「ベッドシーンの天才」津川雅彦の冥福を祈る1本『ひとひらの雪』

作品目『ひとひらの雪』

東映/1985年(DVD発売中)
監督/根岸吉太郎
出演/津川雅彦、秋吉久美子、沖直美、岸部一徳ほか

俳優の津川雅彦氏が8月4日に心不全で亡くなっていたこと分かった。78歳だった。今年4月に妻の朝丘雪路(享年82)を亡くし、愛妻を追うようにして逝ってしまった。

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生前に何度かインタビューしたが、ダンディーで、悪役を好み、実にカッコ良かった。「僕はスケベな男だから、少し仲良くなりゃだいたい(女優に)手を出す」と露悪的に言いつつも、愛妻家の一面も確実にあった。5年前にアルツハイマー型認知症を発症した朝丘さんを自宅に引き取り、献身的な介護を続けてきたことでも証明されている。

映画俳優としても、実に“濡れ場巧者”であった。私生活のプレイボーイぶりがうかがえるような艶技で堂に入っていた。そんな“濡れ場巧者”としての代表作は例えば『別れぬ理由』(87年)、あるいは『墨東綺譚』(92年)など五指に余るが、秋吉久美子とのカラミが特上であったこの作品を選ぼう。

何しろ原作が『失楽園』『愛の流刑地』など映画化も多い渡辺淳一だから、津川氏とはエロスの“最強タッグ”と呼んでもいい。相手役がデビューのころから、『赤ちょうちん』(74年)など脱ぎに関しては定評のあった秋吉久美子だから、加えて“最強トリオ”と言うべきか。否、監督がロマンポルノの『オリオンの殺意より・情事の方程式』(78年)でデビューし、『遠雷』(81年)などでも鮮烈なエロス描写を見せた根岸吉太郎だけに“最強カルテット”かも知れない。

 

遊びのつもりが「今度は私が遊ぶんです」

妻と別居し、自分の秘書と情事を重ねている建築家でプレイボーイの中年男・伊織(津川)は、美大講師時代の生徒で、かつて一度だけ関係を持ったが、今は人妻の霞(秋吉)と偶然再会し、深い関係となる。彼にとってほんの遊びのつもりが、霞が「今度は私が遊ぶんです」と次第に積極的になってゆく…。

エロスの“最強カルテット”の作品だけあって、濃厚な濡れ場の連続だが、当時大いに話題となったのが“孔雀セックス”。喪服姿の秋吉の裾をめくって、津川がバックから挿入するサマがまるで孔雀が羽を広げたようで大いにウケた。秋吉がとろんとした目付きになり、口を半開きにしたその表情、喘ぎ声は真に迫っていた。

津川氏が40代半ばの作品で、当時インタビューしたときに「男は40代が勝負。この年代で良い仕事をしてこそ」と語っていたが、まさに映画やドラマでそれを実践していた。あれから30年余、“孔雀セックス”で故人の冥福を祈っても、津川氏はきっと笑って許してくれるはず。

(映画評論家・秋本鉄次)