『テラフォーマーズ』(橘 賢一 :著、貴家 悠:原著/集英社)
ダ・ヴィンチニュース

 毎年、年間のマンガ作品のランキングを誌上で発表している『このマンガがすごい! 2013』(このマンガがすごい! 編集部:編集/宝島社)が12月10日に発売された。今年の作品の中でおもしろいと思われるものを、評論家やタレント、雑誌編集部や大学の漫画研究会、書店員など、さまざまなマンガ好きから集めたアンケートを集計してランキングにしているこのムック。今年のオトコ編大賞を受賞した『テラフォーマーズ』(橘 賢一:著、貴家 悠:原著/集英社)がその後、急速に話題になっている。

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 『テラフォーマーズ』において、強力なインパクトを与えているのは、人類の敵がゴキブリであるということだ。人類は火星を移住できる環境にするため、耐性と繁殖力に優れたゴキブリとコケを大量に放ち、環境が整ったのを見越して駆除する計画を実行したが、最初の調査団が火星に降り立つと人型に進化したゴキブリが出現し、瞬く間に全滅させられてしまう。その犠牲を糧に人類も対抗措置を講じ、新たな乗組員が火星に乗り込んで進化ゴキブリ=テラフォーマーに挑む……という展開だ。

 特徴的なのは、人型のゴキブリが虫というよりゴリラのような風貌をしていること。にもかかわらず、行動や習性はゴキブリそのもので、圧倒的な腕力と痛覚のない肉体により、無機質な表情のまま簡単に人を殺していく。見ようによっては愛嬌があるし、いつかは分かり合える? などと甘い希望を抱こうものなら、その期待は次々と裏切られ、より深い恐怖に追い込まれていく。

 今年はこの『テラフォーマーズ』のほかにも、人類に対して無感情に襲ってくる敵とのバトルがメインの作品が目についた。たとえば、2013年春にアニメ化が決定した人気マンガ『進撃の巨人』(諫山 創/講談社)もそうだ。

 同作では、人間とほぼ同じ風貌ながら、3メートルから特殊なものでは50メートルを超える「巨人」が突如現れ、人類が捕食される世界が舞台となっている。絶滅の危機に追い込まれた人類は、巨大な城壁を築いて巨人の進撃を防ぎつつ、主人公のエレンら訓練を受けた兵が立体機動装置という兵器を駆使して巨人に反撃し、その謎を究明していくのだが……。ここに登場する巨人たちの多くは極めて本能的で、エレンの家族や戦友たちは、圧倒的な力と素早さを誇る巨人に挑んではひとひねりにされたり、捕まれば無感情に食べられていく。

 また、今年7月から12月にかけてアニメ化された『トータル・イクリプス』や、その原作にあたる「マブラヴ」シリーズ(ゲーム、マンガ、ライトノベル等)に登場する「BETA(ベータ)」と呼ばれる地球外起源種も、人類に対して無感情に進撃してくる存在だ。

 BETAには亀の甲羅のような装甲殻を持って突進してくる通称・デストロイヤー級や、多足歩行に大きな口で金属も人も噛み砕いてしまうタンク級、また、強力なレーザーで航空戦力を瞬時に殲滅してしまうレーザー級など様々な種が混合しており、どれも知性は感じられず、数にまかせて行軍してくる。人類は人型の戦術機を開発して対抗するが、その圧倒的な物量の前に劣勢に陥ることも多く、登場人物が恐怖にかられながら無残な死を迎えるシーンも見られた。

 これらの作品は、それぞれにおいて人類の敵となっている生物の無機質感が、救いようのない終末感を与えるのに一役買っている。また、異生物の情報が乏しく謎が多い点も共通しており、絶望的な状況の中で必死に抵抗を続ける主人公たちが、反撃に転じるための光明をいつ見い出せるのかが注目される。

 いずれの作品もストーリーは継続中。これからの展開が楽しみだ。

文=キビタキビオ
(ダ・ヴィンチ電子ナビより)

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