学校でのいじめ解決に探偵が必要、なんて信じられるだろうか?

だが一部でそれは現実になっているという。被害に遭った生徒は親に相談しないし、教師は生徒たちが陰で何をしているか把握していない。仮にいじめが発覚しても「証拠がなければ何もできない」、あるいは「証拠を出せ」とまで言うこともあるとか。

『いじめと探偵』の著者である阿部泰尚氏は、年間500件ものいじめの相談を受け、調査する探偵だ。学校の部外者である彼は、この問題をどう見ているのだろうか。

―事務所を開設されたのは2003年だそうですね。当初からいじめ調査をしていたのですか?

「いえ、普通の探偵社と同じように浮気調査などを行なっていました。きっかけは2004年の40代男性からの依頼です。『まじめだった中学生の娘が万引きをした。原因を調べてほしい』と。 初めはむちゃを言う人だなという印象だったのですが、依頼を受けて娘さんの放課後を尾行するようになって、友達関係で問題があるなとすぐにわかりました。集団でいるのに前を歩いてる子とのコミュニケーションがない」

―その子はいじめられ、万引きを強要されていたと。

「そうです。その後、その子を説得して、ICレコーダーを肌身離さず持ってもらい、いじめの証拠をつかみました。ご両親の話では、その後、校長と面談し、リーダー格の生徒は転校、残りの加害生徒も懲罰的な処分を受けたということです」

―証拠取りには、いじめられている生徒の協力が必要なんですか。

「学校の外で証拠が取れるときは必要ないのですが、そうでない場合は協力してもらいます。レコーダーや小型のカメラを使うのですが、使い方を練習している間に子供が生き生きしてくることがあります。具体的な目的ができると前向きになれるということかもしれません」



―本書で触れられている事例を見ていくと、探偵が介入しなければ事態が収まらないことがある、ということがよくわかります。例えば、クラスメートに輪姦され、その動画を携帯で撮られたケースなどです。担任の先生がその事実をつかんで動画を消すよう言っても生徒が本当に従っているか先生にはわからない可能性が高い。

「僕らならプログラムをある程度見られるので、加害生徒がパソコンのどこに動画を隠したか、どこに送信したかを追跡できる。スマホも同様です」

―1000万円カツアゲされたり、援助交際を強要されたりと、強烈な話が出てきます。ここまで深刻になってしまっているのはなぜだと思いますか?

「援助交際の場合、ちょっと怖い人たちが絡んでいるケースがありますね。要は、そういうマーケットがあって、いじめ被害者の生徒がそこで売り買いされてしまっている。いじめがエスカレートしているとしたら、社会の歪んだところに子供たちがからめ捕られてしまっているということです。

そこまでいかなくても、殴ったり蹴ったりしている本人にいじめの意識のないことはよくあります。ツッコミを入れているだけで、やられたほうはおいしいはずだ、と。つまり、テレビの芸人さんのまねをしている状態なんですね。それを見て笑う、いじめに参加していない大多数の生徒も芸人さんの振る舞いをまねてますね。だから僕は最近、つらくてそういう番組を見られなくなってしまいました。

そういう意味で、子供のいじめは大人の模倣です。大人が子供たちに範を示せない限り、悲惨な問題はなくならないと思います」

●阿部泰尚(あべ・ひろたか)



1977年生まれ、東京都出身。T.I.U.総合探偵社代表。日本メンタルヘルス協会公認心理カウンセラー。東海大学卒業。国内唯一の長期探偵専門教育を実施するT.I.U.探偵養成学校の主任講師・校長も務める。ホームページ【http://www.go-tiu.com/】

■『いじめと探偵』



幻冬舎新書 819円



総額1000万円のカツアゲ、女子生徒が手引きして起こしたレイプ、「証拠をもってこい」という教師……。そんななかで被害生徒、親が頼ったのが探偵だった。いじめ調査の第一人者が、証拠の集め方、相手との交渉方法を豊富な事例とともに語る



いじめ調査の第一人者・探偵の阿部泰尚氏は「子供のいじめは大人の模倣」と語る