映画『風立ちぬ』の完成報告会見が小金井のスタジオジブリにて行われ、本作で原作・脚本とも手掛けている宮崎駿監督と庵野秀明(声の出演・堀越二郎役)、主題歌を歌う松任谷由実が出席した。当日は聞き手にタレントの中山秀征を迎えた、座談会形式で行われ、同作の完成試写を観た宮崎監督は、自身の監督作品で初めて号泣したことを明かした。

【関連】『風立ちぬ』完成報告会見フォトギャラリー

 本作のキャッチコピーは「生きねば。」。これまでにも「生」という字を用い、その時代を生きる人々に向け、強烈なメッセージを発信してきた宮崎監督の新作となる。舞台は、1920年代の日本。零戦の開発者・堀越二郎の半生に、堀辰雄の小説「風立ちぬ」を重ね合わせ、宮崎監督が初めて実在した人間をモデルに約30年の物語を紡ぐ。青年技師と美しくも薄幸な少女・菜穂子の出会いと別れを、ゼロ戦誕生の物語を交えて映し出す。

 5年ぶりとなる新作について、宮崎監督は「5年ぶりでなく、5年かかったんです…」と前置きし、「完成作品を観て、初めて泣きました。情けないと思いました」と自身の監督作品で初めて号泣したことを告白、「自身の作品を観て泣くということは、みっともない…。みっともない監督でした」と振り返った。

 庵野も「人前で泣く人じゃない。はじめてですね」と驚きを隠せない。そんな庵野にとっては長編アニメ映画、主演声優のいずれもが初挑戦。宮崎監督から笑顔で「やって!」とオファーを受け、「断ることができなかった」とコメント。しかし「ぼくは役者じゃないので、役はつくれない。自分の経験を思い出してやりました。いろんな経験をしていて良かった」と振り返った。主演での参加は本当に大変だったようで、同作で宮崎監督の期待にこたえるも次回作について聞かれると、庵野は「断ります。自分の声を聞くのが好きじゃない」とコメントしていた。

 庵野は『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』シリーズ総監督として知られるており、二郎役の抜擢には注目を集めた。また、庵野は1984年に公開された宮崎監督の映画『風の谷のナウシカ』で“巨神兵”のシーンを描いて以来、庵野は宮崎監督を師と仰いでいる。

 そんな庵野の起用について宮崎監督は「庵野くんは現代を傷つきながら生きているんですね。そんな部分が役にあっている」とベストキャスティングであることを強調した。

 本作では、松任谷のデビュー曲である「ひこうき雲」(荒井由実名義)が主題歌として起用されている。監督は絵コンテを描いている途中に同曲を聞かされ、泣いてしまったことを明かした。「力のある歌です」ときっぱり。松任谷は「オファーをいただいて、うれしかったです」と素直な気持ちを吐露。続けて、作品については「本当に感動しました。我慢しても我慢しても嗚咽が止まらない。参加できて本当に良かった。監督の魂が強くこもっていると思います」と感慨深い様子で語った。

 最後に、宮崎監督は「やって良かった作品」と作品を振り返り、庵野と松任谷はそろって「ぜひ劇場で観てほしい」とアピールした。「生きねば。」のメッセージが、『風立ちぬ』のキャッチコピーに起用されたことからは、「たとえどんな時代でも力を尽くして生きることが必要」という宮崎監督の作品に込められた強いメッセージが伝わってくる作品。

 またほかの声優陣には、連続テレビ小説『てっぱん』などで知られる女優の瀧本美織が、ヒロインを演じ、西島秀俊、西村雅彦、風間杜夫、竹下景子、國村隼、志田未来、大竹しのぶ、野村萬斎ら豪華声優キャストが顔をそろえている。音楽は、久石譲が担当する。

 映画『風立ちぬ』は7月20日より全国公開。

『風立ちぬ』完成報告会見にて