『放課後のトラットリア』(橙乃ままれ、水口鷹志/ほるぷ出版)
ダ・ヴィンチニュース

 『美味しんぼ』(雁屋 哲:著、花咲アキラ:イラスト/小学館)や『クッキングパパ』(うえやまとち/講談社)といった、だれでも知っている超人気作品から、『きのう何食べた?』(よしながふみ/講談社)や『食戟のソーマ』(附田祐斗:原作、佐伯 俊:作画/集英社)などの最近の人気作まで、料理マンガはれっきとしたマンガ界の1ジャンル。

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 そんな料理マンガにいま、ちょっとした異変が起きている。というのも、異色料理マンガともいうべき作品が、続々と出てきているのだ。

 たとえば、ファンタジー×料理マンガという異色作が、1月12日に発売された『放課後のトラットリア』(ほるぷ出版)。これはテレビアニメにもなっている『まおゆう魔王勇者』(エンターブレイン)の作者、橙乃ままれによる作品で、物語は橘高校料理研究部の4人の女子高生、更砂利くいな、星椋鳥はるか、雲雀ケ丘京湖、海燕院あやめがひょんなことから異世界へと紛れ込んでしまうところからはじまる。

 その異世界というのが、耳が尖っている人はいるし、カエルな人はいるし、月はふたつあるしで、もうお手本のようなファンタジー世界。4人の女の子たちは、偶然、最初に出会えたロドウェルという土地の新領主、エルスタインに保護してもらったものの、見るものすべてが、自分たちのいる世界とはまったく違うものばかりで困惑してしまう。でもそんなことよりも、まず、彼女たちが考えたのが「料理が美味しくない!」ということ。というわけで、自分たちがもつ料理知識と技術を使い、手に入る素材を吟味しつつ「豚肉のリンゴソース添え」や「クリームシチュー」などの料理をつくっていく。もちろん、できあがった料理は自分たちだけでなく、異世界の人々にもふるまう。料理をつかった異文化交流は珍しくないものの、このマンガの場合、相手は外国人ではなく異世界人。だけど「おいしい」という思いは、次元をまたいでも同じなようで、異世界の住民たちは、彼女たちがつくる料理に舌と心をふるわせる。おいしそうな料理の描写ももちろんだが、料理を口に運んだ際の異世界人たちの表情やリアクションは特筆モノ。料理マンガでは試食した人の派手なリアクションも見ものだが、このマンガではあくまで穏やかに「料理のおかげで心が開けた」瞬間を表現しているのだ。

 また、魔法少女×料理マンガという異色作が、同じく1月12日発売の『マジカルシェフ少女しずる』(泰文堂)。これは、あの『デンキ街の本屋さん』(メディアファクトリー)の作者である水あさとの作品。ストーリーはというと……時は大弁当時代。不況によりさまざまな節約術が考案され、そのなかでも「弁当」が注目をあび大流行した世界で、弁当調理に特化した超能力「ツールズ」を持つ者たちが現れ始める。そんな能力者たちを集めた「大勉富学園」通称ベンガクで、唯一「ツールズ」をもたない主人公、西ノ森しずる。泣き虫な彼女は、伝説の料理人と呼ばれたものの行方をくらました母を探すため、日夜料理の腕をみがく。しかし、「ツールズ」をもたない彼女は、みんなからバカにされる毎日。そんななか、生徒会長であり「最強のツールズ」をもつといわれる、聡氏陽憂から、負ければ退学の弁当勝負をもちかけられる。その勝負のなかで「ツールズ」に目覚めたしずるは、生徒会長を撃破。しかし、また新たな強敵が現れ……といった具合に、しずるは、次々と強敵たちを相手に弁当勝負を繰り広げていく。

 なんといってもおもしろいのが、しずるの「ツールズ」。その能力の名は「変身」で、発動した瞬間、魔法少女のような姿に変身。そして、しずるの中に秘められたさまざまな料理の知識をもちい、魔法のような料理をつくりあげていくのだ。その料理のまえでは、どんな審査員もイチコロ。踊りだす者や、肩を組んで歌いだす者、中毒になってしまう者まで出てくる始末だ。

 また、息をつくひまも与えないほど、猛スピードで衝撃的な展開が起こるのも見物。先に紹介した生徒会長が、じつは幼なじみだったとかいう設定が明かされるのは朝飯前。主人公の母親代わりのおばさんが敵としてあらわれたり、急に生き別れになった妹・父親設定が出てきたり、彼らが敵としてあらわれたり、ベントーナメントなるものがいきなり開催されたり……「1巻でそこまでやるか!?」というほどに衝撃的な設定がギュッと詰まった、濃厚な1冊でもあるのだ。

 魔法少女と料理という組み合わせでは、ギャグマンガの要素がかなり強いものの、ある意味では、料理マンガにも区分されると思われる『魔法の料理 かおすキッチン』(服部昇大/集英社)も忘れてはいけないだろう。

 時は2XXX年。悪の組織「ダークオリエント」によって地球は危機に直面していた。しかし、闇があれば光あり。木ノ森くるみと三千院織絵のふたりの少女が、魔法少女となり彼らに立ち向かう! という王道ともいえるストーリー。しかし、そこにエッセンスとしてブラックなギャグと、少々のグロ的要素が混ざることで、独特な雰囲気を醸し出しているのだ。「でもどこに、料理要素が?」と首をかしげる方もおられるだろう。じつは「ダークオリエント」の怪人たちは、キノコのような外見の「キノコッス」や、まるでハマグリの「ハマグリス」など、料理の食材のようなものばかり。それを、変身前はお料理部に所属するふたりが「お料理魔法」なるもので、ちょっとグロめに、文字通り料理してしまうのである。ちなみに「キノコッス」はポルチーニ茸のリゾットに、「ハマグリス」は浜焼きにされてしまう。

 これら、異色料理マンガの登場によって、料理マンガ界が騒然としたのは間違いないだろう。今後はどんな異色料理マンガが出てくるのか……お腹をならしながら待ちわびたい。

(ダ・ヴィンチ電子ナビより)

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