キャリコネ

 12月1日は「映画の日」。1896年に神戸市の旧神戸外国倶楽部(現在の三宮・東遊園地)で、日本で初めて映画が一般公開されたのを記念して1956年に制定された。この日は全国の映画館の入場料が割引になる。

 一方で、今は映画館に出かけて見る以外に、映画のDVDソフトをレンタル、または買って見る、CS(通信衛星)やCATV(ケーブルテレビ)のVOD(ビデオ・オン・デマンド)で見る、ネットのダウンロードサービスで見るなど、映画鑑賞の形は多様化している。

 この中でレンタルビデオ店から進化したレンタルDVDショップの会員登録をした人は少なくないだろう。

 レンタルショップで人気は、話題の映画を中心とした新作DVDだ。しかし、週末にあまり期待せずに借りてきた旧作DVDをヒマつぶしで見たら、非常に気に入ってハマったなど、利用者が「自分にとってのイチオシ映画」に出会えることもある。

 映画評を何本読もうと、実際に自分の目で確かめなければ、その映画の本当の良さはわからない。だから、大げさに言えば、レンタルDVDショップも映画館と同様に、映画文化の普及と発展に貢献しているのだ。

 そこで、今回は、このレンタルDVDショップ業界について、キャリコネに寄せられた各社社員の口コミを見ながら分析していこう。


単価がどんどん下がり市場は縮小

 街角の「映画文化の担い手」であるDVDレンタルショップだが、ビジネスとして見れば市場は頭打ちの状況だ。

【ビデオソフトの市場推移】
 2011年を2005年と比較すると、レンタルは29%、セルは20.6%、ビデオソフト全体で25.1%と減少。中でもレンタルは09、10年の落ち込みが激しく、前年比で11.6%、12.9%と、それぞれ2ケタも減少した。

 一方で、「ビデオソフト市場規模及びユーザー動向調査2011」(日本映像ソフト協会・文化科学研究所)によると、1人当たりの年間レンタル枚数は06年が22.6枚、09年が28.6枚、10年は24.1枚、11年で25.1枚とほぼ安定している。

 ただ、1枚当たりのレンタル単価は下落している。06年は246.7円だった単価は、09年が240.8円、10年は220.5円、11年で188.1円と、23.8%も落ちた。

 つまり、レンタルの市場の減少が続くのは、08年のリーマンショックで消費者の財布のヒモが堅くなり需要が減ったからではなく、需要は安定しているがレンタル単価が下落したためと結論づけられる。

 また、年齢層別の年間利用率のデータを見ると、セルは30~40代がピークで男女の差はあまりないが、レンタルは圧倒的に20代の利用が多い。しかも男性より女性が利用率で上回っている。

 こうしたデータから浮かび上がるのは、188.1円×25.1枚=4721.31円と、1800円もする映画の入場料よりも安い単価でソフトを借り、1年に5000円も使わずに自宅で映画を25本も見ている10~20代の若い男女というレンタルDVDショップの平均利用者像だ。


業界のツートップ、ゲオとツタヤ 2強を脅かす新勢力も登場

 レンタルDVDショップで全国的に知られているのが「GEO(ゲオ)」と「TSUTAYA(ツタヤ)」だ。この2社を合わせた全国の店舗数は約2700あり、国内の半数以上を占める「二大勢力」になっている。

 「GEO」(1223店舗、12年9月末)は、ゲオホールディングス(HD)が運営。「DVD」「音楽CD」「ゲーム」「書籍」のレンタル、新品販売、中古販売、中古買い取りを行う「マルチパッケージ&マルチサプライ」が売り物だ。上場しており、12年3月期では2582億円の連結売上高があった。

 一方の「TSUTAYA」(1476店舗、12年7月末)は、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC、非上場)が運営。「DVD」「音楽CD」のレンタルに加え、販売も行う。また、書籍の販売を行う「蔦谷書店」も手がけている。CCCの12年3月期の連結売上高は1726億円だ。

 その他のチェーンでは、「ビデオ1」(社名:アルゴ、本社・新潟県、44店舗)、「DORAMA」(社名:ドラマ、本社・東京、37店舗)、「ビデオ合衆国USV/関西USV」(社名:カジ・コーポレーション、本社・愛知県、23店舗)などがある。

 ビデオ1は新潟、福島県と中部、近畿、中国地方、DORAMAは首都圏、USVは中部と近畿のローカルチェーンだ。そして、比較的大きなビデオ1でもGEO、TSUTAYAと比べると、店舗数でも売上高でも2ケタの差がついており、大きく水を開けられている。

 かつての「ビデオソフトレンタル」時代には中小チェーンが乱立していた。しかし、90年代にメディアがビデオからDVDに置き換わると多額の設備投資が必要になり業界再編が急速に進んだ。

 中小チェーンの多くは撤退や事業内容の変更、GEOに合併や営業譲渡、TSUTAYAのFC店になるなどで生き残りを図った。結果、二大勢力だけが全国でどんどん膨脹していった。

 街角のレンタルショップは、こうした状況だが、店まで出かける必要がないオンライン宅配DVDレンタルは、まだまだ“戦国時代”だ。この分野でもGEOは「GEOオンライン」や関連会社の「ぽすれん」でサービスを展開。TSUTAYAも「TSUTAYA DISCAS」を提供している。

 それ以外にも、「楽天レンタル」「@niftyDVDレンタル」「Yahoo!レンタル」のようなネット企業も参入。「DMM.com」「ムーブプラス」のような独立系の企業も健闘している。

 特にDMM.comは、宅配に向き、根強い需要あり、回転も速く利益が出るアダルト系サービスから一般映画サービスに参入。今では、レンタルDVDショップの二大勢力を脅かす存在として注目されている。


店舗の現場は見た目以上にハードワーク

 こうした状況のレンタルDVDショップだが、社員は店舗網を持つサービス業の例に漏れず、ブラック企業とはいわないまでも「低い報酬」「不規則な長時間労働」に不満を持っている。まずは報酬について見てみよう。次の2人は店長を任されている。

 「基本給が年齢給によるが17万円前後から始まる。そこから店長手当、役職手当などがついても20万円前後。よっぽど出世しない限り満足いく給料はもらえないと言える。ただし残業代は全額しっかり出るので、残業代で稼いでるようなものである」(ゲオ、20代後半の男性社員、年収310万円)

 「給与は他の企業と変わりません。残業代も社員クラスには出ます。ただし10時間までですが。店長以上になると管理職手当が付きますが、10時間分の残業代より少し多くなったぐらい」(ドラマ、20代後半の男性社員、年収250万円)

 中には会社の将来に悲観的になっている社員もいる。

 「20代前半においては給与はそこそこ良いが、そこからの伸び率はかなり低い。本業のレンタル事業も不振で、新規事業はことごとく失敗している。メーカーの様に円高が戻れば業績が回復する訳でもない」(カルチュア・コンビニエンス・クラブ、20代後半の男性社員、年収448万円)

 労働時間についてはどうだろうか。店舗の仕事は「DVDを棚に並べて接客するだけ」と思えるが、実際は見た目以上にハードワークのようだ。
 
 「コンビニなどと同じく24時間年中無休のため店舗に配属されると休みが不定期であり、業務も深夜まであるため自分の時間が取れなくなりがちで精神的にもかなりの負荷がかかり、体が弱ければ体調も崩しがちである」(ゲオ、20代前半の男性契約社員)

 「時間外労働も多くマンパワーで運営をする体質が残っている店舗を改善するなどのケースの場合、それにたえうる忍耐力が必要で、アルバイトスタッフに対する教育も地道に行っていく必要があり、体力と真摯さが求められます」(ドラマ、20代前半の男性契約社員)

 社員によると、ドラマでは一定期間ごとに人事異動があるが、辞令から異動・勤務開始まで長くて5日、短いと2日しかなく、1~2週間は休みなしで働く羽目になると言う。


「サービスのTSUTAYA、価格のGEO」が業界の共通認識

 サービス業につきものなのが、強烈なクレームだ。レンタルDVDショップも例外ではない。

 「薄利多売ですから、すべてのDVDに対して、きちんとチェックできない場合が多いです。そのため、動作不良や中身違いへのクレームはもちろんあるのですが、そのほかに、借りたDVDを間違えたから家まで持ってきてくれだとか、数日延長しているので確認の電話をしたら、わざわざかけてくるなと怒られたり」(ゲオ、20代前半の男性ショップスタッフ)

 「接客業の中でもわりとトラブルが発生する度合いが大きいと思う。とにかく一番多いクレーム内容は商品の劣化について、しかし忙しくてメンテナンスができず、さらなるクレームを呼ぶという悪循環に陥ることになる」(TSUTAYAの20代前半の男性ショップスタッフ)

 二大勢力はさまざまなビジネスにも手を出していて、まるで総合商社のようになっている。その様子をCCCの社員は、こう話す。

 「複数の事業を展開しており、どの事業に属するかによって、違う会社だと感じるぐらいの違いがあります。ネット系、事業会社系、小売り系、中途などいろいろな文化を持っている人がいて、馴染めない人は少なからずいる」(カルチュア・コンビニエンス・クラブ、20代後半の男性社員)

 また、DORAMAの店長(20代後半の男性正社員)が「規模は足元にも及びませんが、サービスについては負けていないとも思う」と前置きしながら、GEO、TSUTAYAについて、感想を寄せているので紹介しておこう。

 「(TSUTAYAは)レンタル商品のクオリティはついていけないけど、料金とか物販の品揃えは実はうちのほうがいい。資本力とスケールメリットが大きそうなのでうらやましい。直営とかはやっぱりちゃんとしている気がするが、フランチャイズによってばらつきが大きい。こういう業界のなかでセンスの良さというか垢抜けた感じが頭一つ抜けてる」

 「(GEOは)料金はいい勝負だが、サービスやクオリティはそんなに高くない。施策はざっくり大味で本部主導な感じが大きい。FAX一枚で指示書が来て、『いいからやれよ』的な感じ(違ったら失礼。あくまで外から見た印象です)。あと社員の疲労感がかわいそう。人件費も削りすぎな印象」

 「サービスのTSUTAYA、価格のGEO」。これが業界内の共通認識だという。TSUTAYAの社員は「GEOが100円レンタルを長いこと続けたので、価格競争に引きずりこまれ泥沼状態になった」と嘆いている。一方、GEOの社員は「TSUTAYAが本気で価格攻勢を仕掛けてきたら、競合地域で勝ち目はない」と恐れている。


レンタルDVDはVODに食われてしまうのか?

 GEOとTSUTAYAは、店舗でも宅配でも対決中だが、将来、レンタルDVDの市場を大きく侵食しかねない存在がある。

 それはCS放送やネットの「VOD」だ。指定すれば電波や通信回線経由で映像が送られ、PPV(ペイ・パー・ビュー)で料金を支払って視聴が可能。いつでも好きなときに楽しめる。「アクトビラ」「TSUTAYA TV」「スカパー!オンデマンド」は、その代表だが、去年は米国から「Hulu(フル)」も上陸した。

 レンタルDVDの100円レンタル、50円レンタルといった価格破壊は、VODを意識しているといわれている。今は新作も旧作もVODのPPVのほうが高いが、単純な価格競争だけでは、VOD利用者の増加でPPVの単価が下がると太刀打ちできなくなる。

 野村総合研究所の「ITナビゲーター2012年版」によると、今年のVODの市場規模は896億円に達している。レンタルDVD市場2542億円の約3分の1だが、毎年約100億円ずつ拡大している。10年先には肩を並べているかもしれない。

 そもそも、利用者がレンタルDVDショップまでわざわざ行くのは、店頭で新しい発見があったり、面白い体験ができそうだからだ。それは話題の新作に関連した「特集企画」、商品知識が豊富な店員との話、あるいは「面白そうな映画は置いていないかな?」と棚を探すことだったりする。

 「旧作が安いからとりあえず借りてきた。最初の3分でつまらなかったら返すつもりだったけど、見たらすごくいい映画だった」という発見は、レンタルDVDだからこその醍醐味だ。「この作品を見たい」と、最初から指定する宅配DVDレンタルやVODではありえない。

 このあたりに、生き残りの1つのカギがありそうだ。個性的な店構え、ユニークな企画、チャレンジングな品揃え、フレンドリーな雰囲気、ハートウォーミングな接客、異業種とのコラボレーション、ソーシャルメディアとの連携など、やれることはたくさんある。

 必要なことはジュニアや若者、シニア市場の開拓でも共通している。それを生み出すのは言うまでもなく、店舗の現場のマンパワーだ。好企画のタネは会議室に落ちているのではない。現場に落ちているのだ。

 


*「キャリコネ」は、社員が投稿した企業に関する口コミ、年収情報、面接体験などを共有するサイトです。2012年10月末現在、37万社、20万件の口コミが登録されています。

 

 

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