大河ドラマ「西郷どん」(原作:林真理子 脚本:中園ミホ/毎週日曜 NHK 総合テレビ午後8時 BSプレミアム 午後6時) 
第29回「三度目の結婚」8月5日(日)放送  演出:堀内裕介

西郷隆盛はどう語られてきたか

川遊び
「竜馬と勝」(11.1%)より「三度目の結婚」(11.6%)のほうが少しだけだが視聴率が上がった(ビデオリサーチ調べ 関東地区)。
だからといって、幕末の英雄譚より世話もの(市井の人々の日常の物語)のほうが好まれると思うのは短絡的だろう。
受け手の好み云々よりも、作家が世話もののほうが腹に落ちた書き方ができているからドラマとしての完成度が上がるだけではないかと思う。
どうにも男たちの話になるとエンタメとしてのツボを見つけきれてない気がしてならない。
ではどうしたら男たちが魅力的に映るか、余計なお世話だが考えてみた。
「川遊び」はどうだろう。
これまで「西郷どん」では男たちが川ではしゃぐシーンをちょいちょい盛り込んでいる。人気ユーチューバー・フィッシャーズ(中学の同級生で川遊びした動画から人気者になった)を意識してのことなのかはわからないが、29話にも川遊びシーンがあり、錦戸亮が川遊びに参加した23話も13.4%と視聴率はやや高かった。
川でうなぎを取るシーンが牧歌的だった前半数話の視聴率も高かった。
この際、小栗旬と遠藤憲一と玉山鉄二と笑福亭鶴瓶と鈴木亮平が川遊びしたら盛り上がるのではないか。

んにゃんにゃ
冗談はこれくらいにして。
禁門の変を経て吉之助(鈴木亮平)が一年ぶりに薩摩に戻ってくると、京都での活躍は薩摩中に知れ渡っていてみんな尊敬の目で迎える。最初の頃威張っていた井之上(おかやまはじめ)までぺこぺこ。
あんなに吉之助を目の敵にしていた久光(青木崇高)もしぶしぶ労う。
吉之助はこういう状況を「んにゃんにゃ」と謙遜。大久保一蔵(瑛太)はもっと威張っていいとアドバイスするが・・・。
そんなことより吉之助は、大久保にこのままでは日本は幕府に滅ぼされてしまうから、幕府を潰すしかない。それを手伝ってほしいと密かに話す。
慶喜(松田翔太)は徳川家を守ることしか考えてない。
島津家は幕府の政に参加したいと思っているので、久光に仕えている大久保は吉之助の頼みを聞けない。

お見合い
子どもたちと川ではしゃぐ吉之助を、橋の上から糸(黒木華)が見かける。
その晩、大久保をのぞく旧友たちとの宴が行われる。
弟・吉二郎(渡部豪太)の嫁・園役で柏木由紀登場。妊娠中の設定。
妹・琴(桜庭ななみ)が吉之助に嫁をとってほしいと提案し、みんながそうだそうだと言い出す。

こうして盛大にお見合いが行われる。
川口雪篷(石橋蓮司)も島流しが解かれてやって来て「いっそわしを嫁にせい」と抱きつき、貧しい西郷家に世話になることに。
だが。吉之助は島妻・愛加那(二階堂ふみ)を大事にしていて結婚する気がない。島妻は島から連れてくることができない決まりではあるがちゃんと愛している吉之助の株は(視聴者、とりわけ女性には)上がったと思う。
吉之助は嫁をもらう気がないうえ、そもそも西郷家が貧しいため女たちは躊躇してしまい、縁談はなかなか進まない。

吉之助、変わる
その頃、せっかくやめにしてもらっていた参勤交代が再開され、久光は「お前のせいじゃ」「お前のせいじゃ」「お前のせいじゃ」と三度リフレインするほど苛立って吉之助を責める。
「吉之助に対する完全ないいがかりでした」(ナレーション・西田敏行)。
かなり深刻な状況なのだと思うのだが、語り口がほのぼの。
そのうえ吉之助がうるうる涙して、大反省、平謝り。
そしたら急に久光が、大久保に京へ行って尻拭いをしてやれと言い出す。
これまで毎度毎度、久光に歯向かって怒らせてきたというのに、どうした吉之助。
その真意は大久保にこそっと明かされる(本日二度目の密談)。
薩摩は長州と組むと吉之助は言い、その作戦を成功させるために「媚も売る、謀もする、偽りの涙も流す」と言い切った。
吉之助が変わった!
それだけ国を変えることに真剣になったのだろう。

ところがその場面に、
桂久武(井戸田潤)「もしかして おはんら・・・?」
吉之助「んにゃんにゃ そげなこっは」
桂が吉之助と大久保の仲を勘ぐるような場面が挿入される(いやわかりません、悪巧みをしていると勘ぐったのかもしれません)。
桂は「嫁をとれ」それは君命だと言って去る。

「おなごを憐れんだり惚れたりしちょる暇はなか」
あっちからもこっちからも嫁をとれと迫られる吉之助。
もはや彼ほどの立場になれば家を支え跡継ぎを生む嫁が必要。
吉二郎の嫁はもうすぐ子どもが生まれる。そうしたら家のことはなかなかできない。そのためにも吉之助に嫁が必要なのだ。
大久保に言われて、妻・満寿(三村里江)に連れられて糸がやって来る。鯛をもって。
じつは糸は子どもができなくて離縁されていた。

西郷家一同は、糸は吉之助さんにぴったりと家族ぐるみで盛り上げる。
幼馴染のふたりをくっつけようとする展開、朝ドラ「半分、青い。」に少し似ている。そういえば、久光の屋敷に亀がいて、「半分、青い。」に出ていた亀の二次利用かと思ってしまった。

吉之助は翌日、糸に会いに行き求婚する。
だがいきなり「おなごを憐れんだりおなごに惚れたりしちょる暇はなか」と言い出し、「日本中がひっくり返るような」とんでもないことをしたい。それは「民のための国をつくる」ことだからその「志をわかってくれる人がほしい」と言うと、糸に断られてしまう。
すごすご帰宅すると雪篷には笑われ、「女は嘘でも惚れたと言われたい」(園)のだと「まずは相手に惚れることだと死んだ父(風間杜夫)も言っていた」(吉二郎)と散々。

仕方なくひとりで旅立つと、糸が猛ダッシュ(幼い頃から足が速い設定)で追いかけて来て、あの橋の上で、
「死んだらやっせん」「待っちょいもす」「新しか国を一緒に見たか」と求婚を受けた形に。
そしてこの回では糸が「チェストきばれー」と応援。
もともと糸は吉之助が好きだったから、巡り巡って思いが届いたということで良かった良かった。

吉之助の顔がいよいよ濃くなって来たように見え、活躍が待たれる。
しつこいようだが、小栗旬と遠藤憲一と玉山鉄二と笑福亭鶴瓶と鈴木亮平と錦戸亮の川遊び場面をぜひ。石橋蓮司も入れてほしい。
(木俣冬)

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「西郷隆盛はどう語られてきたか」新潮文庫 原口 泉 「西郷どん」の時代考証スタッフのひとりの書籍。過去の大河ドラマ「翔ぶが如く」も「篤姫」もついでに朝ドラ「あさが来た」の時代交渉にも関わっている。