エアバスとボンバルディアが手を組み、新たなジェット旅客機のラインナップ「A220」シリーズを発表しました。将来、これが業界再編のきっかけだったと言われることになるかもしれません。

エアバス「A220」シリーズ発表、その中身は…?

エアバスは2018年7月16日から22日までイギリスで開催された「ファンボロー国際航空ショー」に、「A220-300」を出展しました。A220は元々、カナダのボンバルディア・エアロスペースが開発した、座席数100から150席クラスの旅客機「Cシリーズ」で、今回出展された130席クラスの「A220-300」は「CS-300」、小型で110席クラスの「A220-100」は、「CS-100」と、それぞれ呼ばれていました。

ボンバルディア・エアロスペースは2004(平成16)年に、100から150座席クラスの旅客機の開発計画を発表しましたが、この座席クラスの旅客機の市場では1980年代後半から、ボーイングの「737」、エアバスの「A320」の2機種による苛烈なシェア争いが繰り広げられており、100座席以下のリージョナル旅客機「CRJ」で成功をおさめたボンバルディア・エアロスペースといえども、この両機のシェア争いに割って入るのは容易なことではなく、また同計画機の導入を希望するエアラインが現れなかったため、計画は一端白紙に戻されています。

その後ボンバルディアは「737」、「A320」の両機に対抗するためには、両機を上回る燃費性能を持った航空機を作るほかないと考えを定め、2008(平成20)年7月に開催された「ファンボロー国際航空ショー」で、それを実現する新型旅客機「Cシリーズ」の開発を発表しました。

「Cシリーズ」は機体構造の半分以上に炭素繊維複合材やアルミ・リチウム合金などの軽量な素材を使用することで、同クラスのライバルである「737」の改良型である「737MAX」、「A320」の改良型である「A320neo」に比べて5000kg以上軽くなっています。もちろん、機体の重量が軽ければ軽いほど、離陸時や飛行時の燃料消費量は少なくて済みます。また、「737MAX」と「A320neo」は、「737」と「320」に、より燃費性能の高いエンジンを組み合わせていますが、「Cシリーズ」は、両機よりも空気抵抗を受けにくい、新設計の細い胴体を採用して、飛行時の燃料消費量を少なくしています。

ボンバルディア・エアロスペースはこの軽量な機体に、アメリカのプラット・アンド・ホイットニーが新たに開発した「PW1500G」ギヤード・ターボファン・エンジンを組み合わせました。

A220シリーズ=旧Cシリーズはどんな飛行機?

三菱航空機が開発を進めている「MRJ」にも採用されているギヤード・ターボファン・エンジンは、現在ジェット旅客機のエンジンとして主流となっているターボファン・エンジンに比べて燃費性能が高く、「737」と「A320」に使用されているエンジンよりも約20%、「737MAX」と「A320neo」のエンジンと比べても約10%、燃料消費量が少なくなっています。ギヤード・ターボファン・エンジンには、騒音も従来のターボファン・エンジンに比べて小さく、ロンドンのシティ空港のように市街地に近く、騒音規制の厳しい大都市圏の空港を離着陸する路線でも運用できるという強みもあります。

エアラインにとって経営上の悩みのタネのひとつである、燃料費を節減できる「Cシリーズ」に対するエアラインの評価は高く、2008年から2018年までの11年間で、スイス・インターナショナル・エアラインズやドイツのルフトハンザ、大韓航空といった大手のエアラインから、合計402機の受注を獲得しています。

ただ、すでに「737」と「A320」を運用しているエアラインの多くは、パイロットや整備士の教育に時間がかかることや、ボンバルディア・エアロスペースのサポート体制が、ボーイングやエアバスに比べれば弱いことなどから、「737MAX」の4649機、「A320neo」の6143機(いずれも2018年6月末の発注数)に比べて、大きく水をあけられていました。

「Cシリーズ」の受注のなかには、2016年4月にデルタ航空が発注した「CS100」75機も含まれています。ボーイングのお膝元であるアメリカのデルタ航空からの発注により、「Cシリーズ」の発注には弾みがつくものと見られていましたが、ボーイングはこの契約について、ボンバルディア・エアロスペースがカナダ政府からの補助を受けて、「737」に比べ安い価格をデルタ航空に提示できたとの理由で2017年6月、アメリカ国際貿易委員会に対して提訴を行ないました。

実のところエアバスは数年前から、「Cシリーズ」の事業への参画を目論んでおり、水面下でボンバルディア・エアロスペースに打診を行なっていました。「A320」シリーズには機体の大きさの異なる複数のモデルが存在しますが、そのなかで最もサイズの小さい座席数100席クラスの「A318」は、A319、A320、A321で実施された燃費性能の高い新エンジンを搭載するモデルシリーズ「neo(New Engine Option)」の開発が計画されていません。

エアバス×ボンバルディアを受けボーイングは…?

「Cシリーズ」を自社のラインナップに加えれば、「A318」を運用しているエアラインにその代替機として「CS-100」を提案できるというのが、エアバスが「Cシリーズ」の事業参画を目論んだ理由のひとつと見られていますが、エアバスは「Cシリーズ」への事業参画を突破口にして、将来的にボンバルディア・エアロスペースを傘下に治めたいのではないかとの観測もなされています。

ボンバルディア・エアロスペースは当初、消極的な姿勢を示していました。しかしボーイングからの提訴を受けて、「敵の敵」、つまりボーイングの最大のライバルであるエアバスを「味方」にすることが得策と考えたのか、一転してエアバスとの提携に積極的な姿勢を示し、ボンバルディア・エアロスペースは2017年10月16日に、「Cシリーズ」での事業協力に合意します。

「Cシリーズ」の開発と製造は、ボンバルディア・エアロスペースとケベック州投資公社が共同で設立した「CSALP(C Series Aircraft Limited Partnership)」が行なっていますが、エアバスは2018年6月8日にCSALPの株式の50.01%を取得して事業提携が成立。これにより7月10日付で「Cシリーズ」は名称を変更し、冒頭で述べたように「CS100」は「A220-100」、「CS300」は「A220-300」として、新たなスタートを切っています。

エアバスは関税のかからないアメリカ国内にA220の生産ラインを開設して、アメリカ国内でのセールスを拡大していく方針を打ち出し、「737」や「A320」、「A220」が属する、座席の中央に1本の通路を配した、「単通路型旅客機」市場で、ボーイングと雌雄を決する姿勢を示しています。

これに対してボーイングは2018年7月5日に、ブラジルのエンブラエルと合弁会社を設立すると発表。関係当局から認可されれば、エンブラエルの旅客機部門は、事実上ボーイングの傘下に入ることになります。

2018年1月に退任したエアバスのジョン・リーヒCOOは、2017年6月に開催された「パリ航空ショー」の記者会見で、「20年後の民間機市場は、エアバス、ボーイング、中国の三つ巴の争いとなる」と、予言めいた見通しを語っていますが、ボンバルディアがエアバス、エンブラエルがボーイングとそれぞれパートナーシップを結んだことで、その予言が一歩現実に近づいたのかもしれません。

【写真】ボンバルディア「CS300」のコクピット

2018年7月に開催された「ファンボロー国際航空ショー」に展示された「A220-300/CS-300」(竹内 修撮影)。