冤罪事件として知られる佐賀市農協事件に関与した元検事が、その事件で犯人として訴追された「冤罪被害者」の遺族のもとを訪れ、直接謝罪した。その様子は2011年5月22日、テレビ朝日系の報道番組「ザ・スクープ スペシャル」で放送された。事件を担当した元検事が自ら生み出した冤罪を認め、被害者側に謝罪するのは異例のことだ。

 謝罪したのは、2000年に発生した佐賀市農協事件で主任検事をつとめた市川寛氏。同農協の元組合長の副島勘三さんを背任容疑で取り調べた際に、「ぶち殺すぞ!この野郎!」と暴言をはいて、自白を迫った。副島さんは起訴されたものの、自白調書の任意性が否定されて、一審、二審ともに裁判所は無罪判決を下し、無罪が確定した。

 暴言をはいた市川氏は厳重注意処分を受け、検事をやめることになったが、検察側から副島さんに対しては特に謝罪の言葉もないまま、2010年2月、副島さんは亡くなった。

 市川氏は、「ザ・スクープ スペシャル」の収録映像のなかで「主任検察官としてやってはならない取り調べをしたし、起訴してはならない事件を起訴した罪悪感はずっと心の中にありました」と、冤罪事件のでっち上げを認めた上で「多大なる苦痛を与えまして、誠に申し訳なく思っております。また、ご挨拶にあがること自体が甚だ遅れましたことも合わせて心よりお詫び申し上げます」と、副島さんの遺族に土下座して謝罪した。

 副島さんの息子・健一郎さんは、市川氏の謝罪に対し「世の中には冤罪ってまだまだ絶対にありますよね。そういう人を救っていただきたい。検察にひるまずに戦ってほしいと思います。2度と冤罪で苦しむ人々がないようにがんばっていただきたい」と励ましの言葉は投げかけた。

◇関連サイト
・ザ・スクープ - テレビ朝日
http://www.tv-asahi.co.jp/scoop/

(三好尚紀)

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