%、「グッド・ドクター」(4話)10.6%。8月9日も「ハゲタカ」(4話)9.6%、「グッド・ドクター」(5話)12.2%と後者が3連勝しています。

 ネット上の話題でも「グッド・ドクター」が明らかに優勢。個人のSNSには称賛の声があふれ、ネットメディアもページビューを伸ばすべく関連記事を量産しています。

 しかし、ここ数年は、「ドクターX~外科医・大門未知子」「緊急取調室」「BG~身辺警護人~」などを放送してきたテレ朝・木9の「木曜ドラマ」が、フジ・木10の「木曜劇場」に圧勝。テレ朝・木9が2桁視聴率をキープする一方、フジ・木10は5~7%がやっとの状態であり、「ダブルスコア以上の差をつけられる」という結果が定着していました。

 今夏のような逆転は、ちょうど4年前の2014年夏以来であり、「15作連続でテレ朝・木9がフジ・木10に勝ち続けてきた」ことになります。なぜ、久々に逆転現象が起きているのでしょうか。

「強力原作」をどう扱うのか?

 第1の理由として注目すべきは、原作の存在。今夏は小説や漫画などの原作をベースにした作品が、いつも以上に多いのですが、中でも「ハゲタカ」と「グッド・ドクター」は、放送前から「大型原作」と言われていました。

「ハゲタカ」の原作は真山仁さんの小説で、2007年にNHKが連ドラ化。国内外のテレビ賞を獲得したほか、2009年には映画も公開されました。一方、「グッド・ドクター」の原作は韓国ドラマ。現地で社会現象になった後、日本版に先立って米国でもリメイクされました。

 どちらも文句なしの大型原作なのですが、「ハゲタカ」の連ドラは日本での放送が2回目であり、11年前に放送されたNHK版との比較は避けられません。

 NHK版は、主人公の鷲津政彦を演じた大森南朋さんを筆頭に、柴田恭兵さん、松田龍平さんらの演技が絶賛を集めたほか、後に「龍馬伝」(NHK)や映画「るろうに剣心」などを手がけた大友啓史さんと、後に「あまちゃん」(NHK)や「トットてれび」(NHK)などを手がけた井上剛さんの演出、「コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-」(フジテレビ系)や「スニッファー 嗅覚捜査官」(NHK)などを手がけた林宏司さんの脚本。

 すべてのクオリティーが高かったため、今回のテレビ朝日版に物足りなさを感じる人がいるようです。

 その点、「グッド・ドクター」は、韓国版や米国版を見た人が少なく、日本で放送されるのは初めてだけに鮮度十分。また、制作サイドが「この原作はすごいからぜひ見てほしい」という形のプロモーションをしなかったことも、その鮮度を高めました。実際、「韓国ドラマが原作ということを知らずに見ている」という視聴者も多いようです。

感動する態勢を整えられる「グッド・ドクター」

 2つ目の理由は、物語が感情移入しやすいかどうか。

「ハゲタカ」は、「バルクセール」「ゴールデンパラシュート」「ホワイトナイト」といった経済用語が飛び交うなど、専門性が高く、難解な上にシビアな作品。前述したように、テレ朝・木9は刑事・医療モノが多く、ビジネスが舞台の作品はほとんどありません。脚本もシンプルな勧善懲悪で爽快感のあるものが多いため、同時間帯の視聴者層とのマッチングには疑問が残ります。

 一方、「グッド・ドクター」は、さまざまな設定を生かして感動を誘うストレートな物語。驚異的な暗記力を持つ一方、コミュニケーション能力に障がいがあるサヴァン症候群の主人公、かわいらしくも、か弱き小児外科の患者たち、その両者をおとしめようと暗躍する悪人たち……人物相関図が分かりやすく、視聴者は感動する態勢を整えやすいのです。

 また、「山崎賢人さんの演技がヤバイ」「少女の演技に泣かされた」などとネット上でポジティブなクチコミがしたくなるのも強みの一つ。事実、1話が放送された段階で、ポジティブなクチコミが一気に広がり、ネットメディアも追随して記事を作り、早い段階で「面白い作品」としての評価が定着しました。

 現時点では明暗が分かれ始めていますが、まだ中盤戦に突入したばかりであり、今後の行方は分かりません。どちらもキャストとスタッフの気合を感じる力作だけに、最後まで良い意味で競い合っていくことを期待しています。

(コラムニスト、テレビ解説者 木村隆志)

「グッド・ドクター」主演の山崎賢人さん(Getty Images)