『めめめのくらげ』村上隆監督インタビュー 
クランクイン!

 村上隆といえば、ヴェルサイユ宮殿での個展やルイ・ヴィトン、六本木ヒルズとのコラボレーションといった活動で注目を集めてきた現代アーティストだ。2008年には米TIME誌の「世界で最も影響力のある100人」に選ばれるなど、確固たる地位を築いている彼が、初めて長編映画作品を監督した。

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 実写とCGを融合させたSFファンタジーエンターテインメント作品『めめめのくらげ』だ。かわいいビジュアルの謎の生物「ふれんど」と、少年・正志の心温まる交流を描いた本作は、一見すると子ども向けのファンタジー映画に思えるが、その裏には村上隆による現代日本へのメッセージがぎっしりと詰まった濃厚な作品となっている。

 なぜ今、映画なのか。そして作品に込めた思いとは――。村上隆監督に『めめめのくらげ』誕生秘話を伺った。

 「かれこれ10年以上、短編は作っていたんです。そのころからいつかは長編をと思っていました」。

 本作を撮ろうと思ったきっかけを尋ねると、村上監督はそう切り出した。すべての始まりとなったのは、2010年12月26日に行われたとあるプロジェクトの打ち上げでの出来事だったという。

 「そのとき西村さん(西村喜廣 監督補)と飲んでいたら、彼に『村上さん、映画撮らないんですか』と突然言われたんです。撮りたいですと答えたらぜひ撮りましょうよと目を輝かせて言うんですよ。そのときは何言ってるんだろうって思ったんですけど、駅での別れ際にまた目をじっと見つめられて『映画撮りましょうね!』と。何なんだって思いましたね(笑)」。

 実はこのとき、村上監督は別の映画を撮る話が進んでいる最中だった。しかし、年が明けて2011年。思わぬ出来事が起こる。3.11、東日本大震災だ。この出来事により、進行中だった映画企画はいったんストップしてしまうことになった。

 「そんなことになってしまったんだけど、西村さんはこの時期だからこそ映画を撮ろうと言うんですよ。彼に引っ張られるようにして、『めめめのくらげ』がスタートしたんです。よく『なぜ村上さんは現代アーティストとしてキャリアを持っているのに、今映画を撮るのか』と聞かれるのですが、これはもうそういうタイミングだったからとしか言えない。細田守さんが、映画には神様がいて魅入られれば作れるし見放されると作れないと仰っていたのですが、その通りでした」。

 そうやってスタートした村上隆初監督作品『めめめのくらげ』は、実写と1000カット以上ものCGを融合させ、1年以上かけて編集した意欲作となった。一見すると子ども向けのファンタジー映画に思えるが、その裏には現代の日本に対する村上監督の思いが込められたメッセージ性の強い作品である。

 「作品の中に宗教団体と四人衆が出てくるのですが、彼らに僕の言いたいことを言わせているんです。たとえば『再生のためには破壊しかない』とか『日本政府の望む、見せかけだけの安全神話を取り戻せるだろ』とか。あれは僕の心の声の代弁なんです。宗教団体を出すとストーリーがまとまらなくなるからと、スタッフ間では不評でしたが、愚直な信念に突き動かされている人間に僕は共感するし、僕自身もそういう人間故にアーティストやってるわけですし」。

 もっとも、基本的に本作は子どもでも楽しめるわかりやすい王道エンターテインメントであることには違いない。特に"くらげ坊"をはじめとする"ふれんど"のキュートなルックスは、多くの観客を魅了することだろう。

 「くらげ坊はそもそもアニメのアイデアとして作っていたキャラクターで、もとは身長2メートルで裸の坊さんだったんですよ(笑)。でもそれはさすがに気持ちが悪いということで、かわいいキャラクターに変身していきました。ふれんどのデザインはどれも昔から考えていたもので、本当は勝負作品用にとっておきたかったんだけど、もう全部ここで出しちゃえと思ってつめこみました」。

 長年あたためてきた設定やキャラクターを惜しみなく投入し、現場スタッフとアイデアを出しあって、『めめめのくらげ』はついに一本の映画作品として完成した。

 「1970年代後半のアニメと、1960年代後半の特撮のエッセンスをミックスして作った映画です。僕は日本ではヒットしたことがなくてスーパーアウェイなんですよ。ずっと揶揄されてきた男がこういう映画を撮ったということで、ぜひ僕と同年代のオタクの人に見てもらいたいですね。そしてもちろん現代の子どもたちにも見てもらって、不可解な物事を無責任な大人たちは解決してくれないから、自分らで立ち上がれ!ということを伝えたいです」。

 『めめめのくらげ』――それは現代アーティスト・村上隆のすべてなのだ。

(取材・文・写真:山田井ユウキ)

『めめめのくらげ』は4月26日(金)TOHOシネマズ 六本木ヒルズ他全国順次公開。

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