2004年公開のアカデミー賞主演女優賞受賞作『モンスター』では実在した連続殺人犯に、2015年公開の『マッドマックス 怒りのデス・ロード』では丸刈りのヒロインを演じるなど、ハリウッドきっての演技派として知られるシャーリーズ・セロン。本人いわく「どんなに暗い映画を撮影している時も、夜、家に帰れば、自分自身に戻って、お酒でも飲んで笑うわ。普段ならね」。役にどっぷりと浸かりきって抜け出さない、いわゆる“メソッド”アクターではないと主張するが、『タリーと私の秘密の時間』(8月17日公開)で、意図せずして初めてそれをやることになった。

 『ヤング≒アダルト』(2012)の監督ジェイソン・ライトマン、脚本家ディアブロ・コディと再びチームを組む『タリー~』で、セロンが演じるのは、3人目を妊娠中の母で妻であるマーロ。長男が学校でちょっと問題児なこともあり、彼女の毎日はストレスだらけだ。ついに3人目が生まれ、さらに手いっぱいになった時、マーロは、兄の提案に従い、夜だけ子守りの女性を雇うことにする。その女性が、タイトルにあるタリー(マッケンジー・デイヴィス)だ。

プレミア時の写真 (c) 2018 Le Studio Photography

 若くほっそりとしたタリーと対照的に、出産と育児で疲れ切ったマーロは、体も顔もボロボロ。そんな彼女になりきるため、セロンは何と20キロ近く太ってみせた。図らずして“メソッド”になったのは、そのせいである。

 「太るために、最初は、好きなものを好きなだけ食べたの。でもすぐに頭打ちになってしまって、砂糖をたっぷり摂取することにしたのよ。本来は全然甘党じゃないのに、1日にコーラを12本も飲んだりね。それは、脳に大きな影響を与えたわ。診断されたわけじゃないけど、あれは鬱よ。1日の終わりに家に帰っても、そこから抜け出すことはできなかった。母がわたしの2人の子供をみてくれたのは、ありがたかったわ。何せ、全然動けなかったんだから。今作の撮影中、わたしはずっと疲れていた。それが、図らずして、役のためになったというわけ。わたしが今作から学んだことの一つは、食べ物は精神にとってすごく大切だということね。それと産後鬱の大変さも……」。

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 セロンの2人の子供は、男の子と女の子。いずれも養子だ。「だから、わたし自身はマーロと同じ経験はしていない。だけど、仲のいい友人に、ひどい産後鬱にかかった女性がいるの。この映画をやって、そういう女性たちをもっと理解し、思いやってあげなければと思ったわ。体にすごく大きな変化が起きた後、家に帰ってすぐ新生児の面倒を見るなんて、自分にできるかしら? わたしが初めて母になった時、体は回復の必要がなかったし、小さな赤ちゃんを迎え入れることにただ興奮していただけだった。最初の3か月、全然寝られないであろうことはわかっていたけれど、そのための準備は、物理的にも、精神的にもできていたし」。

 そう語る目の前のセロンは、すっかり元どおりに痩せている。表情は終始笑顔で、エネルギーもたっぷりある感じだ。鬱から抜け出すのは、また普段通りのヘルシーな食生活にしたことで、あっさり解決したという。だが、体重を落とすのは、そう簡単にいかなかった。パーソナルトレーナーの指導のもと、ワークアウトにもダイエットにも励んだのに、何と1年半もかかってしまったというのだ。『モンスター』で太った時にはすぐに体を戻せただけに、これは不意打ちだったと嘆く。

 「原因? 年齢よ。『モンスター』に出たのは、26歳の時。当時のわたしは、『ジムって何のために行くの?』なんて言っていたわ。30代になって、『そうか、体というのは自分で管理しないといけないんだ』とわかるようになった。今は、必死になって維持しないといけない。だからこそ、もっと自分の体を大切にするし、ありがたく思うようにもなったわ。こんなにがんばって得た結果なのだから(笑)」。(取材・文:猿渡由紀)

セロンが約20キロの増量を経て臨んだ『タリーと私の秘密の時間』 - (C) 2017 TULLY PRODUCTIONS.LLC.ALL RIGHTS RESERVED.