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人気漫画『寄生獣』が、『ALWAYS 三丁目の夕日』などで知られる山崎貴監督の手で実写映画化されることが決まった。

『寄生獣』は岩明均によるSF漫画。人間の体を乗っ取る謎の生物「パラサイト」を題材にした奥深い人間ドラマが魅力だ。累計発行部数は1000万部を超えており、原作終了から20年近くたった現在でも根強い人気がある。

デビルマンは「酷評」、ガッチャマンは「矛盾」

それだけに今回の映画化を不安視する人もいる。例えばツイッターを見ると…

「確かに原作は素晴らしいが、実写映画化は心配」
「楽しみなような恐ろしいような。不要な改変はしないでほしい」

と、期待と不安がないまぜになった声が目立つ。

実際、漫画作品やアニメ作品の実写映画化が失敗した例は少なくない。

例えばホラー漫画の金字塔『デビルマン』。2004年に公開されたその実写映画は、支離滅裂なストーリーで映画評論家から酷評された。また今年8月には名作アニメ『科学忍者隊ガッチャマン』の実写映画も公開されたが、「舞台設定と実際の映像が矛盾」「過剰な恋愛描写が不要」と批判され、興行収入でも苦戦した。

他方、海外に目を向けると『バットマン』や『スパイダーマン』などのアメリカンコミック原作の映画は世界的に大ヒットしている。

なぜ日本では漫画・アニメの実写映画化がうまくいかないのか? ある映画関係者はキャリコネ編集部の取材に、こう指摘する。 

「今の日本映画の製作体制そのものに問題があります」

広告代理店やテレビ局が製作に「口出し」する

現在、多くの日本映画において、製作時に複数の企業が製作費を共同出資している。広告代理店やテレビ局、芸能事務所、ロケ地の観光団体などが「●●映画製作委員会」となって、映画をつくる仕組みだ。

全国公開される日本映画なら、製作費は最低でも「3億~5億円以上」はかかる。しかし製作委員会方式であれば、共同出資によって予算を獲得しつつ、大コケした際のリスク回避を図ることができるメリットはある。

「ただ製作委員会方式では、お金を出す以上、複数の関係者があれこれ口出しもする。『マーケティング戦略に合わせたイメージで撮れ』『うちの女優にこんな役は演じさせない』『事前に特別番組を作らせろ』といった具合です」

そのため、映画監督は複数のスポンサーの意見を調整する「バランサー」にならざるを得ない。クリエイティビティに長けた製作者たちが集まっても、撮りたい映像が撮りづらくなるわけだ。

「映画づくりの意欲も下がり、『スポンサーの言うとおりに撮っただけ』と、作品のクオリティに責任を持つ人もいなくなる。結果、いろんな意見が混ぜこぜになったちぐはぐな映画、何が言いたいのかわからない映画が誕生するんです」

さらに、漫画・アニメ原作映画の場合、出版社や原作者の意見だけでなく、原作自体のストーリーや設定にも配慮しなければならない。

「おまけに名作漫画・人気アニメの映画化の場合、話題だけで一定の興行収入が見込めるため『うちも一枚かませろ』と首を突っ込んでくる企業が増える傾向にあります。そのため監督にはより一層、バランサーとしての役割が求められる。これではまともな映画づくりは期待できません」

「山崎監督は難しい舵取りを迫られる」

こうした製作委員会方式が増えた背景には、伸び悩む日本映画産業の実態があるという。

日本映画製作者連盟の発表するデータを見ると、日本映画全体の興行収入は2001年の781億円から2012年の1281億円へとほぼ右肩上がりに伸びている。 


しかし、劇場公開作品数も281本から554本へと約2倍に増えている。各年における1作品あたりの平均興行収入は2億5000万円前後であり、2001年からほとんど変わっていないのだ。


もちろんDVD化やテレビ放映権などによる収入もあるが、日本映画が映画館上映で稼げるパワーは、ここ10年ほぼ「頭打ち」と言ってもいいだろう。

加えて、長引く不況や動画配信サービスなど新メディアの台頭もあり、消費者の映画館離れが懸念されている。こうした背景から映画製作の予算獲得は年々難しくなっており、大作を撮るには複数のスポンサーによる出資に頼るほかないのである。

「『寄生獣』映画化に関しては、CGの多用による製作費の高騰と、それにともなうスポンサーの増加が心配。また原作のグロテスクな描写をどう表現するのか、山崎監督は難しい舵取りを迫られるでしょう」

映画は2部構成。第1部は2014年12月、第2部は2015年に全国の東宝系劇場で公開予定だ。女優・深津絵里さんの「顔が割れ」、主演・染谷将太さんの腕に「パラサイトが寄生する」といった報道もある。

山崎監督は「バランサー」に成り下がるのか、それとも…。果たして、ファンが納得できる作品になるのだろうか。

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