大学を卒業しても就職先を見つけられない人がいるのは、日本だけに限った話ではない。不本意ながらもアルバイトでお金を貯めながら、明るい将来を目指して日々就職を目指して頑張っている若者も少なくないが、今夏大学を卒業した英国のある男性は、変わったアルバイトを見つけたと話題を呼んでいる。彼が始めたのは、畑で鳥を追い払う“かかし”の仕事だ。

英放送局BBCや英紙ガーディアンなどによると、“かかし”として毎日頑張っているのは、ウェールズ地方のバンゴア大学を卒業したばかりの22歳、ジェイミー・フォックスさん。音楽の勉強をして今年の夏に大学を卒業したものの、就職先を見つけられなかった彼は、地元ノーフォーク州アイルシャムで変わった仕事を発見した。求人を出していたのは、アイルシャムでアブラナ畑を営む農場主のウィリアム・ヤングさん。彼が求めた人材は、“かかしになってくれる人”だった。

広大な敷地でアブラナを育てているヤングさんにとって、以前から困っていた問題が、畑に現れるヤマウズラという鳥の存在。付近に生息するヤマウズラにとって、アブラナの新芽はヤングさん曰く「ヒレステーキのようなもの」というくらい好物だという。しかしヤマウズラに新芽を食べられた苗は、程なくして枯れてしまうため、少しでも食べられては大問題。数年前には12ヘクタール分ものアブラナがヤマウズラにやられ、大きな損害を被ったこともあったそうだ。

もちろん、ヤマウズラを畑に近付かせないように、できる限りの努力はしてみたそう。ただ、人に慣れたヤマウズラを追い払うのは簡単ではなく、作り物のかかしが役に立たなかったばかりか、脅かすために使った爆竹さえも慣れてしまい、「数分後には戻って来る」始末だ。結局、「彼らを追い払う唯一の方法は、畑を歩いて直接追い払うしかない」との結論に達し、その役目を担う“人間かかし”になってくれる人を探そうと思い付いたのがこの求人だった。

こうしてヤングさんの畑で“かかし”として採用されたのがフォックスさんだ。2週間限定の仕事ながら、週給250ポンド(約3万1,000円)の契約で毎日8時間、オレンジ色のコートに楽器を携え、4ヘクタールの畑の真ん中で座り続ける時間を過ごしているという。しかも、ヤマウズラが現れるのはそう頻繁ではないようで、「椅子と本を持ってくるように」と言われた彼は、ほとんどの時間を読書とウクレレの練習に費やしている。

そんな彼に、同様に仕事を見つけられない友人からは「美味しい空気の中、楽しんでいて良いな」と羨ましがられているとのこと。しかし、「どんなときでも追い払わなくてはいけない」ヤマウズラの出現時はちょっと大変で、自分の存在をアピールするだけでなく、「アコーディオンやカウベルを使って」必死に追い払うそうだ。そんな仕事の給料は、来年予定しているニュージーランド旅行の資金にするというフォックスさん。さすがに「ずっとかかしのままでいたくない」と話し、最近は暇になると「将来どうするかを考える」時間にしているという。