ガンダムは積んでないほうの「アルビオン」が東京港にて艦内を公開しました。一般公開も実施するなど大いに親善を深めた今回の寄港は、今後の日英関係構築に向けた布石だったのかもしれません。

貴船は何しに日本へ?

2018年8月3日、イギリス海軍のドック型輸送揚陸艦「アルビオン」が晴海ふ頭に寄港し、続く4日、5日の2日間は一般公開という形で日本国民と触れ合いました。同艦は東京港に入港するのは初めて、来日するのは5月11日の佐世保入港(24日出港)に次いで2回目です。

「アルビオン」が来日したのは、イギリスがアジア太平洋地域へのプレゼンスを強化する表れで、北朝鮮の「瀬取り」に対する監視と、海洋進出を進める中国への牽制という意味合いを含んでいます。そのため、自衛隊や米海軍との共同訓練も控えており、とくに自衛隊とは日本近海において初の共同上陸訓練の実施が計画されています。

そもそも「アルビオン」は、日米の揚陸艦とはどう違うのでしょう。

それは外観を比べるとわかりますが、米海軍の強襲揚陸艦はいわゆる空母型船型をしており、LCAC(エアクッション型揚陸艇)やAAV7水陸両用車の運用が可能な大きなウェルドック(注水し舟艇を発進させられる船尾のドックのこと)と共に、「オスプレイ」やSTOVL(短距離離陸・垂直着陸)が可能なF-35B戦闘機を搭載し軽空母として用いることも可能なほどの高い航空機運用能力を持っているのが特徴です。そのため、単艦でLCACやAAV7による海上揚陸と、各種ヘリや「オスプレイ」での空中強襲、そしてF-35B戦闘機によるエアカバーを実施することが可能です。

それに対し「アルビオン」は、大型のウェルドックこそ持ちますが、飛行甲板は全通式ではなく艦の後ろ3分の1のみで、さらに航空機格納庫はないため、飛行甲板は各種ヘリへの資機材や車両の積み込みと燃料補給程度しか行えず、大がかりな整備を行うことはできません。艦内に収容する兵員や車両を揚陸させる際にメインとなるのはウェルドックで、そこから各種揚陸艇(LCMやLCVPなど)やBvS.10などの水陸両用車を発進させるのが主となります。そういった点から性格的には海上自衛隊が保有する「おおすみ」型輸送艦に近似しているといえましょう。

なお、「アルビオン」の飛行甲板は、フォークランド紛争の戦訓から「ハリアー」垂直離着陸戦闘機の離着艦は可能なレベルとされていますが、F-35Bについては将来の課題のようです。

こなせる任務も多様、過去にはロンドン五輪の支援も

「アルビオン」は2003(平成15)年6月に就役したアルビオン級ドック型輸送揚陸艦の1番艦(2番艦は「ブルワーク」)で、大きさ(カッコ内は海自「おおすみ」型輸送艦)は、満載排水量1万8500t(1万4000t)、全長176m(178m)、幅28.9m(25.8m)、喫水7.1m(6m)で、最大速力は18ノット(22ノット)、乗員325名(135名)のほかに揚陸部隊305名(330名)を収容できます。なお揚陸部隊は長期航海などを想定しなければ最大710名まで収容できます。

今回の取材では、艦長のティム・ニールド大佐によるスピーチの後、部下のマーク・ヘイズ少佐によるブリーフィングが行われ、「アルビオン」の艦の特性や、過去参加した様々な作戦、たとえば2010(平成22)年に起きたアイスランドの火山噴火による英国邦人の輸送任務や、2012(平成24)年のロンドン五輪支援についての概要説明などがありました。

ちなみに、今回「アルビオン」に乗り込んでいるイギリス海兵隊は、第3コマンドー旅団(特殊部隊を別にした英海兵隊唯一の実動部隊)隷下の第40コマンドー(実質大隊規模)チャーリー(C)中隊107名とのことでした。

そして次の寄港地を質問してみたものの、「それはシークレットだ」とのことで教えてもらえませんでした。

バラエティに富む搭載装備

艦内見学では、艦橋(ブリッジ)から始まり、マストや搭載武装、飛行甲板、そしてウェルドックに至るまで案内してもらえました。個人的に興味を引いたのは、近年の不正規戦の影響でしょう、海賊や自爆攻撃を加えようと近付く不審船などに対処できるように全ての火器が光学照準可能なようになっていた点です。大型の20mm機関砲や7.62mmミニガンにはダットサイト(照準器の一種)が装備され、従来、艦の前後に搭載していた対空用のゴールキーパー30mmガトリング砲は、対水上目標にも射撃できる20mmバルカン砲Block1Bに換装されていました。また輸送揚陸艦として諸外国に寄港することが多いため、専用の礼砲が左右に備えられていたのも面白かったです。

イギリス海兵隊の装備としては岸壁に鎮座していたBvS.10「ヴァイキング」水陸両用装甲車の他にも、「ジャッカル」装輪装甲車、そして各種支援用に無装甲のBv.206水陸両用車や「ピンツガウアー」、「ランドローバー」なども搭載されていました。また砂浜などでスタックした車両の回収や、深くビーチング(海岸に乗り上げること)してしまったために離岸できなくなった揚陸艇を砂浜側から押して海に戻すための専用車両としてBARVと呼ばれる海浜専用回収車が搭載されていたのが印象的でした。同車は「Hippo(カバ)」という愛称を持ち、ドイツ製のレオパルト1A5戦車をベースに製作されているのが特徴です。

本来であれば翌8月8日(水)まで晴海ふ頭にいる予定でしたが、あいにく台風が接近していたことから、その影響を避けるためにスケジュールを繰り上げて7日(火)中に出港していきました。

とはいえ「アルビオン」は、北東アジアの安全と安定に寄与するために今後もしばらくは西太平洋近海で行動を続ける模様です。

昨年(2017年)8月31日に、イギリスのメイ首相が初めて来日し、安全保障協力に関する日英共同宣言が出されてから1年を迎えようとしています。また今年4月の陸上自衛隊水陸機動団の発足式には、イギリス海軍の武官も来賓として招待されていました。

すでにフランスはミストラル級揚陸艦が佐世保に寄港し、陸自のヘリが離着艦訓練を行うなどしており、自衛隊が米海兵隊のみならず英仏とも共同訓練を行おうとしている姿に、時代の変化をヒシヒシと感じ取れるのではないでしょうか。

【写真】「アルビオン」のウェルドック全景

晴海ふ頭にて、イギリス海軍のドック型輸送揚陸艦「アルビオン」(2018年8月7日、月刊PANZER編集部撮影)。