3世帯に1世帯が貯金ゼロ――節約を意識し貯蓄している人たちからすると信じがたいが、日銀の金融広報中央委員会が調べた「家計の金融行動に関する世論調査」で報告されている’17年の調査結果だ。“貯まらない家庭”にはどんな傾向があるのか? そして、貯金ができない家庭にはどんな未来が待っているのか? 実際にお宅を訪問して判明した“貯まらない家族”の特徴を紹介する。

◆住宅ローン返済のため副業バイトで疲労困憊の日々
…世帯年収820万円の実例

「365日ほぼ毎日休みなく働けど、貯蓄はゼロ円です」と呟くのは、コンサルティング会社で契約社員として働く棚橋雄二さん(仮名・48歳)。妻と2人の子供を支える一家の大黒柱で、本業の収入は手取りで45万円ほど。高収入のはずなのに、なぜ貯蓄ができないのか。

「一番の原因は、15年前に約4700万円で購入した住宅ローンの返済です。頭金ゼロ35年ローンで購入したせいで、修繕積立金・管理費込みで月19万円。給料の半分近くがなくなります。もう一つは教育費。高校生の子供が2人いて、学費や部活代、小遣いで毎月10万円がなくなります」

 しかも7年前、会社の業績悪化で正社員から契約社員に。そこで、アフター5や早朝の時間を利用し、副業のバイトを入れ、毎月10万円稼いでいるという。取材当日も朝8時から正午まで都内の商業施設で清掃のバイト。午後から本業の会社に行く多忙さだった。

「寝る暇はほぼないので、体はしんどい。朝バイトに行って、昼間会社に行って、夜は夜勤。電車や会社の床で2時間ほどの仮眠をとって、そのままバイトに行く日もありますよ」

 だが、副業でせっかく稼いでも生活をギリギリ補塡できる程度で、貯蓄に回す余裕はない。あまりの過労に、専業主婦の妻にも働いてくれるようにと頼んだが、あっさり断られたとか。

「『稼ぐのはあなたの役目でしょ。もっと副業を増やせばいいじゃない』と突き放されました。もう諦めています」

 孤立無援の棚橋さん。体を壊さないかが心配だが、健康診断はもう何年も受けていないという。

「健康診断の費用がもったいなくて受けてないです。今、病気が見つかっても治療するお金も時間もありませんし。老後は夫婦で旅行なんて考えられないから、私は60歳まで生きられればいいと思っていて。17歳の娘が大学に行きたいと言ってるので、大学を卒業するまで死ななければいいやと。もし私の体が動かなくなったり死ねば、保険が下りてローンも完済できる。それで親・夫としての責任は果たせますから」

 住宅ローンは75歳まで続くため家を売ることも考えたが、売っても借金だけが残るので、このまま払い続けるしかないと判断したのだとか。

「住宅ローンが終わるまで働くしかない。悠々自適な老後なんて、お金があって生活に困っていない人のもの。お金がない自分には無関係と、とっくの昔に諦めてます」

 消費生活アドバイザーの丸山晴美氏は「それでも見直しの余地はある」と指摘する。

「最大の支出になっている住宅ローンは15年前の金利のままとのことなので、借り換えローンの活用を。月3万円ほど安くできるはず。また、ケータイは格安スマホに、教育費にもメスを入れて節約を心がければ、本業の収入の範囲でやり繰りも可能になるはずです」

 住宅ローンや学費の重い負担がある限り、ささやかな老後を送ることすらできそうにない。

― 貯金0円の恐怖 ―

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